映画「昼顔」西谷監督インタビュー「ラブストーリーだけでなく、女性同士の生き様のぶつかり合いも観てほしい」

メガホンを取った西谷弘監督
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連続ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』を演出、また劇場版『容疑者xの献身』(08年)、『任侠ヘルパー』(12年)、『真夏の方程式』(13年)などを監督したことで知られる西谷弘監督の最新作『昼顔』が6月10日(土)より、公開される。

映画『昼顔』は、2014年夏に放送され、社会現象を巻き起こした連続ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』の完結編。互いに結婚をしていながら禁断の恋に落ち、ドラマの最後では別れを選ばざるを得なくなった紗和(上戸彩)と北野(斎藤工)の3年後を描いたストーリー。テレビドラマのその後が描かれると話題の本作、どのような作品になっているのか、西谷監督に話を伺った。

ドラマの終了直後から、続編のドラマが作られるのではないか、映画化されるのではないかなど、様々な噂が絶えない話題作となった『昼顔』。そのことについて西谷監督は「ドラマが終わってから、映画化できないか、ドラマのスペシャルをやろうかなどの話が出ていましたが、具体的には決まっていませんでした」と実際に制作サイドでも話が出ていた。しかし「個人的には映画で大きなスクリーンでスケール感あるものを描いてみたいなと思っていました」と映画化への想いを抱いていたことを告白。その後、映画化が決定し、動き始めたのは、ドラマが終わってから1年経過した頃からだという。

その間世の中では不倫が問題視される風潮が強くなった。西谷監督は「ドラマの放送時はラブストーリーとしての見方が強かったと思う。それが、映画化決定の頃、不倫は世間からの風当たりは強くなっていた。でも、折角吹いた風。追い風にするのか?向かい風と捉えるのか?我々、制作側にかかっていると思いました」と前向きに捉えていたという。ドラマは「不倫されど純愛」というコンセプトで作られていたが、「愛というのは奪うもの」ということを元に「奪われる側の痛みというものを作り手がどれだけ認識しているかを示さないといけない」と映画化に際し、新しい気持ちで取り組んだと語った。

主演する上戸彩、斎藤工にとっては2年振りの撮影。監督自身、2人が役に戻ることができるかどうか、一先ず芝居を見てから判断しようと思っていた。上戸について「ちょうど紗和が北野と再会するシーンがクランクインだった。カメラは紗和の背中から追いかけて行き、シンポジウムの会場のドアを開けて、北野の声が聞こえて……という流れ。上戸さんも“紗和に戻れるか”不安だったと思う。1回目のリハーサル、ドアを開け北野の声を耳にした瞬間、上戸彩のプロフィールは3年を経た紗和の横顔になっていた」。

また、斎藤については「まるで上戸さんと時を重ねるように、同じシーンで客席の紗和を見つけたとき、北野先生に変身していました」と、2人とも自然な形で役に戻っていったと振り返った。「紗和と北野の2人のシーンは本当に自然体で、ドキュメンタリーのような状態でした」とあくまでも自然体であったことを明かした。上戸、斎藤が難なく役に戻ったことにより、全く手がかからなかった分、演出など他の部分に時間を割くことができたという。

テレビドラマで紗和は校内放送を通じて北野の声を聞いたところで終わるが、映画では北野がシンポジウムで話をしている際の声を聞くシーンで再会する。北野の声との再会という演出について「台本上では再会するだけの設定でした。ロケハン場所で自分なりに芝居のシミュレーションをしている時に、扉を開けると視覚より先に声が聞こえるなと思った。と同時にドラマの最終回のシーンが蘇りました。別離の時、北野と接触させずに、声だけに触れて終わった。ならば、再会はその声から始まる。ドラマへのオマージュになると思いました」と、連ドラファンにとっては「これって、あの流れだ!」とわかる、ファンへのサービスも盛り込まれている作品となっているそうだ。

本作では、テレビドラマの中で登場した紗和の元夫の笹本俊介、友人の滝川利佳子は登場しない。引き続き登場するのは、紗和、北野とその妻の乃里子(伊藤歩)の3人のみ。新登場する人物として、紗和が働く飲食店のオーナー・杉崎尚人(平山浩行)が加わる。「映画は紗和と北野のラブストーリー、そして乃里子との人間模様を掘り下げたく、キャストを絞り込みました。但し、紗和と北野の素性を知らない客観視できる人物が必要で、紗和にとって元夫の亡霊になる存在が欲しかった。それは、元夫本人を登場させるのではなく、他人からの言葉によって紗和に影響を与えたかったからです。また、ドラマでは教師、画家、編集者と文化系が多く、杉崎には体育会系キャラで登場させました」と新キャラクターを登場させた理由を明かした。

上戸演じる主人公・紗和の目線のみで描かれる本作だが、北野や乃里子の目線でも観られる作りになっているそう。「登場人物のそれぞれに想いがある。だから、多角的視点から観られるようにもしました」と西谷監督。「例えば、乃里子を敵役だけに扱うつもりは毛頭なく、一生懸命に生きる一人の女性として描いています。彼女の言葉は常に正論だけど、越えられない悲しみに共感する観客は大勢いると思います」。観客に誰が良い、誰が悪いと捉えられないように意識をしたという。

日本での完成披露試写会の前に、イタリアの「ウディネ・ファーイースト映画祭」でワールドプレミア上映され、監督も現地に赴いた。上戸が主催するイタリア人女性に「イタリアでは不倫はどうなんですか」と質問をしたところ「不倫はそもそもあるものなので、法的措置などはない」と返ってきた。それを受け監督は「『愛は奪うもの』と、根底にあるものは同じでも、本音と建前の日本人と感情に素直なイタリア人との温度差がある」と文化の違いを感じた。

今回のメインテーマ曲を担当したのはLOVE PSYCHEDELICO。「ミュージシャンというだけでなく、映画作りのクリエイターとして参加してくれました」。何度も話し合いを重ね、目に焼き付くほど仮編集の映像を見て、妥協することなく曲を奏で、詩を生み続けたという。そして、楽曲が完成した。「愛の深さを芸術として捉え、たかが不倫というところに留めたくなかった。クオリティーの高い愛の讃歌ができました」と監督も大満足の楽曲がどのように使われているのかも期待したい。

最後に「今作はラブストーリー以上に、人間の本質に切り込みました。当然紗和と北野の恋愛の行方を見届けていただきたいですし、なおかつもう一つ紗和と乃里子の女性同士の生き様のぶつけ合いというものを観ていただきたいです」とコメントした。

映画『昼顔』は、連続ドラマで道ならぬ恋に落ちた紗和(上戸彩)と北野(斎藤工)の3年後を描いたストーリー。『容疑者xの献身』(08年)、『任侠ヘルパー』(12年)、『真夏の方程式』(13年)など、数々の作品でその演出力を高く評価された西谷弘監督がメガホンを取った作品。

【取材・文/南 華凛】

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