AK-69の新作シングル「STRONGER」は亡き父に宛てた手紙

2016年、ヒップホップの名門レーベルDef Jam Recordingsへの電撃移籍、そしてアルバム「DAWN」のリリース、さらにクラブツアーと、精力的な活動を続けたAK-69。2017年10月18日(水)に日本武道館での公演を控えるなか、6月9日(金)にデジタルシングル「STRONGER」をリリースする。昨年末に他界した父親への思いを歌った新曲について、本人が熱く語ってくれた。

愛知県小牧市出身のAK-69は、東海エリアが誇るヒップホップアーティスト
  • 愛知県小牧市出身のAK-69は、東海エリアが誇るヒップホップアーティスト

優しさとは強さ。それを親父が教えてくれた。

――父親はどのような方でしたか?

「元気なころのイメージは“いい人”。調子のいい人というか、職場でも若い子から同世代にまで好かれる人間で、仲もよかったですよ。うちは母ちゃんが強い家庭で、『母ちゃん、うるさいよな!』と2人で意気投合することも多かった。でも、仕事を転々としていたのも知っているし、父親としての威厳もなかったから…。『いい人だけど、オレはこうなっちゃいかん』っていう気持ちがありました。心のどこかで親父を少し見下していたのかもしれないですね」

――別れの覚悟はかなり前からあったんですか?

「以前から体のあちこちをガンで患っていて、早期で発見して手術…そんな日々を繰り返していました。でも、肺に転移したって宣告されたことをきっかけに、自分も受け止めましたね。医者の先生からは、『肺がんは想像できないほど苦しい』って聞かされました。それなのに親父は、見舞いの人が来るたびに酸素マスクを外して相手をする。『外さんでもええがや』って注意しても、言うことを聞かない。看護師さんに対しても気遣いをしていて、まあ『それも親父っぽいな』って思っていました。まだ“いい人”のままでしたね」

――死期が近づくにつれて、そんな“いい人”の印象が変わっていった?

「そうですね。本当に苦しそうなのに、誰かが見舞いに来るたび、いつも通りに振る舞って周囲に気配りを続けていました。そんな中、ある日、先生に呼び出されて言われたんです。『私たちは驚いています。お父さんはああやって気丈にしていますが、もう本来なら錯乱するくらいに苦しいはず。まだまだ先があると思っているかもしれませんが、今夜がヤマだと思うので覚悟しておいてください』って。先生の言葉どおり、その話をされた翌日の夜に他界しました。死に目に立ち会って、初めて親父を尊敬しましたね。人間は、一番苦しいときに本質が出るはず。ずっと“ただのいい人”だと思っていたけど、実はそんな簡単な言葉で表現できる人じゃなかった。人生が燃え尽きるまで苦しさを隠そうとして、周囲のことを考えて気丈に振る舞っていたし、オレたちの話に耳を傾けて最期まで頷いていた。正直『自分が同じ立場だったらそれができるのか?』と考えさせられましたね。“優しさ”は“強さ”なんだということを、最後に親父に教わりました」

【写真を見る】「STRONGER」アートワーク。サングラスも帽子も身に付けていないのは、“素の自分”を表現しているという
  • 【写真を見る】「STRONGER」アートワーク。サングラスも帽子も身に付けていないのは、“素の自分”を表現しているという

――新曲「STRONGER」は、これまでのようなストレートなメッセージソングとは少し違いますね。これまでと比べると、リリック(歌詞)も極端に英語が少ないですし。

「幸せなことに自分はアーティストだから、親父の存在や思い出を作品として残せる。親父に対して思うことがなければ書くこともなかったと思いますけど、あんな最期を見せられたらね。『STRONGER』はファンやリスナーに向けたメッセージソングとは思っていなくて、これは天国にいる親父に送る手紙ですね。リリック(歌詞)も素直に飾らない言葉が自然と出てきましたね。英語が少ないのも意識していたわけではないけど、自然とそうなったかな。“ありがとう”とか“ごめんね”とか当たり前に思えるような言葉も、オレにとってはなかなか言えない特別な言葉。本当に死に目のときくらいじゃないかな、親父にこういう気持ちを伝えることができたのは」

――父親との別れを経験した今、ファンに伝えたいことはありますか?

「今はみんなに、『親が元気なうちにいっぱい会って話したほうがいいよ』って思うけど、それを言ったところできっと誰も会いに行かないからね~(笑)。ただの悪ガキだったオレがアーティストになってから、親父はずっと応援してくれた。職場でもオレのことを自慢していたみたいで…まあ、その辺が親父っぽいんですけどね(笑)。でも、こうやって元気に頑張っている姿を親に見せるのが、最高の親孝行なんじゃないですかね」

――最後に、今後の予定を聞かせてください。

「AbemaTVで番組がスタートしたり、事務所の他のアーティストのことで動いたり。自分自身のことよりも、ヒップホップシーンに対する活動が増えてきた気がしますね。周囲が盛り上がることで、もうオレは神輿を担がれたいんですけど、まだまだ楽をさせてもらえない(笑)。それは冗談ですけど、まずは最新アルバム『DAWN』を完結させることかな。10月に武道館でライブをやるんですけど、そこで作品として完結するっていうイメージです。『AKってこんなにすげえライブをやるんだ!』って改めて知ってもらいたいですね。新しいアルバムも制作意欲は十分ですよ。“Forever Young”を貫いて、今年も走り続けるつもりです」

〈2017年6月1日取材〉取材・文=初野正和【東海ウォーカー/吉橋和宏】



【AK-69プロフィール】孤高のヒップホップアーティスト。「険しい道を敢えて選ぶ」という自身の歌詞にもあるとおり、勝ち上がりづらいい環境から頂点を目指すラッパーである。オリコン総合DVDチャート1位を獲得したほか、音楽アワードMTV VMAJ 2015にて「BEST HIP HOP ARTIST」を受賞。ニューヨークのNo.1 ヒップホップラジオ局と名高い“HOT97”で日本人として初のインタビューを受け、同局主催イベントへのライブ出演も果たす。国内では、2014年に日本武道館を含むアリーナツアーを成功させ、翌2015年には全国13都市を回るキャリア最大規模のホールツアーを開催した。プロ野球選手登場曲の使用率は2年連続No.1(2014年、2015年)。ボクシング世界王者やサッカー選手、騎手、体操、格闘技などのトップアスリートから、IT企業や多くの経営者たちまで、各方面より絶大な支持を受ける。2016年1月、さらなる"インディペンデント"を求めて、自身が代表を務める「Flying B Entertainment Inc.」を設立。同年4月には、伝説的なヒップホップレーベル「Def Jam Recordings」の国内再始動後初のアーティストとして電撃契約を果たす。同年11月23日には、同レーベルより初のフルアルバム「DAWN」をリリースしている

キーワード

関連記事

[PR] おすすめ情報