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『破裏拳ポリマー』坂本浩一×『BLAME!』瀬下寛之 特撮&アニメ2大監督”激熱”対談

MovieWalker 2017年5月13日 13時32分 配信

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1974年、タツノコプロがカンフーブーム真っ只中に制作した同名アニメを実写化した本格アクション『破裏拳ポリマー』(5月13日公開)。無限に増殖した都市に駆除される人間たちを描いた伝説の原作コミックのアニメ化『BLAME!』(5月20日公開)。そんな話題の2作を手掛けた坂本浩一監督と瀬下寛之監督のクリエイター対談が実現。実写特撮とCGアニメという異なる分野ながら近い感性を持つ同世代の監督として、互いの最新作の話題を中心に語り合ってもらった。

2作品に共通するのは“無国籍感”?

『シドニアの騎士』などで知られる弐瓶勉原作の『BLAME!』は漫画が難解なハードSFだったことで知られている。原作を読んでいた坂本監督は「映画を観て“こういう話だったのか”と安心したんですよ」と感想を述べると、瀬下監督は作品をどのようなスタンスで制作したのかを教えてくれた。

「『BLAME!』の劇場版を作る話が挙がった時、弐瓶先生ご自身が『あの作品は解りづらいから、シンプルに解りやすくしましょうか』と提案してくださって、そこから一緒に作り上げました。間口を拡げて、よりポピュラーに受け入れて欲しい。原作を知らない方々にも観てもらって、まず興味を持ってもらいたい。その大方針を軸に、先生ご自身が映画用に手がけた膨大なコンセプトデザインと僕たちの映像スタイルが化学反応を起こして、シンプルなストーリーの骨組みに、壮大なSF的世界観が融合した“弐瓶ワールドの入門編”になったと思います」

そんな『BLAME!』の映像的な様式は、実は‟マカロニ・ウエスタン“であり、そのこだわりは音楽にまで息づいていると瀬下監督が続ける。

「主人公の霧亥が登場する場面用に、一度聴いたら忘れられない、常に印象的なメロディを作っていただきました。エンニオ・モリコーネのような、口笛で聞こえてきそうな曲調と、圧倒的な異世界との不思議な調和が生まれ、ハードSFなのに、セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタンのような不思議な無国籍感へ繋がっています」

この演出について、坂本監督も頷きながら『破裏拳ポリマー』でも「フィルムでの無国籍感の演出を目指している」と語る。

「原作アニメが70年代の作品なので、今風のおしゃれな映像にしちゃうと当時の雰囲気が無くなってしまうのかな…という思いがありました。スーツの表現もCGを使えばもっと今風に見せることも可能ですが、それをあえて泥臭くというか、CGを用いず生身でやるのが今回のテーマでもあったんです。原作アニメをリアルタイムで観てきた方々にとって、泥臭さは格好良く昇華されているけど、おしゃれ過ぎない程度の生々しさ、肉弾戦の雰囲気を出すのが今回のチャレンジでもありました。‟食事で例えるなら、定食屋で食べられて、何が入っているか判らないけどおいしいもの“というのが狙いですね(笑)」

2人共が悩み、考える“実写とCGの使い分け”

この“CGを使わない”こだわりについて、CGのスペシャリストとも言える瀬下監督は意外にも大いに賛同する。

「人間が頑張って工夫できることは、人間がやったほうがいいと思います。『ジェイソン・ボーン』シリーズでは、スタントマンだけじゃなくカメラマンもワイヤーをつけて一緒に窓に向かってダイブしたりしている。あの一瞬のカットで、その場面が“本当に起こっている”という感じが伝わってくるんですよね。実際にできることならやるという姿勢は、むしろ僕らVFXのクリエイターにとっても良い刺激になります」

坂本も実写特撮を撮るにあたっては、CGをどこまで使うかという線引きに悩んでいるという。

「実写とCGではルック(見た目)の違いがあるんですよね。表現方法も違っていて、CGじゃないとできない表現もあるし、実写じゃないと伝わらない表現もある。世界観は実写がベースなので、そこをCGに飛ばしてしまうのではなく、ちゃんと実写の世界観で描けるほうがいい。そういう意味ではCGをどこまで実写にするかというところがありますね」

話題はCGとアクションの接点となる‟モーションキャプチャー“へと移っていく。アクション・シーンが多い『BLAME!』でのキャラクターの動きに対して、「モーションキャプチャーは使っているんですか?」という坂本監督の質問に瀬下監督が答える。

