蒼井優・阿部サダヲW主演のオール関西ロケを敢行!『かの鳥』白石和彌監督、クズ満載の映画を語る

インタビューに応じてくれた白石和彌監督
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沼田まほかるの人気ミステリー小説を蒼井優と阿部サダヲのW主演で実写化した映画『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年10月28日公開)。メガホンをとったのは『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』など実録路線のクライムムービーで映画界から高い評価を受けている鬼才・白石和彌監督。ノンフィクションを原作に骨太な社会派エンターテイメントを手掛けてきた白石監督が、本作で初めて大人のラブストーリーに挑戦した。初めて描いた愛について、オール関西ロケの撮影秘話、そして役者陣の演技など話を聞いた。

「共感度0%」最低の登場人物しか出てこないのに、ページをめくる手が止まらないとベストセラーになった同名小説が原作の本作。恋愛に依存せずには生きられない嫌な女・十和子と、十和子に嫌わられながらも執着心を隠さない不潔な男・陣治が織り成す愛の物語は、誰も予想できない結末を迎える。主人公・十和子を蒼井優、陣治を阿部サダヲが熱演。また、十和子と肉体関係を結ぶゲスな男・水島を松坂桃李、十和子の元恋人でクズな男・黒崎を竹野内豊が演じている。

これまでの実録路線とは違い、初となる愛を描いた作品に挑戦した白石監督。原作を読んで感じた「究極の愛」を映画にしたいと希望した。以前から描きたいと思っていた愛について、監督は今の日本映画界の状況と絡めて語ってくれた。「今の日本映画は『恋』の話ばっかりで、松坂くんが演じた水島並みに薄っぺらい(笑)自分が手掛けるなら薄っぺらなものにはしたくないなと。物語の後半まではゲスな話を覆いかぶせておいて、最後にそれを取り払ったら愛が見えればいいなって思って撮っていたので、ラブストーリーを撮るぞっていう意識はなかったです」

映画化するにあたって白石監督がこだわったのが、原作の舞台である関西で撮影すること。潤沢な予算がある作品ではなかったため、都内近郊で撮影する方法もあったが、関西での撮影は譲れなかったと話す。「十和子と陣治は喧嘩しても特に謝ることもなく、一緒に飯食ったりできる。その関係性って、大阪弁で話している雰囲気や独特の空気感がないと成立しない気がしたんです。せっかく関西で撮影しているからロケ地は通天閣ってなると思うんですけど、それは恥ずかしいなって(笑)何気ない場所をできるだけ探して、関西の空気感が出る場所を見つけて撮影をしました」

主人公・十和子を演じるのは蒼井優。原作を読んだ白石監督は、十和子は彼女しかいないと確信。彼女が十和子を演じれば、女優としてさらなる飛躍はもちろん、30代に突入した彼女も十和子のような役を欲しているかもしれないと感じ、オファーした。撮影当初の蒼井について監督は振り返る。「彼女は観客に嫌われるのは自信があると言ってたけど、どこまで嫌な女にするべきか加減がわかりませんって言われました。なんせ冒頭の十和子はクレーマーですから(笑)彼女には自分の思っている最大の嫌な女を演じてくれとお願いしました。陣治を足蹴にしても、どっかで飯食ったりする関係性があれば、観客はギリギリのところで絶対嫌いにならないからって」

十和子に執着する下劣な男・陣治を演じた阿部サダヲについて、白石監督は現場でのセリフの追加など無茶な要求をしたが、文句を言わずにやってくれたと話す。また、男性目線で陣治に肩入れしてしまった監督は、それがちょうど良かったと明かす。「女性のまほかるさんが書いた作品だから、映画は男である僕が陣治に肩入れすることで2人の関係性を描くのにバランスが取れたと思います。2人は傷つけ合いながらじゃないとコミュニケーションできない。自分と相手を傷つけることから何かが始まるっていうのは、今の時代では必要じゃないかって、この作品を通じて感じましたね」

ゲスな男・水島、クズすぎる男・黒崎。十和子を取り巻く男たちも個性的なクズばかり。水島を演じる松坂、黒崎を演じる竹野内は、共にパブリックイメージと間逆な役柄を見事に演じきっている。白石監督も2人の演技についてユーモアを交えて賞賛する。「松坂くんは本当に頭のいい俳優。台本を読んで自分のポジションを理解して役に入っている。なんでこの役のオファー受けたの?って聞いたら『こんなおもしろい役ないじゃないですか!』って(笑)竹野内さんが演じた黒崎も本当にひどい男ですよね。可愛げが全くない。僕も数々のクズを撮ってきたけど、歴代ナンバーワンのクズです(笑)」

本作を語るのに外せないのが、蒼井と松坂の大胆な濡れ場。ロマンポルノも手掛けた白石監督だからこその演出だと思ったが、ロマンポルノの時ではあまり意識しなかった生々しさを表現したと話す。「当初脚本では落としていた松坂くんの言葉責めのセリフも戻しました。キスするにしても舌から先に入れてとか、キスの音とかの細かいところも演出しましたね。ゲスなシーンなので生っぽい感じにしたかった。ラブホテル周辺でのシーンも良さそうな場所をいろんな人に聞いたり、実際に見て回ったりしながら一生懸命探しました(笑)」

役者冥利に尽きるとは何か。白石監督は役者にオファーする際、必ず考えていると明かす。毎回同じような役を演じていると、役者も演出する方もモチベーションが下がる。自分にもこんな役のオファーきたと感じ、粋に演じてくれる方が役者のテンションを引き出せると監督は話す。「役者が楽しめるような役をオファーできるように、意識をしています。そのオファーさえ受けてくれれば、演出は半分ぐらい終わっているんですよね。今回の場合、撮影中の熱量が高かったし結束感もあった。ひどいシーンを撮影していても先がしっかり見えているのですごい充実していました」

最後に白石監督は、今の日本映画に一石を投じながら本作の魅力について語ってくれた。「いろんなことがわかった瞬間、それまで汚いと思っていたものが美しく、嫌いだと思っていた人を好きになれる、この逆転が本当に美しい。だからこそ、魂が揺さぶられて観終わったあとの余韻がずっと続く。今の日本映画って余韻を楽しめる作品が本当に少ない。そこもぜひ楽しんでほしいです」

インタビューの最後に、撮影中は大阪に滞在していたと話した白石監督。お気に入りの場所は鶴橋だそうで、撮影が終わるとキャストとスタッフひたすら焼肉を食べていたと笑顔で裏話も明かしてくれた。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』は10月28日(土)より梅田ブルク7ほか全国ロードショー。

【関西ウォーカー編集部/山根 翼】

◆『彼女がその名を知らない鳥たち』
10月28日(土)より梅田ブルク7ほか全国ロードショー

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