『ドライヴ』ニコラス・ウィンディング・レフン監督は無免許? 初来日で語る映画製作秘話

『ドライヴ』のPRで初来日したニコラス・ウィンディング・レフン監督
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第64回カンヌ国際映画祭で監督賞に輝いたサスペンスアクション『ドライヴ』が3月31日(土)から公開となる。孤独な主人公“ドライバー”の危険な恋を描いた本作。メガホンを取ったニコラス・ウィンディング・レフン監督が初来日を果たした。カンヌでは監督賞受賞の喜びを主演のライアン・ゴズリングと熱いキスで表現した監督。そのキスについては、「世界中の女性ファンに羨ましがられて、一部の男性ファンには喜ばれたかもしれないね」と笑顔で話しながら、映画撮影中のエピソードや製作秘話を語ってくれた。

映画のオープニング、ロスの夜道を一台の車が静かに進んで行く。シンプルな映像を包む1980年代のようなポップな音楽が美しく響き、観客を一気に映画の中に引き込んでいく。『ドライヴ』というタイトルから、さぞや車に対する思いが強いのかと思いきや、レフン監督は車はおろか、運転免許も持っていないという。印象的な映画の冒頭のシーンについて、監督は「タクシーの中で思いついた」と話す。「ある晩、僕はロスでタクシーに乗っていたんだ。当時、別の作品の企画が難航して気分が落ち込んでいたんだけど、その時ラジオから音楽が流れて、僕は涙を流してしまったんだ。その瞬間、この映画の冒頭を思いついた。ある男がロスの街を車で徘徊している。彼を和ませるのはラジオから流れてくるポップミュージック。これでいけると思ったんだ」。

主人公のドライバーは、昼は映画のスタントマン、夜は強盗を手助けする運転手という2つの顔を持つ。主演を務めたのは、近年『ラースと、その彼女』(07)や『ブルーバレンタイン』(10)など、目覚しい活躍を続けるライアン・ゴズリングだ。ライアンについて監督は、「すごくプロフェッショナルで、思ったとおりのナイスガイだった」と語る。「今回は全ての面でライアンとふたりで作り上げたと言って良い。ポイントとなったのは、沈黙。ライアンと話し合いを重ねる中で、“ドライバーなら答えるに値しないと答えないよね”という意見が合致して寡黙なキャラクターになった。結果的に、よりミステリアスな人物にすることができたと思います」。

ドライバーは、同じアパートに住む人妻アイリーンと恋におちる。演じたキャリー・マリガンは、本作で英国アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。もともと原作小説では、ラテン系の女性として描かれていたアイリーンだが、監督とキャリーの出会いが、映画ならではのアイリーンを生み出した。可憐な美しさの中にも、どこか寂しげで、かつ大人の女性の魅力も混在するキャリーが放つ、その存在感に注目してほしい。「アイリーンは、作品の中で純粋なラブを象徴する存在。キャスティングを決める時に、キャリーが部屋に一歩入って来た瞬間『あ、この人だ』と思わせるものがあった。撮影当時、キャリーはロスに住むところがなかったから、僕の家に来て、妻と一緒に住んでいたんだ。彼女の作るキャロットケーキは美味しいんだよ!」と、監督は撮影以外のキャリーとのエピソードも披露してくれた。

服役中だったアイリーンの夫スタンダード(オスカー・アイザック)が出所。スタンダードは多額の借金を背負い、強盗を強要されていた。アイリーンら家族の命が危険な状況にあることを知ったドライバーは、スタンダードのアシスタントを引き受ける。やがてマフィアの犯罪に巻き込まれていくドライバー。その行動は次第に加速し、それまで静かで大人しかったドライバーが、顔色一つ変えずに暴力を振るう攻撃的な男に豹変する。その変貌ぶりには誰もが圧倒されるだろう。監督は「肉体的な表現はもちろんだけど、いかに観客の感情を積み上げていけるかが鍵。電極と電極を近づけると火花を散らすようなバイオレンスも必要だけど、バイオレンスなシーンとのコントラストは多ければ多いほど良い。僕もコントラストのある人間です(笑)」と、冗談を交えながら映画へのこだわりを明かしてくれた。

一見、“車”と“バイオレンス”というキーワードから、男性向けと思われがちの『ドライヴ』。だが、そのシーンがあるからこそ、静かさの中に生まれる大人の純愛がより際立つ。あまり言葉を交わないふたりが、次第に恋に落ちていくロマンティックなシーンに、多くの女性たちの心を鷲づかみにするはずだ。かつてライアンをブレイクさせた『きみに読む物語』(04)のような王道のラブストーリーも良いが、カンヌが認めた美しい映像と物語を是非劇場で堪能してほしい。【取材・文/鈴木菜保美】

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