60年の歴史に幕を下ろす「人世横丁」【Part2】〜復活と終焉〜

生きたレトロ
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人世横丁は80年代後半、空前の好景気に客を取られ、バブルが弾けた後も活気を取り戻すことなく治安もイメージも悪化の一途をたどる。そこで、「○天」の代表・中村規久代さんらは平成11年に人世横丁商店会を結成。まず力を注いだのは風俗店を排除することだ。警察に協力してもらうことはもちろん、出店希望者には不動産業者が一次面接を、商店会が二次面接を行った。さらに、商店会が得た助成金で看板を立て、提灯は年4回飾り付けを変えるなどして徐々に明るさを取り戻した。それからの人世横丁はまさに右肩上がり。昨今のレトロブームも手伝って、店も客も若返り、老若男女があふれるようになった。ここ数年は「若い女性を見ない日がない」というほどだ。

中村さんは07年3月に「かわら版 人世横丁」という冊子を作成している。上で述べたような歴史を、まるで幕引きの儀式のようにていねいにまとめた本だ。「当時はまさか1年後に閉鎖することになるとは夢にも思っていなかった」というが、虫の知らせというやつか。閉鎖の危機を瀬戸際のところで何度ものりこえてきた横丁の住人たちに、今回の決定を残念に思わない者はいない。しかし同時に、誰もが終わりの時を予感していたと思うのは記者の勘ぐりすぎだろうか。横丁には不思議なほど湿っぽい雰囲気がないのだ。ラストスパートをかけ、最後に一花咲かせた。“やることはやった”満足感が、住人たちの表情にあらわれていた。

「まだ何も決定していないので、大きな声では言えないけど」と、前置きをしつつ「移転の話もあるんです」と中村さん。たしかに“美久仁小路に移転する”“横丁ビルができる”という話を耳にする。だが、今の段階では噂の域を越えないものばかり。なにより、中村さんのあいまいな言い方が、移転の難しさを物語っている。

移転が現実になるにしろ、これまでのような“作りものでない生きたレトロ”を感じることは難しいだろう。今は、未来の横丁に対する期待は胸に秘め、60年の歴史に幕を下ろす横丁の空気を存分に味わいたい。横丁のアーケードをくぐると「あなたの街に、横丁がありますか?」と書かれた看板が目に入る。サンシャイン60を真上に見上げ、赤提灯がゆれる横丁の中心で、それを見たあなたは何を思うだろうか。【東京ウォーカー/荒木紳輔】

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