キャサリン妃の御用達“アレキサンダー・マックイーン”、栄光の陰に燃え尽きたその生涯

天才デザイナー、その秘められた生涯に迫る
  • 天才デザイナー、その秘められた生涯に迫る

イギリス人ファッションデザイナー、故アレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリー映画『McQueen(原題)』が、米国で今月20日より公開される。アレキサンダー・マックイーンと言えば、レイプや虐殺をテーマにしたコレクションを発表し、お尻が半分露出する「バムスターパンツ」を生みだすなどして、90年代ロンドンのファッション界でセンセーションを起こした事で有名。

アレキサンダー・マックイーン
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マックイーンはその後、友人の自殺や母の死を経験し、鬱や薬物乱用の末2010年に40歳と言う若さで自らこの世を去った。マックイーンが他界した後のブランドは、サラ・バートンがクリエイティブ・ディレクターとして就任。最近はキャサリン妃やメーガン妃のお気に入りブランドとして「アレキサンダー・マックイーン」を耳にする事が多いのではないだろうか。

映画『McQueen(原題)』は、そんなマックイーンの記録映像や、家族、同僚、友人などのインタビューを基に、約20年間に及ぶ彼のキャリアを描く。92年にマックイーンがセントラル・セント・マーチンズ大学の卒業ショーとして発表したコレクション「Jack the Ripper Stalks His Victims」から、生前最後のコレクションとなる2010年の「Plato's Atlantis」まで、彼の生涯でターニングポイントとなった5つのショーを軸に5章に区切られている。

映画『McQueen(原題)』より
  • 映画『McQueen(原題)』より

本作の監督はフランス人映像クリエイターのイアン・バンホートと、『キンキーブーツ』(05)で有名な映画プロデューサーのピーター・エッテッドグイ。イアン・バンホートは主にミュージック・ビデオやコマーシャルの監督で、今回が初のドキュメンタリー作品となる。

2人とも、特にマックイーン本人やファッションに深い繋がりがある人物ではない。そのような客観性が、1人の人間の生涯を描くにあたり、ファッション界の偏見や、価値観に囚われずに済んだのかもしれない。

また、作中に流れる音楽はマックイーンが仕事中によく聞いていたという英国人ピアニストのマイケル・ナイマンが手がけている。ナイマンは生前マックイーンと親しく、マックイーンのためだけに作曲した「Lee’s Sarabande」が本作のメインテーマとなっている。

映画『McQueen(原題)』より
  • 映画『McQueen(原題)』より

作中のインタビューには、マックイーンの実の姉、甥のほかに同僚で親しい友人だったセバスチャン・ポンズやミラ・チャイ・ハイドが登場する。マックイーンは、身近な人々には、本名のファーストネームである「リー」と呼ばれていた。マックイーンの師でもあるイザベラ・ブロウが、ブランド名として彼のミドルネームである「アレキサンダー」の名を使うように進言し、ブランド名はアレキサンダー・マックイーンとなった。

デビューしてからマックイーンの才能はあっという間に世界に知れ渡ったものの、当時は知名度がすぐに収入につながらなかった時代。彼は失業保険のお金を次のコレクションの制作資金とし、昼ごはんを買うお金すらないほど貧乏だった。

マックイーンのデザイン・チームのほとんどが、彼の才能を信じて無給で参加していた友人達だったそうだ。そんな最中に、由緒あるフランスのファッションブランド、ジバンシィの主任デザイナーに抜擢され、彼のファッションデザイナーとしての人生は、より飛躍する事になる。

映画『McQueen(原題)』より
  • 映画『McQueen(原題)』より

ロンドンの労働者階級出身の少年リー・アレキサンダー・マックイーンが、類い稀なる集中力と、神懸かった創造力で成功に導かれていく様子と、ファッション界からの圧力、そしてエゴと葛藤し、心身ともに別人化して行く様子を、本作はバイアスなく描いている。

映画で描かれるマックイーンの素顔は、誰もが想い描く高貴な“ファッションデザイナー”とは違う。ダボダボのパンツ、よれよれのシャツにスニーカー。ビールとタバコを片手に、下ネタのジョークでゲラゲラ笑う陽気な青年が、本物の「リー・マックイーン」だったのかもしれない。

映画『McQueen(原題)』より
  • 映画『McQueen(原題)』より

マックイーンの人生はファッションだけでなく、映画や音楽にもインスピレーションを与えた、色鮮やかで凝縮されたものだった。天職にすべてを注ぎ、燃えつきたマックイーンの生き様は、たとえファションに興味がない観客でも、人として、感情的なレベルで共感できるはずだ。

映画『McQueen(原題)』は北米で7月20日から公開予定。

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