「使うのはケース・バイ・ケースで、『BLAME!』では使っていません。モーションキャプチャーは、人物の動きを一気に撮ることができるメリットはありますが、その生々し過ぎる動きがアニメーションの様式とぶつかって違和感が出てしまうんですよね。『BLAME!』のような映像スタイルでは、モーションキャプチャーはマッチしないと判断しました。その一方、日常生活の描写が多い『亜人』では、モーションキャプチャーによる演技の生々しさをドキュメンタリータッチ、つまり手持ちカメラや監視カメラのように覗き込むような映像スタイルでまとめることで、作品のムードとマッチさせています」

これまでCGを用いたVFXなども手がけた瀬下監督は、実写特撮の撮影の現状について質問が飛び、坂本監督が「状況は厳しいですね…」と切り出す。

「製作費もスケジュールもそうですし、撮影にも制約がありますから。爆破も、ワイヤーも撮影場所の許可が下りないことも多いですしね。昔の作品では爆破火薬の量や爆発からの距離感にルールが定まっていなかったので、派手な爆発とか距離感の近さが迫力に繋がったんですけど、今はやはり安全第一でやっています。とは言え、場所によっては大きな爆破もできるので、表現の限界にチャレンジさせてもらったりするんですが、どうしてもリミッターはかかりますね。もちろん、そうした規制も厳しいですが、アクションに関しては人手不足という問題もあります。僕らの世代なら、ジャッキー・チェンさんや真田広之さんがいたので、彼らを目標にしていたんですが、今はそういう作品や業界に目指す目標がなくて、その結果人材が育ってこないんですよね」

キャラクターを‟継承する”というミッション

圧倒的な爆破シーンで知られる『仮面ライダーV3』や、ブルース・リー、ジャッキー・チェンのカンフー映画など、共にハマった映画の話題を挟みながら、映像談議に盛り上がる2人。そんな彼らは早くも次の作品で試行錯誤とチャレンジを続けている。瀬下監督は『GODZILLA 怪獣惑星』(17年公開)、坂本監督はTV作品「ウルトラマンジード」(7月8日より放送)を手がけていて、偶然にも、2人ともそれぞれのスタンスで‟怪獣“が題材の1つになっている。「完成を楽しみにしています!」という坂本監督に対し、瀬下監督は作品への思いをこう答えている。

「言える範囲で言うと、今回は人間ドラマの視点で作っています。火山とか台風のような、大自然そのものといえる圧倒的に巨大な存在に対して立ち向かう人間たちのドラマです。いまさらですが作るほどにゴジラはすごい存在だと感じています。『ウルトラマン』や『仮面ライダー』もそうですが、これらの偉大なキャラクターは多くのクリエイターによって受け継がれて何十年も生き続けている。その理由を肌で感じれるというか、本当にすごいことですよね」

瀬下監督は、自身が『GODZILLA 怪獣惑星』で歴史のあるキャラクターを描いた際の苦労を踏まえ、「『仮面ライダー』や『ウルトラマン』を描くことに対してプレッシャーはありますか?」と坂本に質問を投げかける。

「それはありますね。やっぱり、それぞれの作品やキャラクターには、いろんなファンの思い入れがありますから。その一方で、僕は新しいことにチャレンジしていくことが好きなので、古き良き時代を踏まえた上で新しいものを『仮面ライダー』でも『ウルトラマン』でも、スーパー戦隊シリーズでも、そして『破裏拳ポリマー』でも描いています。もともとのいいものを踏まえて‟次に繋いでいく“という使命感もあるので、今の子どもたちにそれを伝えて、このキャラクターたちのイメージを10年、20年繋げるというのが僕らの世代のミッションだと思うんです。だから、ファンから観れば当時のままがいいという思いがあるかもしれませんが、それを踏襲して何か次になるステップを入れたいと考えています」

坂本監督の熱い思いに、瀬下監督は「今の言葉は、我々の作品づくりにも通じます」と答える。

「継承は保存ではなく“生まれ変わり”なんですよね。年老いたまま保存することが重要なのではなく、やっぱり次々と新しい血肉に生まれ変わっていくという。それが本当の意味での継承ではないかと思うんです」

“継承”という言葉に対し、坂本監督は最後にさらなる思いを述べている。

「僕がいつも意識しているのは、今現在観ている人たちがどう受け継いで楽しんで、愛してくれるかというところなんです。そこが毎回のチャレンジどころなので。『破裏拳ポリマー』も一見すると原作と全然違うじゃないかと思うかもしれませんが、きちんと観て貰えれば原作を踏まえた上で描いてことが判ってもらえると思います。僕がジャッキー・チェンの映画を観て映画界に入りたいと思ったのと同じような感じで、次の世代に引き継いでもらえる、そういう作品を残せたらと思っています」【取材・文/石井誠、トライワークス】

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