『アメイジング・グレイス』の監督が語る、熱い政治話と当時の“ヅラ”話

『アメイジング・グレイス』のマイケル・アプテッド監督に直撃!
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時を超えて歌い継がれる名曲の誕生秘話と、奴隷貿易制度廃止に心血を注いだ若き政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの人生を描いた『アメイジング・グレイス』が3月5日(土)より公開される。そこで来日したマイケル・アプテッド監督にインタビューし、撮影裏話を語ってもらった。

舞台は18世紀のイギリス。主人公は裕福な家に生まれながらも、奴隷貿易に心を痛め、21歳の若さでイギリスの国会議員となった稀代の政治家・ウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィス)。彼は、英国最年少の首相で、かつ友でもあるウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ) と共に、奴隷貿易廃止を長年に渡って訴えていく。映画では、彼の国会での奮闘ぶりや、ピットとの友情、生涯の伴侶となるバーバラ・スプーナー(ロモーラ・ガライ)との愛のドラマが活写されている。そんな彼の心の支えとなったのが、師と仰ぐジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)が手がけた名曲「アメイジング・グレイス」だ。

「名曲をモチーフにした映画を作るというよりは、政治の力を描く映画を撮りたいと思った」というアプテッド監督。「現代人は政治の力を軽視しがちだからね。もちろん、政治家たちの汚職事件にうんざりして、政治に対して諦めてしまっている空気がどこの国にもあるけど、それは間違っているんじゃないかと」。何とも耳の痛い話である。「本来、政治というのは、年老いた男たちが私利私欲のためにやっていくものではなく、もっと元気がある若い人たちが参加してものごとを変えていくべきだと僕は思っている」。

一番描きたかったのは、ウィルバーフォースとピットやバーバラとの人間関係だと語る。「特にバーバラとはピットが30代で恋に落ち、6週間くらいのあっという間に結婚して子供をもうけるという関係性が面白い。単なる伝記映画にはしたくなかったんだ」。

議会のシーンはどの議員もかなりハイテンションで、その場の熱気が伝わってくる。「個人的にも一番撮影を楽しんだハイライトシーンだ。エキストラも現地の方々にお願いしたので、フレッシュな感じの空気感が出たよ。当時の議会についてもかなりリサーチをしたが、実際映画のように大声を出して討論したり、議会中にうろうろ歩いたり、物を食べたりしていたようだ。カメラも数台用意して、いろんな角度から撮ったので、生き生きとしたシーンになったと自負している」。

監督はドキュメンタリー畑出身だが、そのキャリアが作風にかなり色濃く出ているようだ。「僕はいろんなジャンルの映画を撮るけど、スピリットは常にドキュメンタリー作家なんだ。なるべく正確な内容を撮りたいし、題材も実際にあった物語に惹かれがちだ。ドキュメンタリー的なアプローチは、どの作品においてもやっているよ」。

小ネタとしては、議員たちがカツラを取り外しするシーンが印象的だった。「当時、カツラは既に流行遅れのファッションとなっていたが、議員たちはつけていた。英国では今でも弁護士は法廷でカツラを被ったりしているよ。劇中で俳優たちは、カツラを小道具として上手に使ってくれた。たとえば、マイケル・ガンボンさんがピット首相に会いにいく時、いざ!って感じでカツラを付けるシーンがある。あそこはおちゃめだね」。

最後に、本作の見どころについて聞いてみた。「時代ものの映画だが、内容は今も生きている問題だと感じてもらえると嬉しい。人身売買問題や、低賃金で働かされている“産業の奴隷”みたいな方など、今も厳しい状況に置かれている人たちはたくさんいるし。皆さんも周囲を見回して、自分ができることをやろうと思ってくれたら幸いだね」。

折しもアプテッド監督作『ナルニア国物語 第3章 アスラン王と魔法の島』も2月25日に封切られ大ヒット公開中だ。どんなジャンルの映画でも、ドキュメンタリー作家魂が光る雄々しい映像が素晴らしい。本作を見れば、今のウィルバーフォースの情熱にほだされて、日本の残念な政権に物申したくなるかも。【Movie Walker/山崎伸子】

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