松たか子&阿部サダヲの主演映画「夢売るふたり」。メガホンをとる西川美和監督が語る女性の魅力とは!?

女性よりも男性の気持ちの方が共感できるという西川監督
  • 女性よりも男性の気持ちの方が共感できるという西川監督

「ディア・ドクター」より3年ぶりとなる西川美和監督の最新作「夢売るふたり」は、松たか子と阿部サダヲ演じる夫婦が人生の再出発をかけて結婚詐欺をするという物語。これまでも人間の心理を鋭く描き出してきた西川監督が、本作では男女の複雑かつ奥深い絆と女性の生き方に迫る!

──「ゆれる」(’06)、「ディア・ドクター」(’09)と西川監督の作品は男性が主人公の物語が続きましたが、今回は夫婦と結婚詐欺に巻き込まれる女性たちの姿が描かれています。この物語が生まれるきっかけは何だったんでしょうか?

「これまで“女性”を主人公にした物語を作ったことがなくて、苦手だったんですが重い腰をやっと上げたという感じなんです(笑)。自分自身が女性なので、女性を主人公にしてしまうと“監督の体験なのかな?”とか、“監督はこういう考えているんだな”とか、自分と重ね合わせてとらえられてしまう怖さがあって。匿名だと大胆になれるけど、実名だと縮こまってしまうように、私も男性を主人公に据えて書くことで大胆になれてきたんです。私自身も、どちらかといえば男性同士のドラマの方が好きですし。男性も女性ばかりが登場する映画はなかなか観づらいと思うので、そういった映画は避けてきたところがありました」

──では“結婚詐欺”を題材にしたのはなぜですか?

「女性の怖さや脆さを描くにはなにが一番いいかなと考えたんです。そうしたら、ある年齢に差しかかった女性が誰かに愛される時こそ、いろんなものを露呈する瞬間かなと思って“結婚詐欺”をテーマに選んだんです。女友達とかの恋愛話を聞いた時に“この人、こんなだっけ?”と意外な面を知ったりすることもあって…女性は見た目では判断できないですからね(笑)。あとは、ごく普通の人間がなにかのきっかけで悪事に手を染めていってしまうさまも描きたかったんです。テレビで犯罪のニュースを観ると、その犯人の半分くらいはいかにも犯人らしい風貌なんですけど、残り半分くらいは事件のグロテスクさと犯人の風貌が一致しなかったりして、そういった人に興味があるんですよね。犯罪を犯すというのはすごく大きなことのように思えるけれど、実は日常と地続きで、ちょっとしたことをきっかけに、そちら側へ渡ってしまって戻れなくなる人もたくさんいると思います」

──今回、その結婚詐欺に手を染める夫婦役が松たか子さんと阿部サダヲさん。まさに、罪を犯しそうには見えない2人ですよね(笑)。

「そうですね、松さんと阿部さんは本当に夫婦のようなたたずまいで、すごく理想的で庶民的な感じがしました。目線やセリフの間合いなど、小さな修正や提案を現場ではしましたが、お2人は役をしっかりつかみ切ってくれていました」

──結婚詐欺を企てる妻に結婚したい独身OL、男運に恵まれない風俗嬢など本作にはさまざまな女性が登場しますね。実際にリサーチを重ねてキャラクターを作り上げたそうですが…。

「そうですね。こういう機会じゃないと取材させてもらえないなと思ったのは、ソープランドで働いている女性です。私が取材させていただいた方は、ものすごくプロ意識が高くて、どんな男性が来ても喜ばせる自信があるとおっしゃっていましたが、たとえば私の場合、自分が作った映画でどんなお客さんも楽しませられるって言えるかっていうと言い切れないんです。それだけ自分の仕事に対してプロ意識を持っている女性って、ほかの仕事でもどれだけいるんだろうって考えましたね。“職業に貴賎なし”と言いますが、そのとおりだと思いました。その方は“今まで生きてきた中で今が一番充実している”ともおっしゃっていて、それはセリフにも反映しています。自分にとって別の世界の価値観を見せていただいたことは、取材の賜物だったと思います。昔から聖女と娼婦は紙一重だと言われていますが、そうだと実感しました。そういった女性のさまざまな生き方を今回の映画のキャラクターに投影させて、観客の方に紹介できたらいいなと思っていましたね」

──この映画を通して西川監督が感じた“女性”の魅力は?

「今回のヒロインは夫に結婚詐欺をさせて、良心の呵責と戦っているところもあると思うんですが、男性よりもその気持ちが女性は少なかったりして怖いなと思うことはありますね。だから女性はキケンな動物だと思いますよ、男性は取り扱い注意ですね。でも、すごく優しい生き物でもあると思うんです。キメ細やかな優しさもあって、いろんな要素が共存している。この映画ではそういう部分も含めて、男性に“女ってこんなくだらないことで悩んでかわいいやつだな”って思ってもらえるとうれしいです」

【取材・文=リワークス】

■MOVIE
「夢売るふたり」
監督・原案・脚本:西川美和 
出演:松たか子 阿部サダヲ 田中麗奈 鈴木砂羽 木村多江 香川照之 笑福亭鶴瓶
(’12アスミック・エース)
上映時間:137分
※大阪ステーションシティシネマほかにて上映中

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