”オーガニック”を超越する「モーガニック」に人生を捧げる男

山澤清さん。70歳。オーガニック(有機農法)を凌駕する「モーガニック」の提唱者として、自然化粧品の生産や国内唯一の食用鳩の飼育など数々の事業を起こしてきた彼が、山形県鶴岡市で「ベジタイムレストラン土遊農(Do You Konw?=どうゆうのう)」を今年6月に開店。次々に革新的なアイデアを具現化し続ける、業界の風雲児が山形にいると聞き、訪ねてみた。

普段両足にウェイトをつけて作業するせいか、70歳とは思えない筋肉ボディの山澤さん
  • 普段両足にウェイトをつけて作業するせいか、70歳とは思えない筋肉ボディの山澤さん

大旅館のヒモだったからできたこと(笑)

1980年、日本にまだまだ“オーガニック”の概念が定着していなかったころ、山澤さんは「ハーブ研究所スパール」を立ち上げた。有機肥料は食用鳩の糞と、無農薬で化学肥料不使用の有機栽培された麦の穂のみを使用。その鳩はノンワクチンで、無農薬の有機の麦を餌にしているので、完璧なオーガニックによる循環農法を確立した。

ちなみに“オーガニック”を語る商品は現在ではたくさん出回っているが、日本の有機JASでは、実は20種類の農薬使用が認められており、動物の餌に成長ホルモンや抗生物質などを使っているので、完璧なオーガニックを行うのは非常に難しい。しかし山澤さんの農園では、30数年来一度も化学肥料や農薬を使っていない。これが、オーガニックを超える「モーガニック」(more organicの略)と名付けた所以だ。

山澤さんはもともと農薬散布の指導などを行う大型農業技術者。なぜモーガニックを究めたのか?「農薬をまき散らした農園は、土中の微生物のバランスを崩すから、鳥も小さい生物も何もいない。こんなのおかしいし、悲しいことだと思ったんだ」。さらに息子さんがアトピー性皮膚炎になったことも、彼の背中を押した。「農地を元の状態に戻して、安全な植物や化粧品を作りたい!」と。それにしても、誰も手がけていない事業を起こすには、莫大な費用や時間がかかったはず。「老舗の大旅館のムコだったからね。いわゆるヒモだったのでできた(笑)」。  

左は600年前からあるトマトの先祖から作られた「トマトそのままのスープ」。メインは「本日のパスタとベジキャスト」
  • 左は600年前からあるトマトの先祖から作られた「トマトそのままのスープ」。メインは「本日のパスタとベジキャスト」

ほぼほぼ“野菜”のランチ、2000円の価値

さて、伝統野菜ランチをいただくことにする。前菜のスープ2種、メインの伝統野菜パスタ、オーガニックティーで2000円(女性のみ。男性は2200円)とは、一瞬高いと感じる。しかもここは首都圏ではなく山形県鶴岡市。これで人が来るの?と思いきや、平日にも関わらず、開店から女性を中心に次々にお客さんが訪れる。

スープは一切水を加えず、本来の野菜そのままの味を伝える。まろやかかつ濃厚なスープの滋味を楽しんだ後は、昔トマトやなす、半白きゅうり、泉州絹皮水なすなど、在来種・伝統野菜てんこ盛りのサラダとパスタを口に運んでみると…。

「塩は野菜全体量の2%だけで、野菜本来の味が引き出せるんだよ。それに伝統野菜は食べる人間に元気をくれるんだ」との言葉通り、ふだん食べ慣れた野菜の倍以上の味の濃さを感じる。とにかく濃い!腹持ちがいい!

冒頭で、山澤さんを業界の「風雲児」と表したけれど、保守的な地方にあっては「異端児」と見る人も。頭の回転がずば抜けて早く、事業を熱く語る山澤さんは、常に時代の先端を走る印象を受ける。時に早すぎて理解を得られないこともあったのでは? 「俺のこと、ただの酔狂だと思っている人もいるだろうね」。しかし、いつの時代も、革新の技術や文化は、“志のある酔狂”の情熱から生まれるもの。全ては「自分のためだけではなく、未来の子供たちのため」。山澤さんの信念はブレることがない。

レストランの内観。伝統野菜農園のすぐ隣にある
  • レストランの内観。伝統野菜農園のすぐ隣にある
■ ベジタイムレストラン土遊農(どうゆうのう)
住所:山形県鶴岡市羽黒町市野山字山王林121-1
電話:0235-33-8310
営業時間:11:30〜16:00
定休日:木曜

取材協力:日本海きらきら羽越観光圏

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