『ベイビー・ドライバー』 エドガー・ライト監督、1シーン長回しに28テイク!

『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督にインタビュー
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『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(08)や『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(11)など、エッジの効いた作風で知られるエドガー・ライト監督が、本格的にハリウッド進出を果たした『ベイビー・ドライバー』(8月19日公開)。カーアクションと音楽を一体化させた勝負作は、アクション映画の新機軸を打ち出した! 来日した監督を直撃し、この快作の舞台裏について話を聞いた。

アンセル・エルゴート演じる“ベイビー”は、そのベイビー・フェイスからは想像できない天才ドライバーで、裏組織の逃がし屋を務めている。ある日、運命の女性デボラ(リリー・ジェームズ)と恋に落ち、闇の世界から足を洗おうとするが、最後の強盗計画で窮地に追い込まれてしまう。

ベイビーは交通事故の後遺症で耳鳴りが止まらず、常にiPodで音楽を聴いている。エドガー・ライト監督はその設定を逆手に取り、彼が聴いている音楽と劇中のアクションをシンクロさせるという離れ業を披露した。

「21歳の頃から本作の構想はすでに始まっていた。音楽に対してシーンを振り付けていくことがもともと好きで、これまでの作品でも少しずつやってきたことなんだけど、いつか『ベイビー・ドライバー』のような作品を作りたいという気持ちがあったんだ」。

まずは、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンズの「ベルボトムズ」に合わせた流麗かつダイナミックなカーチェイスのシーンで冒頭からカウンターパンチをくらう。確かにこれは“カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』”だ。

「最初から5分以上の曲をフルコーラスで使って、観客の心をつかみたいという思いがあった。音楽がメインで台詞はほとんど入れてない。こういうシーンを冒頭にもってくることで『この映画はこういう映画なんだ』と示そうとした。そもそも映画のオープニングシークエンスというのは、観客に魔法をかけるようなものでないといけないから」。

その後に来るボブ&アールの「ハーレム・シャッフル」に合わせた1カットの長回しシーンもすごい!瞬きするのも惜しまれるほど、流麗でエキサイティングなシーンが続く。「あのシーンを撮るにあたって、9時間で28テイクも撮ったよ。どのシーンもリハーサルはかなりやったけど、あのシーンはアンセルが本番の2日間前に通し稽古もしっかりとやった。そのメイキング映像は非常に面白いから、DVDの特典に入ると思う。みんな衣装じゃない格好でやっているからけっこうウケるよ(笑)」。

監督デビュー作の『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)から本作にいたるまで、エドガー・ライト作品では、どちらかというとイケてないマイノリティな男たちがヒーロー顔負けの活躍ぶりを見せてきた。耳鳴りに悩まされているベイビーもそのひとりだ。「実は聴覚障害者の方がこの映画を観てとても喜んでくださった。彼らはハリウッド映画の主役のヒーローが耳鳴りをもっていることに、驚いていたよ」。

エドガー・ライト監督がそういうキャラクター設定をするのには理由がある。「『ショーン・オブ・ザ・デッド』の主人公はちょっと怠け者で、『ホット・ファズ~』の場合はワーカホリック、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のマイケルも人の気持ちをいまいち理解できなかったよね。ベイビーは良い青年でハートはあるけど、間違った道を歩んでしまっている。ポジティブであろうとネガティブであろうと、その主人公たちのいろんな側面を見せることで、彼らに共感してもらいたいんだ」。

これまで何作も組んできた盟友、サイモン・ペッグも『ベイビー・ドライバー』を観て大いに気に入ってくれたそうだ。「プレミアにも招待していたけど、彼はちょうど『ミッション・インポッシブル6』を撮っていたので来れなくて、わざわざお金を払って観てくれた。すごくうれしかったよ」。

「自分も出演したかったと言ってなかったですか?」と聞くと、監督は笑いながら「それはなかった。だって彼は僕と組まなくても十分仕事があるから、全然罪悪感もなかったよ」と答えてくれた。

『ベイビー・ドライバー』は全米では6月28日より公開され、公開初週の5日間で3000万ドルを記録する大ヒット作となった。メジャースタジオと組んでも、独自の作家性を損なうことなく、むしろ有り余る才能を大舞台で開花させたエドガー・ライト監督。今後も彼にしか撮れない快作を撮り続けてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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