吉永小百合「映画の力で被災地の方を癒すことができればと切に願っています」

『手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく』完成披露舞台挨拶が行われた
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手塚治虫の名作を映画化した『手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく』(5月28日公開)の完成披露試写会が5月11日に開催。銀座の丸の内TOEIでは、声の出演キャストを務めた吉永小百合や堺雅人、観世清和(能楽観世流二十六世家元)、吉岡秀隆、黒谷友香、観世三郎太、藤原道山、森下孝三監督が舞台挨拶を行った。舞台挨拶の模様は全国14劇場に中継、東日本大震災によって被災した名取、福島の劇場も含まれ、登壇者たちは復興への願いを込めた思いを語った。

物語の舞台は、様々な王国が日々争いを繰り返していた2500年前のインド。少年チャプラ(声:竹内順子)は奴隷市に売られそうになった母親(吉永小百合)のためにも、奴隷の身分を抜け出したいと願う。コーサラ軍に家族を殺されたタッタ(大谷育江)と共にコーサラ軍の宿営地を襲う。だが、チャプラは負傷したブダイ将軍(玄田哲章)を助け、将軍を救命した栄誉により、身分を隠したままブダイの養子の地位を手に入れる。コーサラ国はさらに強大な国となっていく。一方、シャカ国で誕生した王子シッダールタ(吉岡秀隆)はバンダカ将軍(藤原啓治)の訓練を受け、武芸にも秀でた若者に成長。やがてチャプラ率いるコーサラ国とシッダールタのシャカ国が開戦する。

手塚治虫が10年もの歳月を連載に費やした「ブッダ」。この不朽の名作を現代風のタッチで新らたによみがえらせた本作では、仏教の開祖ブッダになる以前の王子シッダールタと奴隷の少年チャプラという正反対の魂を持ったふたりが、運命に苦悩する姿を描く。

奴隷の少年チャプラの母親とナレーションを務めた吉永小百合は、「手塚治虫さんの作品はずっと昔から大好きでした。今回、この作品に関わることができて嬉しく思っています。素敵な息子、堺さんとワクワクしながら演じました」と作品への思いを語った。その息子チャプラの声を演じた堺雅人は「ものすごく壮大なスケールな物語なので『大丈夫だろうか?』という思いと光栄な思いが入り混じりながら演じました。この模様は全国14ヶ所の劇場で中継されているということで、特に名取、福島の皆さんにご挨拶できるのは嬉しく、ありがたいです。いろんな意味で第一歩、これからいろんなことが始まる作品になると思います」と挨拶した。

シッダールタの父でシャカ国王スッドーダナを担当した観世清和は、能以外のジャンルに出演するのは本作が初めてのこと。「人間の生と死という非常に普遍的なテーマは能の世界にも通じるもの。私はズブの素人でございますので、私のシーンは耳をふさいでご覧いただきたい(笑)」と笑顔でコメント。観世清和の隣りに立ったのは実の息子・観世三郎太。ジョーテカの声を演じた三郎太は、今回の親子共演に対して「いつもは能の舞台で父と立たせていただいてますが、今回は父と一緒に声優をやらせていただき、良い思い出になりました。一生懸命頑張りましたので、よろしくお願いいたします」と丁寧な口調で語った。コーサラ国の姫・マリッカの声を演じた黒谷友香は、「声優を務めたのは初めてで戸惑うこともありましたが、監督さんやスタッフ、ほかのキャストの皆さんのお力を借りて何とか務めることができました。子供の頃から読んでいた手塚治虫先生の作品に参加できて感謝しています」と話した。

主人公、シッダールタの声を担当した吉岡秀隆は、「こんな僕でもシッダールタができるんだという未だに恐れ多い気持ちです。先程も裏で控えていたら、スタッフの人と間違えられて(笑)。こんな僕がいずれブッダになれるのだろうか?と思いました」と苦笑い。「とにもかくにも、シッダールタが一歩、踏み抱いた一歩が、今を生きる私たちの心の糧になるよう祈っています」と話し終えると、吉岡をスタッフと間違えたという女性司会者が、「暗がりの中でスタッフと間違えて『ちょっと持っていてください』とマイクを渡してしまいました。大変失礼いたしました」と謝罪。ナチュラルな雰囲気が魅力の吉岡ゆえに起こった珍エピソードに会場も和み、吉岡も温かい笑顔を浮かべていた。

本作のメガホンをとった森下孝三監督は、「パンフレットには実働5年と書いてありますが、今年の4月まで絵の直しをしていたので6年近くかかりました。やっと終わったなという気持ちですが、3部作なので完成するまでには自分は何歳になるのかな?と思います(笑)。この作品は宗教的なイメージを持たれがちですが、ブッダを中心とした人々の命のドラマです。ご覧いただいた後には、きっとお釈迦様との距離がかなり近づくと思います」と映画の見どころを語った。

また、舞台挨拶前には本作の尺八演奏を担当している藤原道山が登場。「仏教のように文化の多くは西からやって来ましたが、日本から何か発信して東から風を送っていきたいという思いを込めました。シタールというアジアの楽器も使っているので『ブッダ』にぴったりかなと思いました」と話し、メインテーマなど二曲を披露した。

最後に吉永小百合が、「一昨日、私は名取市に行ってまいりましたが、信じられないような光景が広がっていました。名取のワーナーマイカル名取も大きな被害に遭ったにも関わらず、4月末に再オープンされました。そこで働く方の中にはご家族を亡くされた方もいらっしゃると聞きました。映画がスポーツや音楽と共に、震災で傷ついた人々を少しでも癒すことができたら、元気になっていただくことができたらと、切に願っています」と平和への思いを言葉にした。

日本が誇る巨匠・手塚治虫が遺した「ブッダ」。その希望と愛に満ちた壮大な物語は、多くの人々が命の尊さを深く考える作品となるだろう。新たに映画となって生まれ変わった「ブッダ」が、スクリーンに登場する日を心待ちにしてほしい。【取材・文/鈴木菜保美】

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