世界で活躍する日本人イラストレーターが手がけた、大宇宙を旅する虫たち! TVアニメ「スペースバグ」キャラクターデザイン・グリヒルさんインタビュー

TVアニメ「スペースバグ」キャラクターデザイン・グリヒルさん
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7月8日(日)より放送がスタートしたオリジナル3DCGアニメーション「スペースバグ」。本作のキャラクターデザインを担当したのは、マーベルやピクサーなどで活躍を続ける日本人イラストレーターユニットのグリヒルさん。グリヒルの作画担当・ササキさんと、カラリストのカワノさんのお2人に、大宇宙を股にかけた冒険に旅立つ小さな虫たちのデザインができあがるまでの経緯をうかがいました。

――グリヒルさんといえば、日本人アメコミアーティストとしての活動が広く知られていますが、マーベル・コミックで仕事をするようになったきっかけをお聞かせ願えますか。

ササキ:もう10年以上前のことになりますが、たまたまマーベルが日本人アーティストを募集していて、それでポートフォリオを送ったというのがきっかけです。

カワノ:ディズニーアニメが大好きで、その影響をすごく受けている絵柄という部分が、向こうの人の目になじみやすかったのかもしれませんね。

――その後、くしくもマーベルは、ウォルト・ディズニー・カンパニーに買収されたわけですよね。

カワノ:する仕事する仕事、なぜかディズニーにつながっていってるんです(笑)。「スター・ウォーズ」もそうですね。

ササキ:私たちがデビューしたとき、アメコミはほとんど認知されていなかったですから。ただ、90年代に「スポーン」が大ブームになったじゃないですか。あのころ、私たちもアメコミに興味をもったんですよ。

――でも、程なくして波を引くように、あのアメコミブームも去っていきましたよね。

ササキ:そうそう、一気にスンッ……ってなりましたよね。そのあと、サム・ライミ監督の「スパイダーマン」が流行ったけど、またすぐにスンッ……って(笑)。やっぱり「アイアンマン」の映画のヒットが大きいですよね。あそこから日本になじんできたというか。

カワノ:今ではマーベルグッズを身に着けた女の子を見かけるようにまでなりましたもんね。本当に、ずっとやりつづけてきてよかったなと思います。

――最近では、グリヒルさんが手がけたタイトルの邦訳化もなされるようになり、いよいよ仕事の幅も広がってきたんじゃないかというところで「スペースバグ」。こちらはどういう経緯でオファーがあったんでしょう?

カワノ:最初、今までの自分たちのスタイルとは違う、シリアスな大人向けの企画で声をかけていただいたんですよ。でも私たちは、アメコミでも子供向けレーベルをやってるくらいなので、ちょっと合わないんじゃないかと思ってお断りしたんです。それからしばらくしていただいた子供向けの企画が、この「スペースバグ」だったんです。で、これはおもしろそうだなと。最近は動物ものというか、虫もの自体が珍しいじゃないですか。

ササキ:その辺も大きく惹かれた理由のひとつです。昔はよくありましたもんね、「(昆虫物語)みなしごハッチ」とか「みつばちマーヤの冒険」とか。

――主人公のミッジはネムリユスリカという設定ですが、ほかの虫たちも細かく種類が設定されていたんですか?

ササキ:細かくは忘れてしまいましたけど、ちゃんとどれも決められてました。

カワノ:色は違ったりするんですけど、実際の虫を調べてデザインしてます。マルボはクモの巣を張らない、地中に住んでるタイプのクモで、ゲロッパは世界で一番大きいカエル(ゴライアスガエル)、その子分のイトー&カトーはアオガエルですね。

ササキ:とにかく虫の写真、虫の資料を集めまくりましたね。でも虫、苦手なんですよ(笑)。特にコオロギなんて……。

――でも、ちゃんと特徴を残しつつ、かわいらしくなってますよね。

ササキ:特に悩んだのが、腕(足)の本数です。昆虫らしく6本にするのか、それとも端折っちゃっていいのか。たとえばピクサーの「バグズ・ライフ」とかだとリアルに描いてるんですけど、ハッチとかマーヤは人間と同じような感じでしたよね。

――きちんと6本足で描かれていたのは、カマキリみたいな悪役寄りのキャラクターばかりでした。

カワノ:やっぱり6本とか8本にすると、モンスターっぽくなるんですよ。マルボは当初、二本足の直立しているタイプだったので、そこに6本の腕なんかつけたらもう……。まぁ、今のマルボだって、モンスターっぽいといえばモンスターっぽいんですけど(笑)。

ササキ:制作過程でいろいろな方に見てもらったら、特に女性から「やっぱりモンスターっぽくて気持ち悪い」という意見が出たんです。だから、彼はいちばん直してますね。で、そんなに内容にかかわってこないなら、もう足の数は省略しちゃっていんじゃないかということになったんです。

――ミツバチのエレンは、かなり人間っぽいデザインですが。

ササキ:中尾(浩之)監督は、たいていのものは一発で「いいね!」と言ってくださってたんですが、彼女に関しては何回もリテイクが来ましたね。眉毛は要るのか要らないのかとか、足も、もっとスラッとしてほしいとか……ものすごくこだわりが詰まってます(笑)。

カワノ:あと、ミッジの色も紆余曲折ありました。最初はもっと黄色かったんですけど、それだとハチに見えてしまうんですね。

――アメコミではササキさんが作画、カワノさんがカラーを担当されていますが、こういうキャラクターデザインのときも同じ役割分担なんですか?

