映画

中谷美紀「あるがままに受け入れる」懐深き人生観に迫る

MovieWalker 2017年3月9日 14時28分 配信

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テレンス・マリック監督が40年の年月を費やして制作した映画『ボヤージュ・オブ・タイム』(3月10日公開)。日本語版の“語り手”には女優・中谷美紀が抜擢された。過去、現在、未来に渡る壮大な宇宙の歩みを革新的な映像効果とともに描く意欲作だが、中谷にインタビューすると、本作とピタリと重なる彼女の人生観が明らかとなった。

爆発によって宇宙が誕生し、惑星が変化を遂げるなかで様々な生き物が命を宿してきた。140億年近い宇宙の歩みは神秘の連続だ。『シン・レッド・ライン』(99)や『ツリー・オブ・ライフ』(11)などの偉才テレンス・マリック監督は、長きにわたり本作の企画を温め続け、リアリティに基づく映像を探求。視覚効果チームだけでなく強力な科学アドバイザーたちも参加して、あらゆる自然現象を多様な方法で表現してみせた。

本作を観た中谷は「こんなに心地よいものに巡り会えてありがたい」と感激の言葉を口にする。「美しいものに触れた時に、最も生き甲斐を感じます。魂を優しくマッサージされているようでしたね。人間は誰しも『なぜ自分はここにいるのか』とか、『なぜ生まれてきたのだろう』とか、死への恐怖や、あるいは『地球はどうなっていくのだろう』、『宇宙はどこまで広がっていくんだろう』という様々な問いをご自身で問い続けているものだと思うんです。私もそうです。本作は、その答えに優しく導いてくれたような気がしています」。

生き物が生まれ、またある生き物は絶滅していく。変化を繰り返していく惑星の歩みについて、さらにこう感じたと言う。「世の無常を嘆いても仕方がない。シェイクスピアも言っていますが、人は死ぬために生まれてきたようなもので、必ず死に向かっていくもの。この地球もきっと同じ。私たちは今、さまざまな災害や疾病に右往左往させられていますが、どんなにそれに抗ったところでいずれは終末を迎えるものだと思います。そういった意味では、すべてを受け入れていくしか方法がない気がしています。そう考えると、人間のわずらいを楽にしてくれる作品だとも思いました」。

どんなに思い悩んでも、すべてが宇宙や自然の営みの一部である。確かに本作は、そういった宇宙に溶け込むような感覚へと誘ってくれる。マリック監督は各国での上映に際し、それぞれの国の偉人の言葉を映画に添えているが、中谷は「インドのお客様への言葉がとても印象深くて。ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァという三大神の名前が添えられていました。創造神、維持神、破壊神という意味ですが、その3つがこの世のすべてを表しているような気がします」と語る。

マリック監督の描く世界観は、中谷自身の人生観ともピタリと当てはまったそう。「無常の世で、どのように生きていきたいか?」と聞いてみると、「清濁併せ呑むという感じですね」とにっこり。「醜いものに蓋をしても仕方がない。美しいものが好きなだけに、醜いものの存在も受け入れなくてはいけないと思っています。人間は誰しも、善も悪もともに心のなかにあるもの。自分のなかの小さな悪魔が動き出した時に、『これも自分なんだ』と認めてあげることも大事なのかなと思います」。

「20代の頃にいろいろと思い知らされる体験があって、もう諦めるしかないと思ったんです」と告白。「今では何事も『よくてもOK、悪くてもOK』と常に思っています。いいことがあっても浮かれ過ぎないし、悪いことがあってもあまり落ち込まない。つまらない人生なのかもしれませんが。あまり執着はしないです。冷酷というか、残酷かも(笑)。善も悪も含めて、この世の中のすべて。それをあるがままにしか受け入れるしかないと思っていて。“なるようになる”という気がしています」とふわりと微笑む。

しゃんと背筋を伸ばした姿、唇からこぼれる言葉も実に美しく、「あるがまま、なすがまま」と言う懐の深さも彼女を輝かせているように感じた。是非とも中谷美紀の“語り”も楽しみに、時空の旅へと出かけてみてほしい。【取材・文/成田おり枝】

ボヤージュ・オブ・タイム

3月10日(金) 公開

『天国の日々』の巨匠テレンス・マリック監督が、40年のライフワークの集大成として完成させた壮大なスケールのネイチャードキュメンタリー。宇宙の始まりから...

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