ディカプリオが実在のFBIのドンに。究極の同志愛をあなたはどう見るか!?
意外にも今回が初タッグとなった『J・エドガー』(公開中)のレオナルド・ディカプリオ×クリント・イーストウッド監督。ディカプリオが演じるのは、凄腕で恐れられたFBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーだ。8人の大統領の下、手段を選ばない冷酷な捜査を敢行し、華麗なる実績を残したフーバーだが、私生活は謎に包まれていた。本作ではそんな彼の究極の同志愛が、イーストウッドならではの鋭い洞察力で丁寧に紡がれていく。
フーバーが提唱したのは、科学的根拠に基づき、犯人を逮捕すること。彼は、当時まだ確立されていなかった科学捜査や指紋照合システムを考案した切れ者だ。でも、切れれば切れるほど、敵も多くなり、だからこそ彼は共に暮らしていた母親と、ごく少数の側近にしか心を開かなかったのだ。血のつながった肉親との絆はもとより、本作では部下のFBI副長官クライド・トルソン(アーミー・ハマー)と、有能な秘書ヘレン・ガンディ(ナオミ・ワッツ)との同志愛に注目したい。
ヘレンとの関係性については、最初にフーバーから彼女に言い寄るが、全くその気がないとバッサリ断られる。というのも、ヘレンは恋よりも仕事という、あの時代には珍しいキャリア志向の女性だったのだ。その言葉通り、彼女は有能な秘書として生涯彼に仕えていく。劇中で、フーバーは彼女のことを“ミス・ガンディ”と呼ぶが、ふたりが年老いてからのあるシーンで、親しみを込めて“ヘレン”と呼ぶシーンが印象的だ。彼らが同志として培った年月の密度が色濃く表れるシーンだと思う。
また、フーバーのプライベートで一番密接に描かれるのが、トルソンとの同志愛だ。彼は部下だが、半生を共にしたかけがえのない親友でもある。常にギリギリの精神状態に追い込まれる戦場のような職場で、フーバーにとってのトルソンは心から信頼できる戦友だった。それはもはや、友の領域をも超えた至高の愛情となっていく。特に、彼らが感情をほとばしらせて争うシーンは、本作のドラマの核となる名シーンだ。ふたりの唇ににじんだ血が切なすぎて、見る者の胸を締め付ける。
血気あふれる20代から貫禄のある70代までのフーバーを熱演したディカプリオ。いつもながらアカデミー賞ではシカトされてしまったが、スクリーンには彼が体現したフーバーの熱き魂が見事に映し出されている。さすがはディカプリオ×イーストウッドのコンビ。これは一人の男の伝記映画だが、とても純度の高いラブストーリーとしても評価したい。【文/山崎伸子】
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