東京国際映画祭グランプリ、ロレーヌ・レヴィ監督が「扉を開くことができる作品」と感無量

グランプリ作品『もうひとりの息子』のロレーヌ・レヴィ監督と出演のジュール・シトリュク
  • グランプリ作品『もうひとりの息子』のロレーヌ・レヴィ監督と出演のジュール・シトリュク

第25回東京国際映画祭が10月28日に閉幕。コンペティション最高賞にあたる東京サクラグランプリはイスラエルとパレスチナ問題を背景に家族のドラマを描いた『もうひとりの息子』が受賞した。クロージングセレモニーの後には、六本木アカデミーヒルズで受賞者会見と審査委員による総評が行われ、見事グランプリと監督賞の2冠を果たしたロレーヌ・レヴィ監督が「心からお礼を言いたいです。サンキュートーキョー、サンキュージャパン。この賞を決して忘れません」と喜びを語った。

レヴィ監督は「この映画を失敗しないようにするためには恐怖を感じていた。恐れを克服して望みを達成することが必要だった」と胸の内を明かし、同じフランス映画で昨年のグランプリ作品『最強のふたり』のヒットをどう思うかと聞かれると、「素晴らしい映画だったし、それぞれの映画にはそれぞれの道があって、それぞれの道が美しい。私の作品は扉を開くことができると思っている」と胸を張った。

審査委員長を務めたロジャー・コーマンは、今回の審査を笑顔でこう振り返った。「たくさんの映画祭に関わってきましたが、今回はとてもフレンドリーな環境で審査ができた。満場一致で穏やかな雰囲気で審査したことをお伝えしたい」。審査委員の一人、滝田洋二郎監督も「ビッグファーザー、コーマンさんを中心にコーマンファミリーになったような気がする。最高の出会いになったことを感謝します」と素晴らしいチームワークができたことを明かした。また、『もうひとりの息子』のグランプリ理由として、コーマンは「この作品はイスラエル、パレスチナの両方を平等のバランスで見ている映画」とコメント。「政治的背景だけでなく、繊細な話題を取り上げ、そのなかでしっかりと人間はみんな平等であることを伝えている」と評価した。

審査員特別賞を受賞したのは韓国映画の『未熟な犯罪者』。主演のソ・ヨンジュが最優秀男優賞も獲得している。16歳の少年犯罪者を演じたヨンジュは、「僕自身は平凡な少年なので、一番大変だったのは主人公である少年になること。これまでは、犯罪に関わる少年は怖いと思っていたけれど、この映画に出演してからはただ怖いだけではなく、導けば平凡な少年と何ら変わりはないと思うようになった」と晴れやかな表情を見せた。最優秀女優賞を受賞した『天と地の間のどこか』のネスリハン・アタギュルは「映画のプロジェクトは私を大きく成長させてくれるもの。新しい仕事、チーム、シナリオは私にとって重要なこと。それぞれ違ったことを学ばせてくれます」と美しい笑顔と真摯なコメントで会場を魅了した。

また、観客と一体となった上映が話題を呼んだ『フラッシュバックメモリーズ 3D』に観客賞がもたらされた。松江哲明監督は「とても嬉しく思っています。上映そのものが、僕らスタッフの予想を越える特別な場になった。観客賞と聞く度に、(映画祭での)2回の上映を思い出せると思います」と誇らしげだった。

「今こそ、映画の力」をテーマに掲げた今回の東京国際映画祭。9日間の会期中には、各国の映画人が来場して作品や映画作りへの思いを熱弁。観客も素直に自分の意見、感想をぶつけていた。様々な政治問題を抱えるなか、厳しい現実を克服しようとする作品がグランプリを受賞するなど、映画が国境を越えて人々をつなぎ、まさに“映画の力”を感じられる9日間だった。【取材・文/成田おり枝】

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