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三谷幸喜 真田丸と向き合った1年「テレビ本来の面白さは連続ドラマにある」

ザテレビジョン 2017年2月15日 11時00分 配信

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大河ドラマ「真田丸」('16年NHK総合ほか)を手掛けた脚本家・三谷幸喜が、「第91回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」の脚本賞を受賞。'04年の大河ドラマ「新選組!」以来、6度目の脚本賞受賞となる。ドラマ放送開始前、「戦国ものなら真田をやりたかったので、夢がかないました」という熱い思いを語っていた三谷。1年間という長い期間、向き合い続けた「真田丸」を書き終えた今の心境を聞いた。

――脚本賞、おめでとうございます。

「ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」って、まだ続いていたんですね(笑)。第91回ですか、すごいですね。「新選組!」が12年前で、それ以前には「警部補・古畑任三郎」('94年フジ系)などで脚本賞をいただいていますね。ということは、そんなに長い間、僕は連続ドラマを書いていなかったのか・・・という驚きがあります。僕は、舞台も映画もやりますが、脚本家として一番好きな仕事は連続ドラマなんです。だから、こうやって12年ぶりに賞をいただき、視聴者の皆さんに忘れられていないということを再認識して、“また連ドラやりたいな”という思いが湧いてきます。そういう気持ちにさせていただいたのも、うれしかったです。

――「真田丸」は、真田幸村こと信繁(堺雅人)の目線、という視点を特にこだわり、描かれましたね。「本能寺の変」や「関ケ原の戦い」などをあっさり終わらせる一方、「天正壬午の乱」など知られざる歴史を掘り下げました。

それは、始めから奇をてらったわけではなく、真田信繁という題材が題材なだけに、どうしてもそういう目線になったという結果です。僕は大河ドラマが大好きで、'73年の「国盗り物語」(NHK総合)を始めとして、子どものころから見てきたので、「僕だったらこうしたい」という思いはいろいろありました。戦国時代を扱った大河はいっぱいあるから、それに負けないものをと考えたときに、例えば、「大坂の陣」は結果が分かりきっている。それでも、信繁たちが勝つのか負けるかということは予測がつかないようにしたかったんです。でも、それってけっこう難しい。どうしても有名な歴史的事実があるから、そこから逆算してストーリーを作りがちなんですが、当時は、関ヶ原で東軍と西軍のどちらが勝つかなんて、先のことが分かっている人は誰もいなかったわけですよね。そこは信繁の目線に寄り添うというか、先読みしない形で作ることで、もしかしたらハラハラ感、ワクワク感が生まれたのかもしれない。常に先を読まない姿勢というものをなんとか頑張って貫いた結果かなという気がします。

――終盤、家康の大坂城攻めが始まると、視聴者がSNSで「今年は豊臣が勝つらしいよ」と盛り上がっていました。

僕はそのつもりで書いていましたから。正直に言えば、合戦のシーンって僕は上手じゃないというか、いまだにベッドシーンと戦(いくさ)はどう書けばいいのか分からないんです(笑)。「真田丸」を書くにあたって、戦いのアクションは現場の皆様におまかせし、脚本家としてなぜこの戦が負けたのかということをきちんと描こうと思いました。それも「どこどこ軍の猛攻撃によって敵は粉砕された」というようなナレーションで終わるパターンが多いけれど、そうではなく、負ける側には負ける理由があるんだよということをなるべく史実に沿った形で書きました。最終回の大坂の夏の陣で、大野治長(今井朋彦)が豊臣家の馬印を戦場から持ち帰っちゃったことで戦の流れが変わる。そういう瞬間は書いていて面白いし、「そんなもんだよな」って気がします。

――そこに至るまで豊臣家の内部がまとまらず、組織として機能しなくなっていく段階も、描いてらっしゃいましたね。

中盤、信繁が秀吉の下についてからは、僕の中でこのドラマはサラリーマンものだと思っていました。そこで一番参考になったのは森繁久彌さんの社長シリーズ(映画「へそくり社長」('56年)など)なんです。信繁がそういったサラリーマン的社会でどう生きていくか。これまでの大河で信長、秀吉、その右腕みたいな人が出てきましたが、信繁のように何もしていない人(表に出ていない人)はいませんから。つまり、客観的には組織の歯車でしかなかった人を描くからには、その小さな歯車がどれだけ組織を動かしたのか、または動かさなかったのかということを、きちんと描きたいと思っていました。逆に言えば、それは信繁じゃないと描けないことですよね。実は、城持ちではない人が主人公の戦国大河は「真田丸」だけと思っていたら、「風林火山」('07年)の山本勘助(内野聖陽)がいた。でも、あとはほとんど城主ですからね。

――第44話で信繁が出城を築き、「名は、決まっておろう、『真田丸』よ」と言ってから放送の最後にオープニングタイトルが流れる趣向も話題になりました。あれは三谷さんのアイデアだったのでしょうか?

