「俳優も音楽も照明も全てが素晴らしい!」万城目学が語る『プリンセス トヨトミ』の魅力

原作者の万城目学氏。本作は『鴨川ホルモー』(09)に続く、二作目の映画化
  • 原作者の万城目学氏。本作は『鴨川ホルモー』(09)に続く、二作目の映画化

万城目学。初めてこの名前を見た時、どう読むのかきっと頭を悩ませることだろう。是非、この機会に覚えてもらいたい。“まきめまなぶ”と読む。言わずと知れた「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「偉大なる、しゅららぼん」などのベストセラーを世に送り出している人気作家だ。そんな万城目氏の「プリンセス・トヨトミ」が映画化され、いよいよ5月28日(土)より全国公開となる。東京で完成披露記者会見が行われた当日、万城目氏に本作に関する面白い話を聞かせてもらった。

――まずは映画のオファーを受けた時の気持ちと、実際に完成した映画をご覧になっての率直な感想を聞かせてください

「まずオファーですが、とても嬉しかったですね。実際、とても変な話なんですよ。それをものすごく真面目に扱ってくれて、俳優も音楽も照明も全てが素晴らしかったです」

――映画化に際して要望は出したのでしょうか? またどの程度まで関わったのでしょうか?

「『鹿男あをによし』チーム(監督が鈴木雅之、脚本が相沢友子)だったので、あれこれ話す余地もなくお任せでした。脚本がアップされた時に見ましたが、そのままやったら5時間を越える大作になってしまうので、2時間ぐらいまでカットしなければいけないんですよ。そうなると、オリジナルどうこうではなくなります。だから原作者として“この要素がどうこう”というのはなかったですね。ただ、会食の場で、監督から『原作のなかで好きなシーンはどこなの?』と聞かれたんです。何も考えずに好きなシーンを素直に3つ挙げたら、その時はどれも脚本に入っていなくて(笑)」

――ちなみに、その3つのシーンを教えてもらえますか?

「1つは『さよなら、プリンセス』と旭が言うシーン、1つは松平が一人で泣くシーン、1つは鳥居が旭にボコボコにされるシーンです。それを監督は黙って聞いた後、『ちょっと考えておきます』って言ってくれたんです。でも、その後、脚本がどう変わったかは全然知らなくて、僕も試写を見て初めて監督からの答えを知りました。どこが入っているかは、皆さん、是非ご覧になって確かめてください」

――真夏の大阪ロケはすごかったですね。エキストラにはお父さんが参加されたとか

「ええ、父が参加してます。大阪府庁に5000人ぐらい集まって撮影した時にいたはずです。三交替制だったんですが、あまりに暑すぎて、しかもスーツ着用だったので一交替目で帰ってしまいました(笑)」

――なぜ会計検査院を主人公に据えたのでしょうか?

「何が良いか色々探してたんですよ。大阪国がやってきたことに対して、東京から来た人間がかみついて、暴いていくわけです。たとえば、彼らの職業が警察官や検察官の場合、違法行為があったなら見逃すことはできない、税務署職員も脱税なら見逃すことができない。これらの職業には法律という客観的基準があってそれを守る必要があるんですね。でも会計検査院にはないんです。予算の使われ方が適正かどうか、それを法律に照らす必要がなく、主観で判断できるんです。無駄かどうかを判断する会計検査院だからこそ、大阪国との議論が意味をなすんですよ」

――鳥居と旭は原作と男女が逆になりましたね。これについてはいかがですか?

「『鳥居は綾瀬さんでいきたいんです! 松平は堤さんで! 真田は中井さんで!』と言われて、『そりゃ、すごい面々ですね!』でしたよ(笑)」

――玉木宏さんもこっそりたこ焼き屋のにいちゃん役で良い味を出していました

「本当は小川先生(『鹿男あをによし』に登場)役で出てくれたら面白かったんですけどね。ちょっと出るだけかと思ったら、綾瀬さんとの絡みもあって面白かったですね」

――茶子役の沢木ルカ、大輔役の森永悠希のふたりも好演でした

「府庁で撮影している時に、ちょうど待機しているセーラー服で坊主頭の森永君を間近で見たんですけど、あまりに非日常な外見に、それを書いた本人のくせに、ぎょっとしましたよ。しかも横にはご家族が見学に来ていて。『シュールやわあ』って思いました(笑)」

――本作で一番好きなシーンはどこでしょうか?

「茶子と鳥居のタクシーのシーン、あそこでの会話とか好きですね。それから、もちろん松平と真田の対決シーンですね」

――原作にはないけど、映像ならではというシーンもありましたね

「戦国時代の合戦シーンは、やはり映像ならではの良さがありますね。そうそう、僕の作品と映像には不思議な符号があるんですよ。『プリンセス・トヨトミ』を執筆している時に、『鹿男あをによし』の放送が始まり、空堀商店街のお好み焼き屋(冨紗家)でロケが行われました。そして、そのお好み焼き屋を、原作の小説でも舞台として参考にしました。また、戦国シーンは彦根城で撮影したんですが、最新刊の『偉大なる、しゅららぼん』も彦根城を参考にして書いているんですよ」

奇想天外な万城目ワールド全開の『プリンセス トヨトミ』は、相当に奥が深い作品だ。舞台となる大阪の全面協力があったからこそだが、大阪府庁のシーンはまさに圧巻だ。そして、それに負けない俳優陣の演技力、特に中井貴一、堤真一の素晴らしさは言うまでもないだろう。本作はエンターテインメントのエッセンスはふんだんに、一人の人間としてどのように考え、どのように生きていくのかを見つめ直すロードムービーでもあるのだ。侮りがたし。そんな言葉が似合う作品だ。エンディングのケルティック・ウーマンが奏でる楽曲も胸に染み渡る。大阪の方は100%必須、いや日本全国の皆さん、是非とも劇場へ足を運び、万城目ワールドに存分に酔いしれてほしい。【Movie Walker】

■万城目学(まきめまなぶ)プロフィール
1976年生まれ。大阪府出身。京都大学法学部卒業。2006年に第4回ボイルドエッグズ新人賞を「鴨川ホルモー」で受賞、デビューを果たす。最新刊は「偉大なる、しゅららぼん」。

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