役所広司『山本五十六』は「日本の未来に向けたメッセージ」

『聯合艦隊司令長官 山本五十六』をPRする、左から、瀬戸朝香、役所広司、玉木宏、成島出監督
  • 『聯合艦隊司令長官 山本五十六』をPRする、左から、瀬戸朝香、役所広司、玉木宏、成島出監督

日米開戦の火蓋を切った連合艦隊司令官・山本五十六の実像に迫った『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(12月23日公開)が、いよいよ公開を迎える。そこで、艦長・山本五十六を演じた役所広司、若き新聞記者・真藤を演じた玉木宏、小料理屋の女将として戦争を見つめる志津を演じた瀬戸朝香、成島出監督にインタビュー。ロケ地にもなった名古屋で、作品に込めた思いを語ってくれた。

真珠湾攻撃の指揮を執り、日米開戦の口火を切ったことで知られる山本五十六。だが、彼が日独伊三国同盟の締結や、日米開戦に断固反対していたことはあまり知られてない。本作では、反戦を訴え続けた彼が苦渋の決断をし、最後まで講和への道を探り続ける姿が描かれている。演じた役所広司自身、「山本五十六さんが、戦争に反対していたことを作品に参加して初めて知りました」と明かす。そして先見性のある国際感覚を持ち、情にも厚かった彼の人柄に「魅力を感じた」とも。

それは、メガホンを取った成島出監督も同じだったようで、部下思い、家族思いの山本五十六の姿を本作では丁寧に撮り上げている。水まんじゅうやぜんざいなど、甘いもの好きな一面ものぞかせている。「役所さん演じる五十六さんの人間味を伝えようとしたら、自然と食事のシーンが多くなっていきました。役所さんは、本当に美味しそうに、表情豊かに(用意した食事を)食べるんですよ。撮っていて、楽しかったです」。

日本を守るため、必死に講和の道を探る五十六に、香川照之演じる東京日報の記者・宗像が「世論の声」と称し、開戦を迫る場面も登場する。その隣で、五十六の言葉に耳を傾けるのが、玉木宏演じる若き新聞記者・真藤だ。「観客の目線を意識した」と明かす玉木は、「あえて答えをグレーソーンに隠し、じわじわと心境が変化していく芝居を心掛けた」という。

そんな真藤ら東京日報の記者が、よく通う小料理屋「志津」の若女将・志津を演じた瀬戸朝香は、「改めて戦争の怖さを痛感した」と話す。真珠湾攻撃成功の報に浮かれるお店の常連客たちの姿を複雑な表情で見つめる志津を、役所は「彼女が演じた志津は戦争に反対している。いわば居酒屋の五十六なんです。共演シーンこそありませんでしたが、艦長・五十六としては頼もしかったです(笑)」とユーモアたっぷりに明かしてくれた。

撮影中、「日米開戦に関しては山本五十六をはじめ、良くない感触を持った人たちが少なからずいたはずなのに、『どうしてあの時、日本は国全体が戦争に向かって行ったのか?』を」考えたという役所は、「この作品は、日本の未来に向けての良いヒントが詰まっている」という。それは劇中で真藤に伝える、ある言葉にも表れている。「『目も、耳も、心も、大きく開いて世界を見なさい』。非常にシンプルですけど、山本五十六さんの我々に対するメッセージだと思うんですよね。だから、そのメッセージを受け止めながら口にしました」。

そのメッセージを受けた玉木も、「脚本を読んだ時に、作品の核となるセリフだなって思ってたんですけど、実際に役所さん演じる五十六さんから言われると、すごく心に響くセリフで。五十六さんはものごとを俯瞰で見ることができる人だと思うんです。やっぱり一つのことに固執して、凝り固まった考え方になると、この映画で描かれているみたいに良くない方向に進んでしまうと思うので、しっかりと(メッセージを)受け取って、後世に伝えていかなければならないと思いましたね」と語った。

最後に監督が「国益って、子供たちが幸福に生きられる世界のことだと思うんです。五十六さんから真藤に伝わった思いが、未来の子供たちにつながっていくことを願ってこの作品を撮りました」と結ぶ『聯合艦隊司令長官 山本五十六』は、混沌とした世界の中、戦争に傾倒していく危うさ、そして反戦のメッセージが込められた作品に仕上がっている。山本五十六のメッセージを、目で、耳で、心で感じ取ってほしい。【取材・文/大西愛】

キーワード

関連記事

[PR] おすすめ情報