ガレッジセールのゴリこと映画監督・照屋年之 今尚残る風習を描いた映画『洗骨』を語る

2月9日(土)全国公開でお笑いコンビのガレッジセール・ゴリこと照屋年之が脚本・監督を務めた映画『洗骨』。死者の風葬を行い遺体が骨となった後、その骨をもう一度取り出して洗うという沖縄の一部でも伝わる風習である『洗骨』を題材にした物語となっている。照屋監督に愛する人を失い洗骨することにより残された家族の再生、先祖から受け継ぐ命のバトンタッチする姿を描き出す本作の話を伺った。

映画『洗骨』の脚本・監督を務めた照屋年之監督
  • 映画『洗骨』の脚本・監督を務めた照屋年之監督

沖縄の粟国島(あぐにじま)に住む家族の新城家。母・恵美子の葬儀から4年経ち『洗骨』の儀式を行う為、東京の大企業に勤めている息子・剛と名古屋で美容師として働いている娘の優子は実家に帰省する。しかし仕事先の店長との間にお腹に新しい命を宿してしまいシングルマザーとして生きていくこと告げる優子と剛の間に大きな溝ができてしまい、その兄妹喧嘩を止めることができなくて酒に逃げ続ける父・信綱という母親を失ってバラバラになってしまった家族の物語。父親の信綱役に奥田瑛二、息子の剛役に筒井道隆、娘の優子役に水崎綾女、母の恵美子役に筒井真理子が出演している。

新城家の父親・信綱を演じる奥田瑛二
  • 新城家の父親・信綱を演じる奥田瑛二

沖縄の風習であり本作のタイトルである『洗骨』。このタイトルを決めることに悩んだと語る。

「観てもらればわかりますがこの映画は前半はコメディで始まり、それから人間ドラマがあって、また笑わせてっていう、いわゆるヒューマンコメディというジャンルです。でも『洗骨』の『洗う』・『骨』って漢字だけ見るとホラーみたいで怖かったり、重い映画なのかなと感じる人もいるかもしれない。なのでタイトルを決める会議がありました。これだけ楽しい映画だから『骨とワイシャツと私』じゃないですけど楽しくなるようなタイトルのほうがいいのかなって(笑)。それにポスター作りも迷ったんです。もうちょった明るい感じの笑える雰囲気が伝わるような物があってもいいんじゃないかと思ったんですけど」とコメディ部分を前面に押し出す案もあったのだと言う。

「やっぱり『洗骨』っていう風習を描くんだから正々堂々とインパクトのある『洗骨』でいいんじゃないか。ポスターも実際の粟国のお墓が写ってる写真を使っています。タイトルやポスターが怖いって思われる可能性はあるんですけど、ある意味勝負ですよね。でもこれだけのSNS時代、作品の評価が良ければ皆さんが広めてくれるから大丈夫」と作品に対する決意を口にした。

新城家4人の親子以外にもユニークなキャラクターが登場し、物語にリズムの良い緩急をつけてくれる本作。中でも特に強烈な信綱の姉の信子について「うちの母親も働き者だったし、どの家もそうだと思うんですけど、沖縄のヒエラルキーのトップはオバァになるんですよ。沖縄の女性は働き者で、子育てもしてっていうイメージがあるので、女性というのを強く描きたかったんです。でもただ高圧的に強いのではなく、根底には優しい愛情が流れている。亡くなった恵美子の代わりに信子という伯母さんは口が悪くて怒るけども結局はその人のため、愛があるっていうキャラクターにしたんです」と監督が意識した沖縄における女性像を話す。

ところが、周囲の女性目線で言われて初めて気づいたこともあったという。ヒロインの優子がワケあり妊娠でどうしようかという時に親戚のマキが「島に帰って島で産んだら?私たちも一緒に育てるよ。うちの子供と一緒に遊ばせたらいいじゃない」というセリフが不安な妊婦を安心させる優しさが印象に残ったという感想をもらったエピソードを明かした。「『命は女がつなぐんだよ』っていうとても強いメッセージほど大きく意識してなかったんですけど、小さい島であればあるほど周囲の優しさや共同体として生きていく、そういう部分が逆に沖縄の島っぽさを描けたんだなってその方に言われて思いました。僕が今まで沖縄の何気ない近所の会話、親戚の会話がマキのセリフになって、それが大事なことだったんだなって思いました」と沖縄の内と外を知る監督ならではの目線が充分注がれている。

家族総出で風葬されている『あの世』に向かう
  • 家族総出で風葬されている『あの世』に向かう

洗骨をするために家族総出で恵美子の風葬されているお墓に向かう中に存在する『あの世とこの世の境』が印象的な本作。綺麗な粟国島の青空の下、島の部外者として初めて洗骨の儀式を知っていく鈴木Q太郎演じる亮司が恐る恐るあの世に踏み込んで行くいくシーンも監督のユーモアが溢れる場面になっている。

照屋監督は「歩いていく道、階段は全部本当の粟国島で撮影しています。あの世とこの世の境は実際に言われている場所もそこにあって、訪れると感動的な場所です」と振り返る。ところが、断崖に存在する墓だけは本物を使うわけにはいかなかったようで「島の方に使われてないお墓とかないかと聞いてみたのですが、当然なくて…。だから本物の手前に撮影用のものを作ったり考えたりしました。でもやっぱりそれで怪我したりすると、それが原因でバチが当たったんだってなりますから」と別の場所でお墓を作り上げたのだと言う。

『洗骨』以外にも沖縄の営みが細かく描写されている
  • 『洗骨』以外にも沖縄の営みが細かく描写されている

照屋監督が上京した当時、安室奈美恵やDA PUMPといった『歌えて踊れてカッコイイ人達がいる』という認識が広まっていなくて東京に対する憧れがあったという「地元が渋谷っていうだけでその人が芸能人に見えました(笑)。剛が東京の企業に就職して島のみんなが『お前エリートだよ』って言いたくなるような気持ちは分かります」とそこに監督の気持ちを表した場面を話し、「でも東京に出てきて全員がそこに合うってわけじゃなくて、人間関係に合わなくて帰る人もいれば東京の大都会に流されて夢破れてとか。そういうものを描きたいってのはありましたね。剛は勉強して優秀な大学入っていい企業に入って、結局家庭っていうものを顧みてない失敗者であり、優子は美容師になりたくて行ったけど結局恋愛というものに失敗し後ろめたく帰ってくる失敗者でありっていう。それは沖縄とか粟国島に限った話じゃなくて、僕が大事にしてるのは色んな人に当てはまるような人間関係や色んな弱者を作りたかったんです。自分にも当てはまる不安と寂しさ、悲しさというのを意識して作ったので、映画を通してそれを共有していきたいですよね。そして笑って何とかまた明日も一歩進んで生きていきたいって」と本作に流れる大切なメッセージを語ってくれた。

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