「乙武洋匡トークショー」をレポート!

充実した教師生活を語る「乙武先生」
  • 充実した教師生活を語る「乙武先生」

1/24(土)、イムズホール(福岡市中央区)で福原学園主催の教育フォーラムのイベントの一環として、乙武洋匡さんのトークライブが開催された。外は大雪が降るあいにくの空模様ながら、立ち見も出るほどの盛況ぶりだった今回のトークライブ。小学生からおじいちゃんおばあちゃんまで、実に幅広い年代が駆けつけた。

「五体不満足」出版を皮切りに、ニュースキャスター、スポーツライター、絵本作家と、さまざまな分野で活躍してきた乙武さん。ご存じない人のために言っておくと、現在の職業は小学校の先生。3年の任期つき教員という形で東京都杉並区にある杉並第四小学校に勤めている。2年目となった今年度からは担任をもち、「3年2組の乙武先生」として活躍中だ。また、福原学園の九州共立大学において、スポーツ学部の開設を機に、大学のサポーターとして活動している。

もちろん教育の話が中心ではあったが、時おり大きな笑い声も起こり実になごやかなムードで進められた。以下、乙武先生の苦悩もやりがいもいっぱいの教師生活エピソードを紹介しよう。

■「教師になろうと決めたきっかけは、長崎男児誘拐殺人事件」

「僕にとってスポーツライターはまさに天職でした。でも、長崎県の男児誘拐殺人事件がありましたよね。マスコミは子どもだけに責任を帰する言い方をしていたけど、僕は『あの子は苦しかったんじゃないかな』って見方をしていたんです。(中略)育ってきた環境や出会いによって、ああいう事件を起こさざるを得ない苦しい立場に追いやられてしまった。どこかで彼らが出していたはずのSOSに周りの大人たちが気づいてあげられなかった、軌道修正してあげられなかったのかなぁって思って。もちろんその子の弱さもあったけど、子どもが育っていく過程の中で、大人が果たすべき責任というものを感じたんです。僕は周りの大人に恵まれてここまで育ってきましたから、今度は自分が大人という立場で下の世代に“恩返し”をしていきたいと思って、教育という分野で自分の力を生かすことにしました」

■「先生、トイレ行ってきていいですか」

「最近の子どもたちって、なかなか能動的になれないんですよね。もう、それがすごくもどかしくて。例えば5分休みになると『先生、トイレ行ってきていいですか』って聞いたり、授業中ノートをとっていると『先生、新しいページ開いてもいいですか』とか聞いたりするんです。1年間ずっと自分たちで考えるように促してきたところ、最近ようやく変化が現れました。3学期のクラスの当番決めをするときに、子どもたちが僕の給食を運んだり片付けたりする、『乙武先生当番』って係を作ろうと言い始めたんです。そこからさらに、すごい名前なんですけど『給食当番当番』って係もできたりして(笑)これは配膳してると給食をもらうのが一番最後になってしまう当番の給食を持っていってあげる、っていう係なんです。ネーミングはすごいですけど(笑)、すばらしい考えですよね」

■「職員室のほうを向いて仕事をしない」

「勉強もスポーツもできるけど、ちょっと内気で、『ブレイクさせたいな』って思う男の子がいたんです。その子が2学期の始業式の日に、3本線の剃りこみを入れて学校に来たんですよ。お父さんにやられたらしいんですけど、僕が正直に『かっこいいじゃん!』って言ったら、その子が半ベソをかきながら『ヤだよ、恥ずかしい。じゃ先生もやってよ』って言うんです。その場はハハハって感じでその会話は終わったんですけど、しばらくして猛烈に後悔しましてね。(剃りこみを入れたら)必ず職員室で何か言われるわけですよ。気づかぬうちに僕はその子にそっぽを向いて、職員室のほうを向いて仕事をしてたんですよね。頭に3本線ぐらい入れてあげたら、あの子はすごく喜んだだろうし、気持ちをしっかり掴めたんじゃないかなって。だからこそ、子どもたちの要望は、ルールの中であれば多少風当たりが強くても通していきたいなって思うんです。子どものほうを向いてこそ教師ですから、残り1年の職務を全うしていきたいですね」

【九州ウォーカー/山田晃裕】

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