カワノ:お互いにアイデア出しはしますけど、基本的には同じですね。この仕事を始めてから、ずっとこの作業分担は変わりません。

――今回みたいな3DCGのキャラクターデザインを手がける際、特に気をつけられたりするポイントはあるんですか?

ササキ:マフラーとか柔らかい小物をつけると難しいという話をうかがったことがあるので、その辺は少し気をつけて布モノは持たせないようにしてます。ゴーグルみたいに硬いものなら大丈夫らしいんですけど。

――ミッジのゴーグルは、昆虫の複眼を意識されてるんですか?

ササキ:いえ、これはもっと単純な話で(笑)、いわゆる冒険の象徴みたいなものです。なにかの刷り込みかもしれないですけど、つるんとしてると主人公っぽさも出ないんですよ。でもマフラーとかだとヒラヒラしてしまうし、ゴーグルになりました。

――虫やカエル以外にも、いろんなロボットが登場しますが。

ササキ:基本となるロボット(ドクター・ハンプティ)だけで、あとは別の方にお任せしました。メカに関しては、もっと得意でこだわりのある方がいらっしゃるでしょうから。メカを描くの、けっこう苦手なんですよ。マーベルでも「アイアンマンとソー、どっちが出てくる話をやりたい?」と聞かれたら、私たちは迷わずソーのほうを選びます(笑)。

カワノ:メカもの自体は好きなんですけどね。ほかのロボットたちも、かわいい感じにしてもらえてよかったです。

――実際に映像になったキャラクターをご覧になられていかがでしたか?

カワノ:実はまだ、チラッと第1話を観ただけなんです。そのときは自分たちのキャラクターが動いてるということよりも、声が付いてることがうれしかったですね。最初は海外での展開をめざしていると聞いていたので、日本語でしゃべってるというのも驚きでした。

ササキ:韓国で3DCGがつくられたとき、それを1回見せてもらったこともありましたね。やっぱりCGになると雰囲気も変わってくるので、そこから少し細かいところを直してもらったり。カエルとかは、けっこうそのままだったかな。

カワノ:でもカエルは、足を伸ばさないで歩かせてほしい、という注文だけしました。ほかのアニメだとスッと立ったりしてるんですけど、そういうのはカエルのイメージじゃなかったんです。蹲踞(そんきょ)したまま歩くというか、ヨチヨチしてるようにしてくれと。ただ、まだ第1話しか観てないので、実際にどう歩いているかは分かりません(笑)。

――では最後に、今後の展望などをうかがえれば。マーベルでは、10月から始まる「アンストッパブル・ワスプ」を描かれるんですよね。

ササキ:そうなんですよ。また虫か!っていう(笑)。

カワノ:やっぱりアメコミの仕事は、今後も続けていきたいですね。日本でもキャラクターデザインとかをやっていきたいですし、あとは以前から気になっていたのですが、アジア圏の仕事をやってみたいですね。この「スペースバグ」でも、韓国とちょっとつながりができましたから、これを皮切りにいろいろなところとお仕事できればと思っています。

【プロフィール】

グリヒル(Gurihiru)

作画担当のササキとカラリストのカワノからなるイラストレーターユニット。アメリカでコミックアーティストとして活動するかたわら、日本国内でも書籍、ゲーム、アニメのイラストを手がけている。マーベル・コミックにおける代表作は、「グウェンプール」「パワーパック」「ファンタスティック・フォー」など。また、「ズートピア」のコミックや小説「メリダとおそろしの森」のカバー・挿絵、さらに今夏公開予定の「インクレディブル・ファミリー(原題:Incredibles 2)」の絵本でもアートを担当している。

■オリジナルTVアニメーション「スペースバグ」
放送:毎週日曜日朝10時30分~TOKYO MXにて放送中
配信:dアニメストア、dTV、FOD、あにてれ、J:COMオンデマンド、ビデオパス、バンダイチャンネル、U-NEXT、アニメ放題にて配信中
スタッフ:脚本…中尾浩之/監督… 中尾浩之 / YOON Yoo-Byung/キャラクターデザイン…グリヒル/音楽…戸田信子・陣内一真/オープニングテーマ…ウォルピスカーター「THE JOURNEY HOME」/エンディングテーマ…上月せれな「星の数だけありがとう」/アニメーション制作…W.BABA / P.I.C.S./企画…トムス・エンタテインメント/協力…トムス・ジーニーズ/製作…SPC / トムス・エンタテインメント / W.BABA
キャスト:ミッジ…小川夏実/ハカセ…丸山智行/マルボ…佐野康之/ゲロッパ…藤原貴弘/イトー…落合弘治/カトー…田中英樹/エレン…ブリドカット セーラ 恵美/ワン…堀越富三郎

リンク:アニメ「スペースバグ」公式サイト
    公式Twitter・@Spacebug_jp

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