ゲイを告白した前田健監督がデビュー作でセクシャル・マイノリティーの世界を鋭く描く

芸人、ダンサー、振り付け師など多方面で活躍するマエケンが映画監督デビュー
  • 芸人、ダンサー、振り付け師など多方面で活躍するマエケンが映画監督デビュー

ユーモアたっぷりの松浦亜弥のものまねでブレイクしたマエケンこと前田健。2009年には初めての書き下ろし小説「それでも花は咲いていく」を発表。この度、自ら監督・脚本を務め、同作の映画化が実現した。「映画化の話をいただいた時に、絶対に自分で形にしたい、他の人には監督を譲りたくないと思った」と語る前田監督に、作品にかけた思いを聞いた。

小学生の女の子への許されぬ恋に悩む男を描く『エーデルワイス』。容姿の醜さから人に拒絶されて以来、人を避けながら他人の部屋に侵入することを生き甲斐にする男が主人公の『ヒヤシンス』。亡くなった最愛の母に思いを馳せる日々を過ごす男を見つめた『パンジー』。本作はセクシャル・マイノリティーをテーマに、人には言えない悩みを抱えた男たちの切ない日常を3編のオムニバスとして描き出す。

テーマには、自身の思いが強く投影されているという。「僕自身、好きな人に公明正大に自分をお勧めできないという心的外傷があって。僕はゲイですが、ストレートの男性を好きになってしまうことが多いので、自分と一緒になっても相手を幸せにする自信がないんです。でも好きだという気持ちは止められない。自分が偏っているということを自認しているだけで、世の中、こんなにも辛くなるんだなって」。

自らの葛藤があればこそ、生まれた主人公たち。彼らを見つめる監督の視点は優しい。「自分がゲイだと気づいたのは、中学1、2年生の頃。でも、その人を好きだと思った時、こんなに確かで清らかな気持ちが悪いことなわけはないと思ったんです。麻生祐未さんのセリフで『私は泣いていても幸せだと思う』というシーンがあるように、主人公の3人には『あなたが持っている愛は決して悪いものじゃない』って言いたかった。世の中、あなた用にできていなくて生き辛いけど、あなたにしか咲かせられない花はきっとある。誰かを好きになった記憶は美しいものに間違いないから」。

監督にとって作品を作るモチベーションとなるものは何だろう。「今まで味わった悲しい気持ちもこういう形となって、人の力や癒しや優しさになれるんだったら良いなと。僕は止まっている自分は嫌い。みんなに喜んでもらえることをやるしかないから、常に何かを生み出して、人に笑ってもらったり拍手をしてもらうことで、僕の経験してきたことも報われるのかなと思います」。

経験が人を作り上げる。監督の言葉からはそんなことが実感できる。「細い道をすたすた歩ける人よりも、色々なところにぶつかったり、傷つくことを知っている人は、人にも優しい。僕はそういう人が好きなんです」と語る監督は、実に魅力的だ。

実際の恋愛に話が及ぶと「色々な男性に告白して結局フラれますけど(笑)、みんな『マエケンとは一生友達として付き合っていきたい』って言ってくれる。だから人間的には嫌われてないんだなと思うんです。フラれても、僕はその人を好きなままなので、好きな人ばかりが増えていく。一生の付き合いになる人がどんどん増えていくんですよ」と笑う。

さらに話はもっと具体的に。本作にも登場するカンニング竹山の話へと続いた。「僕、竹山君のことが好きで、結局フラれたんですけど(笑)。男っぷりがあるし、人の弱さもわかる人。強くて優しい、器の大きさが好きで。『行き止まるまで恋すりゃ良いさ』って竹山君が言うセリフ。あのとおりの気持ちで、竹山君に向かっていましたね」と、体当たりの恋を明かしてくれた。

最後に、自身を花にたとえると何になるか聞いてみた。「ガーベラってポップでグラフィック的で綺麗な花なんですけど、茎は細くて葉はごつい。意外性のあるアフリカ原産の花。そういう表向きポップだけど、裏では大変なこともあるよって感じかな」。

本作の公開は5月7日(土)より。監督として歩き始めた彼が、これから大輪の花を咲かせる姿を楽しみにしたい。【取材・文/成田おり枝】

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