実はそうなんです。台本を書き上げたときには考えていなかったけれど、何かの拍子に「そうなったら絶対かっこいいな」と思って、プロデューサーに電話し、「この回はオープニングを最後に持っていきませんか」という話をしました。「ノリでやっちゃいましょう」みたいな感じで、あっという間にその案が通りまして、やっぱりそういうチームは強いなと思いましたね。他にも、僕が「こんなことはできないか」というアイデアを出して、それが突拍子もないことでも、プロデューサーと演出家が実現する方向に向かってくれた。行動力と発想力と実現力がそろったチームだったと思います。

――今回、信繁役の堺雅人さんも主演男優賞を受賞されました。きり(長澤まさみ)とキスをしたり、最後の瞬間に微笑んだりと、堺さんのアイデアも活かされたようですが。

素晴らしかったです。堺さんは、最初のころ「台本どおり、きちんと演じる」というのをポリシーとされていたみたいで、台本に書かれていないことは一切しなかったんです。あるときは僕が“てにをは”を間違えたのもそのまま言っていらして、むしろこっちが恥ずかしいぐらいで(笑)。まだ序盤のころ、機会があったのでメールして、「台本にがんじがらめにならないで、もっと自由な発想でやっていただいていいんですよ」とお伝えしました。それでお返事いただいたら、「少し吹っ切れました」みたいなことが書いてありましたね。最後の瞬間に信繁が微笑むというのは、僕は台本には書いてないんじゃないかな。堺さんとディレクターが現場で決められたのではないかと思います。

――「あさイチ」に出演された際、信繁ときりがキスをしながらしゃべっていたのは長澤まさみさんのアイデアとおっしゃっていましたね。

そうです。それも黙っていれば全部、僕の手柄になったんですが…(笑)。もちろん、僕もあのシーンを書いたとき、キスするのは当然ありだなとは思ったけれど、いちいちト書きで書くのも照れくさいじゃないですか。しかし、まさかキスしながらしゃべるとは思いませんでした。あれは長澤さんが昔から温めていた演技プランで、いつかやってみたかったそうなんです。打診があったとき、「それは良いアイデアですね」と言いましたし、本編を見ても面白かったんですが、できればもっと早く言ってほしかった! きりの「あのころが私、一番きれいだったんですから」というのは僕が書いたセリフですが、キスしながらしゃべるのなら、もっと違うことを言わせたかったという悔しさは、ちょっとあります(笑)。

――三谷さんは役者に“当て書き”をするので有名ですが、近藤正臣さん演じる徳川の家臣・本多正信が気に入って、出番を増やしたというのは本当ですか?

僕にとっての大河の原点といえば、「国盗り物語」で近藤さんが演じた明智光秀ですから、今回、出ていただけるだけでもうれしいのに、近藤さんの演技を見ていると、正信という人物をもっとふくらませたいと思いましたし、近藤さんが台本を読んだとき「早く芝居したい」と思ってくださるようなセリフを書きたいと思っていました。

――最終回のラストシーンでも、信繁の兄・信之(大泉洋)が弟の死を知るとき、正信が一緒にいましたね。

ラストシーンは正信を出したいというだけではなく、信之が誰と会話するのがいいのかと考えたときに、たまたま正信が江戸に帰る道すがら一緒になるというのも不可能ではないと思ったので、そうしました。もし、そのとき正信が江戸にいたり病気で動けなかったりしたら、ドラマとしても描けなかったけれど、時代考証の先生たちにもOKをいただいたので。

――「新選組!」のときは、最終回のあと「新選組!! 土方歳三 最期の一日」(06年、NHK総合)を書かれましたが、「真田丸」の続きを書く予定はありますか?

いや、本来は信繁や「新選組!」の近藤勇のように、主人公が死んだ瞬間に物語を終わらせたいんですよ。そして、その最後の瞬間に生きている人はずっと生き続けてほしい。「真田丸」も、大坂城が燃えるところまでは描きましたが、茶々も秀頼も死んではいないじゃないですか。もしかしたら、死ぬところを見たい人もいたかもしれないけれど、あの話の中では死んでないんです。もしかしたら茶々たちは死んでいないかもしれない、伝説にあるように鹿児島に逃げたかもしれない。そのことは信繁が分からないように、ドラマとしても分からないままでいいと思うんです。「新選組!」も、土方のその後を描いたけれど、本当は近藤勇が死んだ時点で終わったのであって、今も土方たちはどこかで戦っているんじゃないかという思いを残すほうが、僕は好きですね。

――続編やスピンオフも期待したいのですが…

実は、僕が初めて通して見た大河ドラマ「国盗り物語」のラストが衝撃的だったんです。本能寺の変の後、光秀が農民に刺されて死ぬところで終わる。それで歴史がどうなるかなんて僕らは知っているけれど、ドラマしか見ていない人は「なんだこれは。この後どうなるの?」と思う終わり方。でも、それが歴史というものという気がするし、どんどん進んでいく歴史にピリオドはない。そういった歴史観が自分にとってぴったりきたので、自分が書く大河ドラマも完結しない終わり方にしようと思っていました。だから、「真田丸」の続編的なものは、僕の中では考えていないですね。ただそれは現在の話で、視聴者の皆さんの要望が強くあれば、分からない。誰かのその後やその前ではないところを描くスピンオフやってみたいなという気持ちはちょっとあります。だから、可能性はゼロではないですね。

――2作目となった大河ドラマですが、あらためて「大河ドラマ」の脚本を書くということをどう捉えてらっしゃいますか?

連続ドラマで1年間続くのって、大河ドラマと「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)だけ。僕が「渡る世間―」を書くことはありえないので(笑)、大河しかないじゃないですか。テレビ本来の面白さは連続ドラマにあるし、ましてや「来週どうなるんだ?」という興味を1年間、持続させられるのは大河だけなので、とてもやりがいのある仕事でした。そして今回、その大河ドラマで評価されたのがうれしい。「新選組!」と「真田丸」の間は12年空いてしまいましたが、次は10年空けずに大河を…? どうなんですかね。僕としてはやってみたいとは思っています。

みたに・こうき=1961年、東京都出身。A型。脚本家として多くのテレビドラマを執筆。映画や舞台なども手掛けるなど幅広く活躍。作・演出を手掛ける新作舞台「不信~彼女が嘘をつく理由」が3月7日(火)~4月30日(日)に東京・PARCO劇場で公演
ライター=小田慶子

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  • ザテレビジョンドラマアカデミー賞で脚本賞を受賞した三谷幸喜
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