カナダ・ケベックに学べ!沖縄の文化産業育成を考えるシンポジウム開催リポート

沖縄文化コンテンツの国際展開についてシンポジウムが開催された
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9月14日、沖縄県立博物館・美術館講堂にて、国際コンテンツビジネスシンポジウム「沖縄の文化コンテンツの国際展開~カナダ・ケベックの事例から地域文化の発信を考える~」が行われた。同シンポジウムは、翌15日(土)・17日(月)に(16日の上映は台風接近のため延期)那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催される映画上映イベント「ボンジュール!ケベック シネマウィークin沖縄」のプレイベントとして企画されたもの。

沖縄県が進める「沖縄文化等コンテンツ産業創出支援事業」の一環として、沖縄文化の産業化と国際展開の可能性について県民の理解を深めることを目的とし、カナダ・ケベック州のSODEC(文化産業促進公社)のフランソワ・N.・マセロラ代表取締役・最高経営責任者を招いて、映画やテレビ、書籍出版や音楽、工芸品など、芸術と文化の創造と産業化に関するケベック州の取り組みを学ぶシンポジウム。

冒頭、沖縄県文化観光スポーツ部の平田大一部長は、「沖縄県では文化・芸術に投資して成果を上げ、さらに議論をして事業として育てていくことを目標としている。その先進的地域であるケベックの事例を、楽しみながら学びたい」と期待を込めてあいさつ。ディスカッションの際には「マセロラさんに会えることになり、これは自分だけが話を聞くよりも広く多くの人と学ばせてもらう方が有意義だと思った」と開催の意図も口にした。

まずは、沖縄県産業振興公社の風間康久ハンズオンマネージャーが、「ケベック州における文化・芸能の産業化の支援策」の事例を紹介。ケベック州の取り組みの特徴を指摘し、「文化事業の発展には地元民がお金を払ってでも参加したいと思う『アクセス』のしやすさが大切。文化の受け手側(観客)のとっつきにくさをなくし、興味を阻害する事象を取り除くことが求められる」「観光客とともに、文化の担い手も行政もが楽しむという姿勢が必要」とポイントをまとめた。

続いて、このたび映画『カラカラ』を送り出すククルビジョンのユリ・ヨシムラ・ガニオン取締役が、「映画『アンを探して』の支援策について」と題して、ケベックにおける映画製作支援の実状を詳細にリポート。支援策としてのタックスクレジットの存在や、州がアメリカの映画製作を誘致することによって米映画界からの資金を有効活用していること、そこには弁護士や会計士の働きもあることなど、ケベックの文化支援が現在の形になる過程の一端を紹介した。そして「ケベックにはいろんな政策がある。システムを修正しながら今に至っている。我々もコミュニケーションを密にして、沖縄の国際的な映画を作っていきたい」と誓いを言葉にした。

後半は、ウェルカムフィルム上映を挟んで、ディスカッション「フランソワ・N.・マセロラ 氏×平田大一」、テーマは「沖縄文化の産業化の可能性と国際的ビジネス展開に向けて」。モデレーターを「キジムナーフェスタ」アシスタントプロデューサーの富田めぐみ氏が務め、来場者から寄せられた質問への回答を入れながら議論が進められた。

マセロラ氏は「ケベックでは50年前に文化に金を出す、そうした組織を作るという知恵が現われ、SODECができた」と口火を切り、これまでのSODEC取り組みの流れやその意義を次々に語った。これを受けて平田部長が、ケベックの州予算比における投資額の大きさを指摘すると、「ケベックも当初は模倣から始まり、投じた資金が文化の担い手に回らず、その手前のプロデューサーで止まってしまうような失敗例もあった」と披露した。

平田部長は、沖縄県の取り組みを5つの柱として紹介。文化事業創造への思いを熱意を込めて語った。それを聞いたマセロラ氏は「文化というものは決してお金を生み出さないものではない。他の産業と同じように利益を生むことができる。(文化支援には)まずニーズを考えて、コンセプトを立てて、組織を作る。そして誰をリーダーとするかも大切。リーダーを軸に協力者をどう配置するのかも考えなくてはならない。その点で、沖縄県には平田さんがいるのだから・・・」と、平田部長の姿勢を高く評価した。

一方でマセロラ氏は「商業ベースの成功だけでは十分ではない。文化というものには『多様性』がなくてはならない。小さな金額しか生まないものでも、ケベックという文化の素晴らしさを伝える作品もある。そこにも『ニーズ』はある」とクギを刺した。

さまざまな示唆に富んだ話を耳にした平田部長は「ケベックの50年の歩みを学んで、日本にはこれまでなかった新たな形を生み出したい。道筋を作りたい」と決意を新たにしつつ、将来世代に向けての取り組みとして、育つまで100年かかる三線の原料・くるちを植えるプロジェクトを立ち上げたことを紹介した。そしてラストは、太鼓を抱えて“歓迎の歌”を贈り、シンポジウムは幕を閉じた。

英語圏の北米で、フランス文化圏であるケベック州。その環境下で独自の文化を守り、育て、アイデンティティーや多様性を保ちながら産業として成立させているケベック州。文化の担い手と行政がいかに取り組んでいくべきなのか、先例に学びつつ、沖縄県でも行政が民間とコミュニケーションを取って仕組みを作り上げていく必要がある。

なお、『カラカラ』の完成披露試写を目玉とした3日間の映画上映イベント「ボンジュール!ケベック シネマウィークin沖縄」では、『カラカラ』の監督クロード・ガニオンの過去作の上映をはじめ、監督の故郷であるケベック州の映画を厳選して上映する。独自の文化を持つ沖縄と、同じように独自の文化を持つケベック。11682kmを繋ぐ、新しい形の国際映画イベントがいよいよ幕を開ける。【東京ウォーカー】

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