第85回アカデミー賞最もコケにされたのはトム・クルーズ!?

何故かトムにとばっちり
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『テッド』(12)の監督で、テッドの声優も務めたセス・マクファーレンをホストに迎えた第85回アカデミー賞は、視聴率アップという成功のうちに幕を閉じた。

しかし、「We saw your boobs」(おっぱい見ちゃった)ソングによる性差別、宗教差別、人種差別など、一部洒落にならないジョークに不快感を覚えた視聴者も多かったようで、ユーモアのセンスが違うイギリスベースのデイリー・メール紙の読者は、55%がセスのホストを支持しているものの45%が不支持という厳しい結果も出ている。一方アメリカのUsウィークリー誌の読者投票結果では73%が支持、不支持は26%と高い支持を得ているが、各誌や視聴者が取り上げている不快ネタについて取り上げてみた。

賞のしょっぱなからセスが攻撃したのは、アカデミー協会だった。ベン・アフレックが『アルゴ』で監督賞にノミネートされなかったことを知って最初に同協会を皮肉るツイートをしたセスらしく、「『アルゴ』、素晴らしい作品ですよね。アカデミーから知られてない監督が撮った作品です」と切り出し、会場の笑いを誘った。

その後は、『リンカーン』のダニエル・デイ=ルイスについて、「役に100%なりきるタイプなんですよね。リンカーンの撮影中は、携帯電話を見ても『それは何?』なんて言ったり、駐車場でドン・チードル(黒人俳優)を見たら、『開放してあげなきゃ』って思うんですよね」と紹介し、ダニエル本人は手で顔を覆って大笑いしていたが、黒人差別を不快に思った観客や視聴者もいたようだ。その後も、クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』について、「この映画は、ひどい暴力を受けている女性を助けるために闘う男性の物語です。クリス・ブラウンとリアーナのデートムービーですね」と紹介。2009年にクリスがリアーナに暴力を振った罪に問われていることを皮肉ったり、Fワードより過激なCワード満載の同作のシナリオについて、「メル・ギブソンのボイスメールを下敷きにしているんですよね(恋人から暴力で訴えられた際に、Cワードを連発したテープが証拠品として一部世間に露出した)」とメルをおちょくったが、会場からはまったく笑いが起こらなかったため、「あれ、皆彼の味方なのかな」と上手く交わした。

他にも、プレゼンターとしてメキシコ人のサルマ・ハエックを紹介する際に、スペイン語訛りがなかなか取れないサルマや、ペネロペ・クルスやハビエル・バルデム夫妻を引き合いに出し、「彼らが言っていることは良くわからないので、誰でもいいんだけど」と皮肉った。これは、第70回ゴールデングローブ賞にホストとして登壇した、オーストリア人のアーノルド・シュワルツェネッガーが、英語が上手くならない自虐ギャグとして笑いを取ったものだが、3人にとっては笑える話ではなさそうだ。

また、昨年『アーティスト』(12)で主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダンにスポットを当て、「アカデミー賞を受賞すれば多忙になって、この業界で一生、生きていくことができるんです。見てください、どこに行ってもジャンを見かけますよね。冗談ですよ。年老いたトーキー映画の俳優はどこにも行き場所がないんです」とジャンが演じた役と結びつけ、栄誉はありながらアカデミー賞を受賞しても将来が保障されない現状を皮肉った。

その他にも、『テッド』のマーク・ウォールバーグと熊のテッドがプレゼンターとして登場する場面では、映画の中でも辛口なテッドさながらに、「ここにはセックスが上手なカップルが一杯座っているけれど、授賞式の後どれだけの人たちがセックスをするんでしょうね」と長続きしないハリウッドカップルを皮肉ったかと思えば、「アフターパーティはどこでやるの?乱交パーティなんでしょ。行きたいな」とあたかも授賞式が終わった後には恒例で乱交パーティが行われているかのようにマークにしつこく問いただすと、マークが「ジャック・ニコルソンの家だよ」と応えて笑いを誘う場面もあった。

下ネタ満載の後は、テッドが、主演男優賞にノミネートされているダニエル・デイ=ルイス、ホアキン・フェニックス、アラン・アーキンについて「3人ともユダヤ人だよね。僕もユダヤ人なんだ。ハリウッドでずっと働き続けたいからね」と、ユダヤ人が優勢の映画界にジョークを送った。

「舞台裏で、ジェニファー・ローレンスに『主演女優賞には誰が選ばれると思う?』って聞いたら、『誰が勝っても負けても関係ないけど、メリル・ストリープがノミネートされてなくてよかった』と言ってました」などといった笑えるかわいいジョークも多かったが、アデルの紹介の際には、アデルの体重に言及する場面もあった。昨年、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11)で助演女優賞にノミネートされた、業界でも指折りの巨漢で知られるメリッサ・マッカーシーを「メスカバ」と評した映画評論家のレックス・リードの名を上げ、「ここにレックスを呼んで、アデルの評価をしてもらわなきゃ」と体型を皮肉るなど、本人も含めて気付かない人も多いジョークながらも、笑えない行き過ぎたギャグも多かった。

しかし今回最もコケにされたのは、トム・クルーズだったのではないだろうか。授賞式のラストで、ミシェル・オバマ婦人がスクリーンに登場して『アルゴ』の作品賞受賞を発表すると、ベンの、早口ながら感極まったスピーチに会場が静まり返った。そしてCMの後、セスとレッドカーペットでホストを務めたクリステンが、今回受賞できなかった人たちを励ます歌として「The Looser(敗北者)」を歌い始めたのだ。

「『アルゴ』が賞を取ったけれど、他の作品も素晴らしい。受賞できなかった人も元気を出しましょう」というコンセプトで、例えば受賞を逃したブラッドリー・クーパーに、「ブラッドリー元気を出して。『ハングオーバー4』があるじゃない」とか、『ハッシュパピー バスタブ島の少女』で最年少でノミネートされたクヮヴェンジャネ・ウォレスには、「今回は受賞できなかったけど、ノミネートされている皆が死んだら受賞できるわよ」と9歳という若さを使ったジョークで会場を和ませようとしていたはずだが、最有力候補といわれていたスティーヴン・スピルバーグ監督にとって、“ルーザー(敗北者)”という言葉はあまり快適なものではなかったはずだ。

そして最後は、「皆には才能がある。トム・クルーズには、彼の背の高さと同じだけの才能がね」と、最後の最後にその場に居ないトムをコケにして、授賞式の幕を閉じたのはなんとも後味が悪かった。【NY在住/JUNKO】

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