『星を追う子ども』の新海誠監督「全力で放ったボールです」

左からモリサキ役の井上和彦、アスナ役の金元寿子、監督の新海誠
  • 左からモリサキ役の井上和彦、アスナ役の金元寿子、監督の新海誠

ある日、父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄。その唄を忘れられない少女アスナは、地下世界アガルタから来たという少年シュンに出会う。ふたりは心を通わせるも、少年は突然姿を消してしまう。「もう一度、あの人に会いたい」。そう願うアスナの前にシュンと瓜二つの少年シンと、妻との再会を切望し、アガルタを探す教師モリサキが現れる。そこに開かれるアガルタへの扉。3人はそれぞれの思いを胸に、伝説の地へ旅に出る。

デジタルアニメーションを革新した鮮烈なデビュー作『ほしのこえ』(02)以来、心の距離を丹念に描き続け、若者の絶大な支持を得てきた新海誠の最新作『星を追う子ども』(5月7日公開)の完成を記念して、舞台挨拶つき特別試写会が有楽町のよみうりホールで4月26日に行われた。新海誠の劇場アニメは2007年の『秒速5センチメートル』から実に4年ぶりとなる。

試写会後の舞台挨拶には原作・脚本・監督を務めた新海誠のほか、主人公アスナ(渡瀬明日菜)役の金元寿子、教師モリサキ(森崎竜司)役の井上和彦が登壇。冒頭の挨拶で新海監督は「このアニメーション映画はたくさんの人で作りました。今日は僕が代表として一人登壇させていただいておりますが、僕の後ろに200人くらいの人がいると思って聞いてください」とコメント。新海監督作品に初参加の金元は、感想を求められると「監督の作品はすごく繊細で柔らかいイメージがあったので、私にその心の動きなどが表現できるのかな、と緊張していました。でも、アスナをやらせていただいてから、だんだん作品にのめりこんでいって、本当に楽しくやらせていただきました」と話した。また、監督の人柄について「監督とお会いするのも初めてだったんですが、どんな方なのかな? 厳しい方なのかな?とか、色々思っていたんですが、実際は怒りというものがないくらい優しい方で、とてもリラックスさせていただきました」と語り、逆に新海監督が恐縮する一幕も。

一方、『雲の向こう、約束の場所』(04)に続き、新海監督作品二度目の出演となる井上は、「今回の監督は厳しかったですね。まさかアフレコ現場にムチを持ってくるとは…冗談です」と会場の笑いを誘いつつ、「監督は、ひと言ひと言にこだわり抜いて収録を進めていきました。何回か同じシーンを録り直すこともあったんですが、その度にどんどん良くなっていくのを感じましたし、監督の作品に対する思いの強さがすごく出ていました。普通は何回も録り直すとへこんだりもするんですが、今回は“もっと良くしよう”という欲に駆られました」と収録時の思い出を語った。

新海監督も「脚本を書いている段階から、モリサキの声は井上さんだな、と思っていました。ヒロインはアスナなんですが、影の主人公はモリサキですよね。彼はアスナに対して優しい瞬間もあるし、急に怖く見える瞬間もあります。そういう“子どもから見た大人の未知な感じ”や“大人って何を考えているんだろう”という複雑さを、井上さんであれば演じきっていただけると勝手にあてにしていました」と、モリサキの役は最初から井上が演じることを想定して脚本を書いていたことを明かした。

それぞれの役を演じた感想について、金元は「アスナは子供のわりにはすごくしっかりした子で、自分とは結構かけ離れた子供時代だなって思ったのですが、途中からはだんだん子供らしさが戻ってきて、生き生きしてきたのがすごく印象的でした」とコメント。井上は「モリサキは一見大人なんですが、奥さんを思う優しさゆえにこんな風になってしまって。男としての切なさのようなものを感じながらやらせていただきました。監督は僕の声をイメージして、と仰ってくれたんですが、僕の中にはあまりそういうところがないので(笑)、“うーん、頑張ろう!”と自分に鞭打ちながら頑張りました」と自らの役の難しさを振り返りつつ語った。

実際にファンの前に作品が公開されたことについて新海監督は、「誰かに見てもらうためにこの2年間ずっと作ってきたので、おかげ様でようやく仕事が終ったかなという気持ちになれました」と安堵の表情を見せた。また、作品が生まれたきっかけについて「小学生の時に読んだある本で、地下世界アガルタというのを知ったんです。ただ、その本の作者の方が途中で亡くなってしまって未完だったんです。他の方による補足のエンディングが書かれているんですが、当時10歳くらいの子供心に“どうも違うな、読みたい話じゃないな”とずっと思っていて、自分だったらどういう物語が見たいんだろうというのを考え続けていたんですね。それが一つのきっかけとしてありました。あと、人が死ぬというのがどういうことなのか、ずっとやり続けてきたことが途中で終わってしまうというのが、人が死ぬということなんだ、ということにその本を通して初めて気づかされて。そういう意味では、子供の頃からずっと作りたい話だったと思います」と語った。

3人は最後に、改めて作品の魅力やファンに対する感謝の気持ちを述べた。井上は「本当に素晴らしい作品だと思います。この先何年も、何十年もいろんな方に見ていただきたいです。是非たくさんの方に見ていただけるように伝言ゲームをよろしくお願いします」と話し、金元は「普段、なかなか考えられないことをストレートに考えさせてくれますし、見た後にいろんな人と“ああだったね、こうだったね”と話せるような作品だと思います。私自身も、家族や大事な人と見に行きたいと思います」とコメント。最後に新海監督が「僕は10年近く前、『ほしのこえ』という作品を一人で作って、50人くらいの小さな劇場からアニメーション作りを始めました。そして今作では全部合わせると200人ものスタッフがいてくれました。こうして作品を作り続けていられるのも、周りのスタッフや作品を見てくださる皆さんのおかげです。全力で放ったボールですので、この作品を見てどう感じになったか、是非感想をネットなどに書いてください。検索して見ますので(会場笑)」と語り、締めくくった。

本作は5月7日(土)公開なので、GW後半を飾る作品として、是非劇場で鑑賞してもらいたい。【Movie Walker】

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