思い焦がれても、貴方は来ない…[権中納言定家]/超訳 百人一首⑩

待ち焦がれる恋人への思い

【歌】

来(こ)ぬ人(ひと)を

まつほの浦(うら)の

夕(ゆう)なぎに

焼(や)くや藻塩(もしお)の

身(み)もこがれつつ

権中納言定家(ごんちゅうなごんさだいえ)

【超訳】

夕方に浜で焼かれる藻塩のように、私は身を焦がしています。来ない殿方を待ちわびながら。

【解説】

シンプルにいえば、「思い焦がれながらやって来ない恋人を待っている」というだけの歌なのですが、『万葉集』の長歌「……淡路島松帆の浦に朝なぎに玉藻刈りつつ夕なぎに藻塩焼きつつあまを(お)とめ……」を本歌とした第二〜四句を差し込むことにより、待つ女を優艶な世界に置きました。また、第五句の「こがれつつ」は、つつ止めで余情を感じさせた終わり方になっています。

◇ ◇ ◇

■権中納言定家(1162〜1241年)

藤原定家。『新古今集』『新勅撰集』の撰者であり、『小倉百人一首』も撰ぶ。多数の作品が残る。

■出典

新勅撰集・恋三(851)

【監修者紹介】吉田 裕子(よしだ・ゆうこ)
都内の大学受験塾やカルチャースクールで教えるほか、書籍執筆やメディア出演を通じ、古典文学や日本語の魅力を発信する。
著書に『心の羅針盤をつくる 「徒然草」兼好が教える人生の流儀』(徳間書店)、『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など多数。

【イラストレーター紹介】カワグチ ニラコ
ユーモラスかつ可愛らしいタッチで、実用書のイラストからコミックエッセイまで手掛ける。著書に『イラストでわかる 日本の仏さま』『あちこち 吉祥寺&中央線 さんぽ』(KADOKAWA)など。
本書を手掛けながら和歌の面白さに気づき、『万葉集』から読み直そうと決意。

【書籍紹介】『イラストでわかる 超訳 百人一首』(KADOKAWA)
和歌というと分かりにくい言い回しと約束事があって、現代人にはなかなか理解しづらいもの。でも、ちょっと現代風に訳してみれば、意外と「その気持ち、わかる!」と感じられるものばかりです。本書では、1番歌の天智天皇から100番歌の順徳院までを順番に紹介。百人一首のすべての歌に現代訳(超訳)とイラストをつけ、誰もがその世界を楽しめるようになっています。「ときに切なく、ときに甘く」「ときに寂しく、ときにうれしい」――そんな豊潤な百人一首の世界に、たっぷり浸ることができる一冊です。

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