08年ゆうばりファンタでグランプリ受賞の女性監督が新作披露

「ヒロインが自分自身を見つめる話なので、いかに集中力を持って観てもらえるかが難しかった」と、井上都紀監督
  • 「ヒロインが自分自身を見つめる話なので、いかに集中力を持って観てもらえるかが難しかった」と、井上都紀監督

2008年の“ゆうばり国際ファンタスティック映画祭”のオフシアター・コンペティションで見ごとグランプリを獲得した『大地を叩く女』の井上都紀監督。彼女の最新作にして初の長編『不惑のアダージョ』が今年のゆうばり映画祭・オフシアター特別上映にて上映され、映画祭3日目の2月28日の上映後には井上監督による舞台挨拶&ティーチインが開催された。

本作は神職に身を捧げてきた修道女が1つの老いを迎え、自分自身の生き方を見つめ直すというストーリー。

そもそもこのテーマを思いついたのは東京の人混みのなか──交差点でシスターが歩いていたときに監督の中に芽生えた感情だったと話す。

「彼女だけモノクロの世界で違う時間が流れていると感じたんです。とても印象的でした。そして、今年41歳を迎える主演の柴草さんがずっと音楽に身を捧げて生きている姿が、修道女と重なってみえたんです」

井上監督の第1作目「Mademoiselle Audrey」から出演している柴草玲はシンガーソングライターで、主演のほかに音楽も担当している。そして、本作のテーマについてこう紐解いていく。

「老いでも命でも必ずリミットが必ずあると思うんです。でも、多くの人はそれを考えないようにして生きていると思う。(そのリミットを)逆算したとしても上手く生きられるとは限らないけれど、それを頭に置いておくのと置かないのとでは違いがある。もちろん、自分自身が年齢を重ねるたびに“どう生きていったらいいのか……”という不安もあります。その不惑を40代の女性で描いてみようと思ったんです」

続いては映画に登場するシスターの設定について。

実際とは異なる部分があるが、それは敢えてテーマに添わせるためにフィクションにしたのだと語る。

「実際にシスターに話しを聞こうとも思いましたが、情報が入りすぎてフィクションとして描くことができないかもしれない……と思い、控えました。(映画のように)修道女がひとり暮らしというのは実際にはないことですが、今回は“自分の老いを1人で受け止める”ことを描きたかったので、ひとり暮らしで教会でオルガンを弾いている修道女という設定にしました」

また、教会での撮影の了承を得るまでには、かなりの苦労があったという。

「撮影前にはリサーチで礼拝やミサに通い、神父さんにも色々と話を聞きました。ただ、教会を撮影で借りるというのは本当に困難なことで……内容が内容なだけに好意的に迎えてくれるところは本当に少なかったんです」

観客からもあのシーンの意味するところは何だったのか? など、いくつも質問があがり、1つひとつ丁寧に応える監督。ゆうばりで発掘された新進気鋭のこの監督が今後どんな作品を生み出すのか楽しみだ。【取材・文/ライター新谷里映】

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