ラルフの声を演じた“七色の声を持つ男”山寺宏一さんにインタビュー!

主人公ラルフの声を演じた山寺宏一
  • 主人公ラルフの声を演じた山寺宏一

Q:山寺宏一さんは、ディズニー作品で、ドナルダックをはじめ、『アラジン』のジーニーや『リロ・アンド・スティッチ』(02)のスティッチなど、多数のディズニーキャラクターを演じられてきました。今回、ラルフ役のオファーをもらっていかがでしたか?

「もう山ちゃんは、さんざんやっているから良いや、って言われるんじゃないかと思っていました。それに、今までのディズニー作品だったら、他の人は出せないであろう声のキャラクターが多かったんです。ドナルダックとかスティッチとか、たいてい発声自体がやっかいなものが多くて。でも、今回はラルフ役ってことで、『これ、僕で良いんですか?』と思いました。というのも、ラルフのようなガタイの良いキャラクターを、主役としていただいたことはあまりなかったので。脇役とかならありましたが。最初は、パイロット版でも作るのかと思いました(笑)。オリジナルの声はジョン・C・ライリーさんで、僕は吹替でもやったことがないので、大丈夫かな?と思いましたが、本当にやり甲斐のある役で嬉しかったです」

Q:ラルフ役のキャラクターの印象はどうでしたか?

「難しかったです。ラルフは悪役ですが、ゲームの中で悪役を演じているだけで、今回はそのバックステージ、すなわち私生活を描くわけで。つまり、ゲームの悪役を演じるのではなく、悪役を演じる人を演じるってことだから。悪役にちょっと嫌気がさして、ヒーローになりたいと思っているけど、普段は乱暴者のキャラクターを演じているから、そういう部分も出さなきゃいけない。しかも、本当はとても優しく、ちょっとマヌケなところもある。いろんな面を持っているので、それをまとめて出すのに苦労しました。さらに今回、ヴァネロペという少女と出会って彼自身が変わるという、ラルフの成長物語でもあって。僕が素直に出した声は、そんなにラルフにぴったりの声じゃないのなら、役作りもしなきゃいけない。でも、ナチュラルでいたい。そういう意味で、かなり複雑でした」

Q:実際に、ラルフ役を演じてみていかがでしたか?

「今回、やってみて『それは違う。そういうふうには聞こえない』とか、厳しい駄目出しをされる場合もありました。その時、自分ではこんなに近付けているし、ちゃんとやっているつもりなのに伝わらないの?と、思ったりもしました。でも、後から冷静に考えてみると、そういうことか!とわかったりもするんです。そういうやりとりが楽しいですね。考えてみれば、僕はそういうことを生き甲斐にして生きているみたいなものですから」

Q:山寺さんは、“七色の声を持つ男”と言われていますが、いつもプレッシャーはありますか?

「期待されるのは良いことだと思うし、それに応えたいとは思います。でも、声の仕事って、そんなに完璧にできるわけがないんですよ。微妙なニュアンスまで僕に出せるのか?他の人がやった方がもっと良かったんじゃないか?と思う時も多々あります。それに、たくさんの候補の方がいらっしゃるなかで、僕にオファーしてもらったというプレッシャーもありますが、あまり考え過ぎないようにしています」

Q:仕事に向かう原動力になるものってありますか?

「期待されることが嬉しいので、やってやろう!とは思います。それに、こんなにたくさんの人が関わった素晴らしい作品を、吹替をした人間の力不足のせいで伝えられなかったらもったいないですし。僕らはそれを伝える仕事だし、そうした役割を担ったのなら、やれる範囲ではやらせていただきたいと思います。できる、できないは別として、役に近付けていく作業が好きなんでしょうね」

Q:コンプレックスがいっぱいのラルフについて、山寺さんはどう感じましたか?

「僕は今、本当にやりたいと思った仕事をやらせてもらっています。でも、なかなか良い役が来なかった時は、『本当の自分はこんなものじゃない』といつも思っていました。コンプレックスだらけですよ。周りも『山ちゃんって面白いから、テレビのバラエティーでもやれば良いのに』と言ってくれたりしたので、『本当は俺ってもっと面白いのに、チャンスがないんだ』とグチグチ言ってばかりいました。でも、その後、『おはスタ』をやらせてもらったり、ドラマの仕事を三谷(幸喜)さんがオファーしてくださったりして。その時、チャンスはいただいたんだから、できる、できないは自分次第だと思うようになったんです。たとえば、ドラマの仕事が続かなかったのは、僕に力がなかったからだと今はちゃんと思えるようになったし、誰かのせいにしなくなりました。志をぐっと高く持っているわけじゃないけど、ただ、どんどん良い作品に出会いたいと思ってます。とはいえ、基本的には怠け者なんですよ。与えられたら一生懸命考えますけど、来なかったら何もしやしない。だから、『俺はもっとこうなりたい』と思って頑張るラルフを見習わなければいけないと思いました」

Q:ラルフの成長を見ていて、胸が熱くなりました

「ラルフは、ヴァネロペという守りたいものに出会い、新たな生き甲斐を獲得したわけです。たとえ自分を犠牲にしてでも、一番大事なヴァネロペに嫌われても、彼女のために何かをする。自己犠牲の精神ですよね。そして彼は、最終的に、本当のヒーローになるんです。みんなにちやほやされ、良い格好をしたり、何か賞をもらったりして、『いつもありがとう』と言われるだけがヒーローじゃない。もちろん、それもヒーローですが、実はヒーローってもっと身近なところにいるんだなと。気付かれないけど、誰かのためになっている人はいっぱいいると思います。本作は、ヒーローになりたいラルフの話ですが、本当のヒーローって何か?という話でもあります」

【取材・文/山崎伸子】

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