『ぼくの名前はズッキーニ』クロード・バラス監督、未来のクリエイターたちに“ストップモーションアニメ”の裏側を語り尽くす!

日本大学芸術学部アニメーションクラスで授業を行なったクロード・バラス監督と片渕須直監督
  • 日本大学芸術学部アニメーションクラスで授業を行なったクロード・バラス監督と片渕須直監督

第89回アカデミー長編アニメーション賞にノミネートされるなど、世界中で大絶賛を集めたストップモーションアニメ『ぼくの名前はズッキーニ』(18年2月10日公開)のクロード・バラス監督が来日し、28日に東京・江古田にある日本大学芸術学部のアニメーションクラスで授業を行った。

このアニメーションクラスは、昨年公開され大ヒットを記録し、第90回アカデミー長編アニメーション賞にもエントリーしている『この世界の片隅に』の片渕須直監督が講師を務め、未来の日本アニメ界を支えるクリエイターを育て上げていくためのもの。特別講師に招かれたバラス監督は、ストップモーションアニメの制作過程について、緻密なレクチャーを行なった。

本作は、不慮の事故で母親を失くしてしまった少年・ズッキーニが、預けられた孤児院で、様々な境遇を抱える仲間たちとともに過ごし、それまで知ることのできなかった友情や、人の温かさ、そして初恋を経験して成長していく物語。バラスは10年ほど前に原作と出会い、今の子供たちに向けて深い感動を伝えていきたいという思いを込めて制作を決意したのである。

授業では、ストップモーションアニメの制作にまつわる、非常に専門的な内容が次から次へと語られた。そもそもストップモーションというのは「実写の映画と、一般的なアニメのちょうど中間に位置する技術である」と表現したバラス。1秒間に12個のイメージを撮りながら、役者であるパペットが動いているように見せていく、途方もない作業なのである。

そのパペットを動かしていく過程では、様々なテストが重ねられていく。そのパペットがどのくらい動くことが可能なのか、どのように感情を放出させていくか。時にはアニメーター自身がパペットの代役を務めて、シーンの分析を行なっていく。それについてバラスは「アニメーターたちが潤滑にパペットを操作できるようにすることが大事である」と一貫したモットーを語る。

まるで日本の“福笑い”のように、ひとつひとつの顔のパーツをマグネットで作り出すパペットは、頭や目を大きくすることで「そのエモーションを伝えることが可能であり、同時に制作費を節約することもできる」と、赤裸々なコメントも厭わない。そして「頭の中が空洞になっていて、眼球も容易に動かすことができるんです」と言って立ち上がった彼は、手に持っていた主人公ズッキーニの人形の眼球を実際にグリグリと動かしてみせた。

さらに、リアリティを追求した本作で、最も重要な役割を果たしているのは“声”であると明かす。声優に実際に演技をしてもらいながら、キャラクターの声を吹き込んでいくという作業に及んだそうだ。それに加え、ワンシーンワンカットの長回しを行うことで、感情の深さを表現するなど、キャストであるパペットたちが生きた俳優のように感情をあらわにするための演出を、徹底的に行なったことを明かした。

そんな中、レクチャーを聴いていた片渕から「長回しだと、途中で失敗したら大変じゃないですか?」と訊ねられたバラス。すかさず彼は「ストップモーションは、やり直しがない。何度もリハーサルを重ねて、決定に至ったら元に戻ることはない」と答えた。緻密な準備を経てこそ可能になる、ストップモーションアニメの難しさが垣間見えるコメントといえよう。

そして「動きのある場面と動きのない場面、音のある場面とない場面のバランスが大事」と語り、劇中でズッキーニが孤児院を訪れた最初の夜、寝たふりをしているシーンの映像を流しながら解説するバラス。

「このシーンはストップモーション的には非常に大きなチャレンジだった」と振り返るバラス。「主人公の不安を声と照明だけで表現し、アニメ的な動きを見せない。それを1分20秒続けるというのは、非常に大変だったよ」と明かした。

授業の終盤には、学生たちからバラスに向けて様々な技術的な質問が投げかけられた。パペットの瞳がもたらす情報量の多さであったり、劇中のワンシーンの撮り方であったり、好奇心旺盛に授業に取り組む、未来のアニメーターたちの姿に、バラスは笑顔を見せながら丁寧に解説を重ねていった。

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