道尾秀介「家族のような他人を書いてみたかった」

道尾秀介氏
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―雑誌「メフィスト」の人気連載がついに単行本化! 今回のテーマは「家族」だそうですね。

「僕自身あまり幸せといえる環境で育ってこなかったので、昔から家族に対する憧れがあったんです。でもいまの世の中を見ると、なんだか『他人のような家族』が多すぎる。だから今回、あえて『家族のような他人』を書いてみようと思いました」

―タイトルに干支の動物を入れることで、道尾作品の一部は「干支シリーズ」と呼ばれているそうですが、今回はなぜこのタイトルにしたのでしょうか。

「プロの詐欺師が『カラス』と呼ばれることを知って、今回の干支は『鳥』にしようと決めたんです。でも最初は正式なタイトルが決まっていなくて、編集者にプロットを送るときなんてファイル名はずっと『鳥の話』だったんですよ」

―自分より上の世代が主人公というのは初めてですよね。

「年上の異性はとても書きにくいと思うのですが、同性だと、年齢を積んでいく中で変わっていく考え方やもののとらえ方がだいたい想像できるので、描くときの難しさはあまりなかったですね。作家になる前に営業マンをやっていて、そのときの仕事相手が40〜50代の男性だったことも大きいかな」

―道尾作品の魅力として「どんでんがえし」がありますが…。構成ははじめから決めているわけではないとか。

「書く前に細かい部分まで決めてしまうと、設計図を見ながら組み立てるだけの作業になってしまって面白くないでしょ。いつもそうなんですが、書いているうちに登場人物たちが勝手に動き出して、物語を僕が予想もしていなかった全体像に仕上げてくれるんです」

―道尾さんは、「ミステリーのトリックを使って人間の感情を描く作家」とうかがったことがあります。

「トリックは目的ではなく、あくまで感情やテーマを伝えるための手段です。お菓子でいうと『おまけ』みたいな存在(笑)。その『おまけ』が肥大化したビックリマンチョコみたいな小説もありますが、僕はそういうものは書きたくない。あくまでお菓子にあたる、物語の部分を書きたいし、読んでほしいんです」

―最後に見どころをお願いします。

「僕はそのとき自分自身が読みたいものを書いています。今回もそれが書けたという自信はあるので、もし僕と100パーセント趣味の合う人がいたら、世界で一番面白い本になると思いますよ。趣味が合わなければごめんなさいってことで(笑)」【ライター/峰尾亜希子】

道尾秀介
1975年東京生まれ。04年「背の眼」でデビュー。07年「シャドウ」で本格ミステリ大賞を受賞。

「カラスの親指 by rule of CROW's thumb」
講談社 1785円 (2008/7/23 発売)
詐欺師の中年2人組のもとに、1人の少女が現れた。やがて人数は増え、奇妙な同居生活が始まる。失ったもののために、彼らが企てた計画とは!?

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