日常にブースト! 自分の「隠しコマンド」の見つけ方/堀正岳

知的生活のパターンを意識するという話題について前回触れましたが、歴史上多くの知的生活者、作家、アーティストが実践している日常の「隠しコマンド」のような習慣が、コーヒー、昼寝、そして散歩の習慣です。「隠しコマンド」と表現するのは、それが知的活動にとって本質的でなさそうであるのに、その人の活動の縁の下の力持ちのように機能していた可能性が高いからです。

たとえばコーヒーについては、起床と同時に1杯を飲んでその日の仕事をすることが日課だった作家やアーティストがジョイス、プルースト、マン、マーラー、ベートーヴェン、カント、ヴォルテールなどといったように、偶然とは思えない数で存在します(『天才たちの日課』<メイソン・カリー著、フィルムアート社>より)。キルケゴールに至っては、50種類のコーヒーカップを用意し、砂糖をうず高く積んでコーヒーでそれを溶かすという儀式めいた習慣さえもっていたほどです。

私もコーヒー教徒の一人ですが、午前中のある時間までにコーヒーを飲んでいる日と、飲み忘れた日とでは、午後の集中力が違うことが日常の記録からわかっています。夜に執筆を開始する前にコーヒーをもう一杯飲むかどうかが、その日に6000字以上書けるか書けないかの分かれ目になるのです。

これを信じるかはみなさんしだいですし、コーヒーは体になじまないという人もいるでしょう。でも単に良い生活習慣をもつという以上の、その日の活動に加速をつけてくれる習慣を自分なりに探すという視点は参考になると思います。

昼寝と散歩のもつ効能

昼寝や、散歩についても同じです。それ自体は地味な習慣ですが、人によってはこれが知的生活を支えるパワーの源になっている人もいるのです。

たとえばウィンストン・チャーチルは第一次世界大戦への対応に忙殺されていた1914~15年をこのように振り返っています。

「自然はひとを祝福された眠りのひとときももたずに朝八時から真夜中まで休みなく労働できるように作っていない。たったの20分程度であったとしても、それは不可欠な活力を取り戻すのに十分だ」

この言葉の通り、午後に子どものように眠る一時間をもつことによって、チャーチルは本人の述懐によれば「1日半の仕事」を1日のうちに詰め込むことができたのだといいます。

日常に活動的なペースをもたらすものとして有名なもう一つの習慣が散歩です。ダーウィンは一日に3回の散歩を習慣としていましたし、スティーブ・ジョブズや、オバマ元大統領は歩きながらのミーティングを好んだといいます。そしてコーヒー同様に、散歩の習慣をもつ作家や哲学者は枚挙に暇がありません。

こうした「隠しコマンド」は毎日のように知的生活を続けるうちに偶然見つかります。たとえば私の場合、風呂で特定の関節のストレッチをして上半身をほぐすストレッチをすると集中力が増す傾向を見つけてからは、それを実践しない日はありません。

最初は気のせいだろうかと思いながらも、繰り返してみると不思議な効果をもっている習慣をぜひ日常のなかから探してみてください。

【著者紹介】堀 正岳(ほり・まさたけ)
研究者・ブロガー。北極における気候変動を研究するかたわら、ライフハック、IT、文具などをテーマとしたブログ「Lifehacking.jp」を運営。知的生産、仕事術、ソーシャルメディアなどについて著書多数。理学博士。

【書籍紹介】『知的生活の設計―――「10年後の自分」を支える83の戦略』(KADOKAWA)
今日から始めることが「10年後の自分」を支える。
「趣味」「読書」「情報発信+情報整理」「書斎」「アプリ・ツール」「お金」まで……。毎日のちょっとした習慣を積み上げれば、誰でも知的生活を実現できる!

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