駆け出しプレイング・マネージャーの「コミュニケーション術」②依頼の齟齬を最小化する/倉下忠憲

「伝わっているだろう」をなくすことが、正確なマネジメントの第一歩!
  • 「伝わっているだろう」をなくすことが、正確なマネジメントの第一歩!

前回(関連記事参照)は、信頼のパイプラインづくりが大切だ、というお話を紹介しました。そのパイプラインがあるからこそ、情報の伝達が真の意味で機能し始めます。

とは言え、パイプラインさえあれば順風満帆にすべてが進んでいくわけではありません。むしろ、ここからがスタートです。何を伝え、何を受け取るのか。それがマネージャーとしての腕の見せどころです。

さて、マネージャーになると、部下に仕事を頼む機会が増えてくるでしょう。今回は、そうした際の注意点とその対策について考えてみます。

プレイング・マネージャーにありがち症候群

私が観察したところによると、マネージャーによく見られる傾向がいくつかあります。それらの傾向を、仮に一言でまとめるなら、「奇妙な万能感を持っている」となります。

たとえば、これまでの連載で登場した「自分でぜんぶやろうとしてしまう」というのも、その万能感の一種です。「やろうと思えばできる→やろうとしてしまう」。そのような自分の能力についての万能感が、仕事の抱え込みすぎを発生させてしまいます。

同じような万能感は、コミュニケーションにおいても生じます。たとえば、次のふたつのような傾向です。

「自分の話は相手に伝わると思ってしまう」

「相手の言っていることは、自分は理解できていると思ってしまう」

このような万能感を持っていると、コミュニケーションが雑になってしまい、結果たくさんの齟齬(そご)を生み出してしまいます。依頼がうまく伝わらず、仕事がうまく回らず、当たり散らして、パイプラインを壊してしまう。そんな危険もあります。

この問題は、ぜひとも回避したいところです。

コミュニケーションの難易度

ここでひとつ、大切なことを書いておきます。

「人に伝えるのは難しい行為である」

いま私も、こうして情報を伝えるためにがんばって文章を書いています。書くことを選び、書き方を考え、書き並べる順番を緻密に検討しています。そこまでやってすら、伝えようとしていることがきちんと伝わるとは限りません。それは個々人の能力不足というよりも、コミュニケーションが基本的に抱える問題だと考えておいた方がよいでしょう。

ときどき上司の中には極めて優秀な人がいて、そういう人は1を言えば10伝わるような感覚があるのですが、そうした人は特殊中の特殊であり、世の中のコミュニケーションでいえば、例外的存在と考えておいた方がよいでしょう。むしろ、一般的には10言って5伝わる、くらいの感覚でいた方が健全です。

自分から相手に伝えることも簡単ではありませんし、相手が言っていることを適切に受け取ることも容易ではありません。それが相手側にも言えるのですから、コミュニケーションというのは実に難しいものなのです。

私たちは日常的にそのようなコミュニケーションの難しさをさほどは感じていませんが、伝える情報が入り組んでいたり、いくつかのコンテキスト(文脈)を前提にするものだったりした場合に、途端にその難しさが露呈します。

「人に伝えるのは難しい行為である」

まず、そういう前提を持っておきましょう。「自分の話は相手に伝わると思ってしまう」と「相手の言っていることは、自分は理解できていると思ってしまう」は、基本的に勘違いなのです。

押さえておきたいポイント

では、それを踏まえた上で、仕事を依頼するときのポイントを確認しておきましょう。

まず依頼を伝えるときには、できるだけ詳しく説明するようにしましょう。「あれやっといて」が論外なのは言うまでもありませんが、具体的な内容、期日、注意点なども明示するようにしておくとやはり齟齬は減ります。

可能であれば、自分の依頼内容が理解されているかを確認しておきましょう。「何を頼まれていることになっているのか」を自分から説明してもらうのです。ただし、詰問(きつもん)口調にならないように注意してください。もしそれが難しければ、「次に何をしようとしているのか(次の行動予定)」を聞いてみてもよいでしょう。それを聞くだけでも、自分の依頼内容と相手の理解の齟齬が確認できます。

また、相手が仕事に慣れていない場合は、期日になるまで放置しておくのではなく、中間地点で進捗や状況を尋ねておきましょう。一週間の仕事なら3日ほどで、1時間の仕事なら30分くらいで、「どうなってますか?」と確認をとっておけば、こちらの意図とのズレがあった場合に、早めに対処できます。

とは言え、この話は「いちいち細かく指示しましょう」ということではありません。最初にその作業を教える場合であれば、一つひとつ手順を説明していく必要はありますが、すでにできる人間に対しての細かい指示は手間ですし、相手にとっても煩わしいでしょう。

あくまでこちらの意図が伝わっているかどうかを気にしておき、進捗に注意を払っておく、という程度で大丈夫です。むしろ、それくらいでなければ、指示する仕事が多くなりすぎて、自分の手には余ってしまうでしょう。

まとめ

今回はこちらからの指示の出し方でしたが、相手からの報告を受ける場合でも、「それって○○ということ?」などのように自分が話をどう理解しているかを明示し、相手の意図とこちらの理解の齟齬をできるだけ潰していくことが肝要です。

おそらく、有能なプレイヤーであるほど、このような話はじれったく感じるかもしれません。1を指示すれば、10伝わって実行してくれる。そういう態度を部下に望みたくもなります。

しかし、そういうやり方は知らず知らずにズレを生んでしまいます。そのズレが小さいうちは、問題は生じませんが、積み重なったときにどうしようもない事態を引き起こしかねません。お互いに伝わっていると思っていたのに、ぜんぜん伝わっていなかった、ということがハプニングと共に露呈してしまうのです。

ですので、日頃から自分の指示の出し方に注意を払い、また、相手が理解しているかどうかも気にしておくことが大切です。そして、その積み重ねがまた、信頼のパイプラインを太くしてくれます。

【著者紹介】倉下 忠憲(くらした・ただのり)
1980年、京都生まれ。ブログ「R-style」主宰。コンビニ業界で働きながら、マネジメントや時間・タスク管理についての研究を実地的に進める。その後、執筆業に転身。現在は書籍執筆やメルマガ運営を主とする物書き。著書に『EVERNOTE「超」仕事術』『Scrap box情報整理術』(C&R研究所)、『ハイブリッド発想術』(技術評論社)などがある。自分で出版を行うセルフパブリッシングも意欲的に取り組んでいる。

キーワード

関連記事

[PR] おすすめ情報