全校生徒が叩いて作る「創立記念制作」

10月6日より大網白里町立増穂中学校で行われた、創立20周年記念制作の授業風景
  • 10月6日より大網白里町立増穂中学校で行われた、創立20周年記念制作の授業風景

今年、創立20周年を迎える大網白里町立増穂中学校で、美術の授業時間を使って創立記念作品を作る授業が始まった。授業は10月6日から2週間あまりに渡って行われ、全校生徒467人と教員37名が1立方メートルの「鉄の箱」をハンマーで叩くことでこの学校の生徒である「跡」を残す作品づくりに取り組んだ。作品は11月24日の創立記念日にあわせ、同校グラウンド脇に設置される予定だ。

作品づくりの指導にあたるのは、美大出身の橋本雄大先生(32)。増穂中学校に赴任して1年目だが、生徒と一緒に作品を作るという夢のため、積極的に活動を続け「生徒会長や用務員さん、いろいろな方に協力をしてもらって」実現までこぎつけた。

「鉄の箱」は1メートル四方の鉄の板をつなげて作られた立方体で、これを大小のハンマーを使い、1人2分ほどの持ち時間で自由に叩いていく。叩く際には、バーナーの炎で鉄を変形しやすくしておく。

半年後に卒業を控える三年生からようやく学校生活に慣れてきた1年生まで、生徒1人ひとりがそれぞれの思いを込めて鉄の箱を叩き、変形させ、1つの「彫刻作品」を作り上げていく。

もともと「鉄の箱」を叩いて作る作品のアイデアは橋本先生がパフォーマンスアーティストとして活動していた時期のもの。「アイロンファイト」と名づけられたこのパフォーマンスで、過去にはヨーロッパの芸術祭に招待を受けたこともある、本格的な「アート作品」なのだ。

授業はテニスコート脇にあるところで行われた。お手本とばかりに橋本先生が大声を上げてハンマーを振り下ろす。声を上げて笑う生徒たち。反応はいいようだ。

はじめは鳴り響く音に驚き、戸惑いを見せる生徒もいたが、積極的に参加するほかの生徒を見て「打つときは緊張したけど、意外とへこんだので、自分の(打った)場所がわかるようにできた」と、終始楽しんでいた様子。野球部に所属する1年生の男子生徒は「野球のバットスイングをやったらうまく行った」と得意気に語る。

初めて見るクラスメイトのたくましい姿やみんなで協力して作る楽しさは、生徒や教員に新鮮に写ったようだ。

また、授業後に生徒が書いたアンケートに「最高の思い出になった」(1年生男子)「この彫刻を見るたびに自分がこの学校にいたことを思い出せる」(3年生女子)「自分が叩いて作っ

たものが学校に残ることを誇りに思う(同女子)と、先生たちが期待していたことに気付いてくれる生徒が多かったのも発見だったという。

さらに、教員側が期待していた以上に生徒の理解が深く、驚くような鋭い意見もあった。「叩き方や叩く場所でみんなの性格がわかるような気がした」(3年生男子)「こんな形の芸術もあるんだとわかった」(3年生女子)。

授業終了後、「生徒のほうがいいところをついていて、こちらが還って刺激になった」と橋本先生。決められたことをやらなければならない学校の授業の中で、生徒の積極性を引き出すのは容易なことではない。1つの作品を通じた、見えない「コミュニケーション」が、創立から20年の学校の歴史の中に、大きな「跡」を残したに違いない。設置の日が待ち遠しい。【千葉ウォーカー】

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