C・ノーラン監督は、なぜ『ダンケルク』でハリー・スタイルズら若手俳優を起用したのか?

クリストファー・ノーラン監督がキャスティング秘話を明かした
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「戦争映画ではなく、『サスペンス・スリラーを作るんだ』という思いで臨んだ」。クリストファー・ノーラン監督は映画『ダンケルク』(9月9日公開)について、こう語る。キャリア初の実話に挑み、戦地における“本物の緊迫感”にこだわって完成した106分。観客にとっても、まるで戦場に入り込んでしまったかのような、臨場感たっぷりの映像体験となるはずだ。来日したノーラン監督に、本作に込めた思いを聞いた。

第二次世界大戦初期に行われた史上最大の撤退作戦“ダンケルクの戦い”を映画化した本作。海の町・ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士たちの生き残りをかけた戦いを、陸・海・空という3つの視点から描く。史実を描く上では、「徹底的にリサーチを重ねた」というノーラン監督。「実際にダンケルクにいた人たちの証言や実体験を調べ、観客に当事者であったかのように感じてもらえる、主観的な映画を作りたかったんだ」と史実に敬意を払い、主観的にキャラクターたちの体験を感じてほしかったという。

その思いは、上映時間にも表れている。ノーラン監督といえば、『ダークナイト』は152分、『インセプション』は150分といったように、長尺の作品を多く手がけてきた。一方、本作は106分とノーラン監督作としては短めだ。その理由については「戦争映画ではなく、サスペンス・スリラーを作るんだという思いで作ったんだ。そういったアプローチで脚本も書いたし、とにかく“観客に絶え間ない緊張感を強いる”ということを意識していた。となると、やはり短めの映画でなければならない。途中で休憩させるようなことはしかくなかったからね。脚本も76ページと、自分の作品歴の中でいまだかつてないほど短いものになった」と告白する。

「よくある戦争映画だと、激しい戦場シーンのあとには、登場人物が自らの背景を語り合う場面があったりする。しかし今回は、そういった構造にはしたくなかったんだ。あくまでも、絵で引っ張っていくような映画。例えば、アルフレッド・ヒッチコックやアンリ=ジョルジュ・クルーゾー、ロベール・ブレッソンといった監督がとったような手法で撮りたいと思った。音楽にもこだわった。音楽のリズムと映像のリズムを合わせて、どんどん観客のテンションを上げられるようにした。それもすべて、観客に緊張感を強いるような作品になればいいと思ったからなんだ」。

戦場のリアルな緊迫感を描く。その“本物への追求”は、キャスティングにも及んだ。「40歳くらいの俳優に若い兵士の役をやらせるような、いかにもハリウッド的な手法はとりたくないと思っていた。実際にあの戦場で戦った兵士たちと、実年齢が近い俳優たちに演じてほしかった。すると当然、ニューフェイスを起用することになる」と言うように、物語の中心を担う若き兵士の役を新人俳優たちに託した。

兵士トミーを演じたのは、無名の新人であるフィオン・ホワイトヘッド。また、人気グループ「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズが、兵士アレックス役を演じた。「ハリーはとても有名だけれど、それはあくまでも音楽の世界でのことで、映画は初挑戦だ。そういう意味ではとてもフレッシュだ。ニューフェイスをそろえると、観客も彼らに何が起きるか予想がつかなくなるもの。彼らの経験する旅が、よりハラハラドキドキするものにしたかったんだ」とその狙いを語る。

さらに「ある程度オーディションで絞ってから、『この人とこの人を組み合わせたらどんなケミストリーが生まれるだろうか?』と考えて、最終的な配役を決めた。私にとっても大変興味深い、充実した時間だった。すごくいいアンサンブルが生まれたと思う」とキャスティングに自信をのぞかせる。「周囲を、ケネス・ブラナーやマーク・ライランス、トム・ハーディといったベテラン陣で固めていたので、若き兵士たちについては多少ギャンブルをしてもいいかなと思えた。今まで発掘されていなかった新たな可能性を見つけることも、監督としての大事な義務のひとつだと思っている」。【取材・文/成田おり枝】

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