役作りは必要なし!『少年と自転車』ダルデンヌ兄弟の演出テクニックとは?

第64回カンヌ映画祭グランプリ受賞作『少年と自転車』で、監督のダルデンヌ兄弟が来日
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『ロゼッタ』(99)、『ある子供』(05)で二度、カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞しているジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、最新作『少年と自転車』(3月31日公開)を引っさげて来日。本作でも、第64回カンヌ映画祭グランプリを受賞した両監督は、これまで手垢のついていない子役たちから、イノセントな表情を引き出してきた。本作もしかりで、新星トマ・ドレは、映画初主演ながらも、過酷な状況下で生きる少年シリル役を生き生きと演じた。両監督にインタビューし、巧みな演出法について話を聞いた。

親に捨てられた少年シリルと、彼の里親サマンサとの心の交流を描いた本作。トマ・ドレは、150人の中からオーディションで選ばれたが、撮影に入る前にとことんリハーサルをしたと、兄のジャン=ピエール・ダルデンヌ監督が教えてくれた。「リハーサルでは、体の動きをとことんやりました。他の子供と喧嘩をしたり、自転車で走ったり、転んだりといったシーンです。そうした体の動きから始めることで、登場人物に入り込むことができたようです。私たちはいつも長い時間をかけてリハーサルをやります」。

弟のリュック・ダルデンヌも、子役を演出する際は、現場の雰囲気を作ることが重要だと話す。「子供が気分良くいられる現場を作ること。つまり、トマ・ドレが監督からも相手役からも信頼されていることを理解させることが大事です。そうすれば、全て上手くいきます。子供はカメラの前に立つと、確かにそこに存在するんです。誰かの真似をしたり、わざとらしい演技をしたりしないように、ただそこで自由にいられるようにします」。

トマ・ドレはもちろん、『ヒア アフター』(10)で知られるセシル・ドゥ・フランスも、悲喜こもごものリアルな表情を見せている。セシルにも、あえて役作りをしないようにお願いしたというリュック・ダルデンヌ監督。「セシルは偉大な女優ですから、トマ・ドレとの関係性をすぐに理解してくれました。トマ・ドレは演技をしたことがなく、そこに自然体でいるので、彼女にも同じように存在してほしくて。 実際に彼女は『今回は、彼に身を任せることにしました』と言ってくれました」。

シリルとサマンサが、紆余曲折を経ながら、本当の親子のような絆を築き上げていく本作。ダルデンヌ監督たちは、ドキュメンタリー畑出身だけあって、その心の機微がリアルに紡がれている。ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督は、リアリティーについての見解をこう語った。「どんな映画の主人公にも、私たちのカメラが入る前の人生があり、カメラが去った後にも人生が続いていくと思っています。たとえフィクションであっても、常にそのことを忘れないように心がけています。登場人物がいかにも作り物だという印象を持たせないようにしたい。だから、私たちの映画の登場人物は、どこにでもいるような等身大のキャラクターなのです。映画は、俳優たちが自分たちの演技力をデモンストレーションする場であってはならないから」。

なるほど、ダルデンヌ兄弟の監督作が人々の琴線を揺らすのは、そういった生々しくわき上がる感情をしっかり切り取っているからか。『少年と自転車』の深みあるドラマも、その妙技の賜物なのでじっくりと堪能したい。【取材・文/山崎伸子】

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