“絵が描けない”ピクサーの製作者に学ぶ、創作の原点

『カールじいさんの空飛ぶ家』のプロデューサー、ジョナス・リベラ。肩にはカールじいさん
  • 『カールじいさんの空飛ぶ家』のプロデューサー、ジョナス・リベラ。肩にはカールじいさん

スタジオジブリの宮崎駿にはプロデューサーの鈴木敏夫。同じくピクサーのジョン・ラセターにはプロデューサーのジョナス・リベラ、である。名クリエイターには名プロデューサーが必要だ。12月5日公開の『カールじいさんの空飛ぶ家』のPRのため来日したプロデューサー、ジョナス・リベラにピクサー成功の秘密を聞いた。

「ジブリの鈴木さんと比較していただいて光栄です」と笑うリベラ。1971年生まれ、38歳の若さだ。

「ピクサーには“ブレイン・トラスト”という監督集団がいて、常にアイデアを練っています。ジョン・ラセターをトップに、ピート・ドクター、ブラッド・バード、アンドリュー・スタントンなどがメンバーです。彼らがアイデアをメモにしてラセターに見せ、ゴーサインが出たら、誰が監督するかラセターが指名する、というのが僕らのやり方です」。

作品と監督が決定したらそのストーリーをいかに語るか、監督・脚本家・プロデューサー・アニメーターがみんなで検討し、練り上げていくのがピクサー・スタイル。すべては“誰も見たことのないストーリーテリング”のために。作品は常に“僕ら”の共同作品なのだ。

アニメーター出身のブレイン・トラストのメンバーをはじめ、ピクサー社の人々は画が描ける。その中で画を描かないプロデューサーは肩身が狭くないのだろうかと聞くと、「そりゃあ、画が描ければなあって思うけれど」とリベラは肩をすぼめ、こう続けた。

「クリエイターだけの意見だと観客を忘れてしまうこともあります。それを修正していくのが僕の役割。僕らが作ろうとする作品の内容が薄まらないように見張りつつ、アイデアをどのように形にすればストーリーが持つ感情を保ちながら観客に最善の形で伝えられるかを考えていくのです」。

クリエイターはアーティストである。自己主張が強いのは当たり前。そんな彼らの意見をよくまとめられますね、と聞いてみた。

「もちろんメンバーは一人づつが素晴らしいクリエイターなので、それぞれが主張しあい会議がもめることもあります。監督がこうしたいといい、それに対してみんなが意見を出し、納得するまで押したり引いたりしながら方向を決めていきます」。

でも、そう簡単にみなが納得できるわけがないのでは?と問うと、リベラはほほ笑みながら「それはピクサーのみんなに共通するものがあるからです。監督たちの顔を見てもおわかりだと思いますが、ジョン・ラセターもピート・ドクターも“子どもの心を忘れない”人なんです。純真さ、ですね。これはもって生まれたもの。みんな自分が子どもの頃に経験した“別世界にひきこまれるわくわく感”を今の子どもたちに感じてほしいと思っている。それがピクサーのクリエイティビティーの原点にあるのです」と胸を張った。

“78歳のじいさまが風船で空を飛ぶ”というアイデアを愛と冒険と感動の物語に育て上げたピクサー社の人々。誰かが誰かを従わせるのではなく、楽しい作品を創るための共同作業。それに加わっているという喜びと誇り。その感動を完成させるのは、わくわくしながら映画を見る観客なのだ。こんな感覚を与えてくれる映画はそうそうない。だからピクサー・アニメはヒットするのである。【シネマアナリスト/まつかわゆま】

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