「人と話すだけで人は変われる」。あの廣木監督を唸らせた蓮佛美沙子が語る『RIVER』撮影秘話

廣木監督作『RIVER』で新境地! 主演を務めた蓮佛美沙子
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『ヴァイブレータ』(03)、『軽蔑』(11)の廣木隆一監督が、東日本大震災の直後に撮影し、秋葉原無差別殺傷事件で恋人を失った女性の物語を描いた映画『RIVER』。現在公開中の本作でヒロインを務めているのが蓮佛美沙子だ。『君に届け』(10)など、これまで青春映画への出演が多かった彼女にとって、本作での深い喪失感から立ち直ろうとする役柄は、かなりチャレンジングだったはず。だが、その演技は廣木監督を「上手すぎる」と唸らせた。今回、そんな蓮物美沙子にインタビューを敢行。冒頭、約15分の1カット長回しや、廣木組ならではの撮影現場の様子などをたっぷりと語ってくれた。

2005年、第1回スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックスのグランプリを受賞、『犬神家の一族』(06)でデビュー。その後、『バッテリー』(07)、『ハナミズキ』(10)と様々な作品で着実にキャリアを重ねてきた蓮佛美沙子。そんな彼女も、「この作品は、見てくれた人がどんな気持ちになるか不安でした」と語る。その理由は、作品が東日本大震災の直後の撮影だったこと、そして2008年に起こった秋葉原無差別殺傷事件を扱った作品だったからだ。

出演を決めた背景には、震災で抱いた気持ちがあった。「震災が起こってからは、『映画を撮っていて良いんだろうか?』という気持ちになりました。でも、この仕事をやっている人間として、誰かの救いになれるかもしれない。何をすることが正しいのかわからなかったけど、だからと言って何もしないっていうことができなかったんです」。

ヒロインのひかりは、人々が行き交う秋葉原にやって来た。そこは恋人をあの事件で失った街。そのシーンはなんと約15分の1カット。「あのシーンの撮影は初日だったんです。監督から何を言われるかわからない。でも、今となっては初日にあの長回しがあったから、ひかりの心のポジションを実感できたと思います。劇中、台本に書いてなかったけど、私、涙を流したんです。本番の気持ちだけでお芝居したってことも初めてでした」。

数々の話題作を手掛けてきた廣木監督の名前を聞いた時の印象は?「現場に入るまでは、いろんな人から監督のことを『怖いよー』とか言われました(笑)。そして、最初の本読みの時に、廣木監督から『見たことあるな、その芝居』って言われた時は、『きたっ!』って思いました(笑)。でも、監督は怖い人でも、きつい言葉を話す方でもなくて、『セリフも言いたくなかったら言わなくて良い』とか『台本も覚えてこなくて良いよ』とか、こっちの心の動きに任せてくれるんです。言葉のない演出をされているような感覚でした。そういう監督は初めて。おかげで初心に戻れたというか、これまでのことを全て削ぎ落としてお芝居ができた現場でした」。

恋人のいない現実を受け入れられず、秋葉原の町を彷徨うひかり。やがて、メイドカフェの店長やストリートミュージシャンなど、様々な人々と出会い、少しずつその心境に変化が訪れる。「田口トモロヲさん演じるメイドカフェ店長に言われた『目的地に向かって歩いているんじゃなくて、目的地を探して歩いているんだ』っていう言葉が、ひかりの心にひっかかる。私自身、いろんな人と出会いながらお芝居をしていて、心が広がっていく感覚を普段から感じているので、人と話すだけで人って変われると思います」。

最後に、この映画を見る人へメッセージを送ってくれた。「この作品には、被災地の映像もありますし、忘れちゃいけないものが詰まっている。そんな作品に関われたことを幸せに思っています。たくさんの人々が川のように流れている街を漂いながらも、ひかりが最後にたどり着く気持ち。そして、その先の流れも見えてくるような、静かに流れていくラストシーンに注目してもらいたいです」。

現在21歳。その落ち着きは、もはやベテランのような雰囲気さえ感じさせる蓮佛美沙子。女優として初心に返りながらも、色々なことを学んだ『RIVER』は、彼女のターニングポイントとなるだろう。そんな本作での蓮佛の熱演、そして廣木監督が映し出す傷ついた人々の再生の物語を是非とも劇場で鑑賞してほしい。【取材・文/鈴木菜保美】

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