ロングラン&拡大公開の放射能ドキュメンタリー映画、大反響の実態は?

フィンランドでは地下500メートル地点に広大な放射性廃棄物の処分場を建設中
  • フィンランドでは地下500メートル地点に広大な放射性廃棄物の処分場を建設中

東日本大震災から1ヶ月あまりが経過した。被災各地において懸命な救助や復興活動が行われているが、福島第1原発における事故が深刻化しており、先行きは未だ不透明な状況だ。そんな中、放射性廃棄物をテーマにしたドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』(公開中)が渋谷アップリンクで緊急公開され、連日満席を記録。続映や全国規模の拡大公開も続々と決定している。

本作は、フィンランドに建設中の「オンカロ(=隠された場所)」と呼ばれる放射性廃棄物の最終処分場に潜入したドキュメンタリー。原発から出る高レベルの放射性廃棄物が安全になるまで10万年という歳月が必要だと言われているが、果たしてそれだけの長い年月を人類が安全に管理できるのか、という問題を最終処分場の当事者らに問いかける作品だ。本来は今秋公開の予定だったが、事故の発生を受けて緊急公開を決定。震災を連想させる内容の映画が次々と打ち切りや公開延期になる中、あえて上映に踏み切った。

今回の公開に際して一般から多く寄せられたのは、「とにかく早く見たい」という声だったそうだ。公開直後は劇場もアップリンクのみで、毎日朝一回のみの上映となっていたため、多くの観客が詰めかけ、連日札止めになる盛況ぶりを見せた。実際に来場した客層は、20代から60代までと幅広く、男女比率もほぼ半々だった。しかも普段、同劇場で上映されているインディペンデント系映画を見るような映画ファンではなく、今回初めて劇場を訪れるという観客が圧倒的に多かった点も特徴として挙げられるという。

また、通常の映画公開前にはマスコミ向けの試写が行われるが、本作は急遽公開が決まったことで試写が開催されていない。そんな事情もあってか、「原発や地震に関連した作品の公開中止や延期が決まる中、どのような経緯で緊急公開に至ったか」など、作品についてマスコミや映画業界内からの問い合わせが相次いだそうだ。デリケートな放射能関連の話題に映画業界は過敏になっていたが、配給は「原発に関する知識を必要としている人々のために」と公開を決断した。今回のヒットは勇気ある英断に対する肯定の反応と言えるだろう。

気になる内容に対する反応は概ね前向きなもので、とにかく「見て良かった」という声が多い。原子力に対する単純な賛否ではなく、既に生み出されてしまった原発や放射性廃棄物を今後どうしていくのかを焦点にした内容も様々な議論を呼び、ツイッター上で本作を見た感想をつぶやくハッシュタグ#10mannen_mitaには、現在も多様な感想が投稿され続けている。

今回の事故が起きなければ、大多数の人々が原発に無関心のまま、日々を過ごしていたかもしれない。本作のような映画を見ることもなかったかもしれない。そして、放射性廃棄物は10万年後まで管理し続けなければならないと知ることもなかったかもしれない。だが、放射能漏れが発覚し、深刻な事態に陥っている原発危機がすぐ目の前に横たわっている。だからこそ、この機会に少しでも原子力のことについて知り、考えていくべきなのではないだろうか。

配給のアップリンクは「北欧、フィンランドの自然と無機質な施設を捉えた映像美、そしてフィンランドが放射性廃棄物、原発に対してどのように向き合っているかを見ていただき、日本のこれからの在り方を考えていただくきっかけになればと思います」とコメントしている。本作は、今後も北海道から九州まで全国各地での上映が順次予定されているので、是非とも映画を見て、まず知ること、そして自分なりに考えてみることから始めてもらいたい。【トライワークス】

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