『プラチナデータ』の監督「逃走犯・二宮和也を、リアルにボロボロにしたかった」

『プラチナデータ』の大友啓史監督
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東野圭吾の同名小説を、二宮和也や豊川悦司を迎えて映画化したSFサスペンス『プラチナデータ』(公開中)。メガホンを取ったのは、キレのある時代劇アクションで『るろうに剣心』(12)を大ヒットさせた大友啓史監督だ。本作では、二宮や豊川たちの緊迫感と躍動感にあふれるリアルなアクションを活写した。大友監督にインタビューし、撮影秘話を聞いた。

『プラチナデータ』の舞台は、最先端のDNA捜査により、犯罪の検挙率100%、冤罪率0%の社会が到来間近となった近未来。警察庁でDNA捜査システムを作り出すも、連続殺人犯の嫌疑をかけられた天才科学者・神楽龍平(二宮和也)は、捜査一課の浅間玲司刑事(豊川悦司)から追われる身となる。

当然、神楽役の二宮は、多勢の警察官から追われ、疾走し続ける役どころだ。大友監督は「今回想定されたような逃亡劇は、日本のロケーション環境で、しっかりアクションにはめ込んでいくのは相当ハードルが高い」と語る。「台本ではアクションについて細かく書かれてはいないんですね。そうはいっても、バイクで逃げ切れなくなり、追いつめられていくことを考えると、お決まりのように林を抜け崖に突き当たり、そこから飛び降りて滝にのまれるという(笑)、どこかで見た決着点を想像してしまったりする。なんとなくハリウッド映画の逃亡劇って、そんなようなパターンが多い気がしません?最後は広大なアメリカ大陸の自然や、文明の力が及ばない何かに助けられたり、ヒントを得たりしてなんとか逃げのびる。でも、日本は国土が狭いからそれができない。考え方を変えなければいけないんですね(苦笑)。人が落ちて流される水量と川幅がある濁流の滝なんて、関東近辺には、そうそうありませんから。身一つで、しかもこれだけ監視カメラがあるという設定では、そんな滝がありそうな九州や北海道までは、簡単に逃げ切れませんしね」

まさに監視カメラに追われ続けるという設定が、アクションの縛りとしては大きかったようだ。「逃げる側の心理を考えると、当然ですが、見え方としてどんどん監視カメラがないところに神楽を追いやる必要があった。たとえば広い工場施設だとすると、当然企業秘密もあり、入口で出入りする車を管理し、その通行を制限しますよね。となると、工場内では、ラインを確認する監視カメラ以外は、特に敷地内の路上では、流石にそんなに設置されていないだろうという想定ができる。そういった裏を取りながら、関東近郊で設定に見合ったロケ地を探していく。改めてわかったことなんですが、日本は街中を逃げる現代物の激しいアクションって、世界一やり辛いと思います。撮影許可を申請しても、交通事情を考えるとなかなか許されることはないですからね。ですから、ロケ地を見つけたら、むしろその場所に合わせて、そこで起こり得るナチュラルなアクションを考えていく。アクションのためのアクションではなく、ここでのアクションにならざるを得ない状況と、その場所だからありうる必然性のあるアクションを作っていくしかない」。

とにかく逃げて逃げて、逃げまくる神楽。「天才科学者の神楽、つまり演じる二宮和也がボロボロになり、汚れていく。それをリアルに活写するというのがテーマでしたね」と語る大友監督。ヒロイズムが光るアクションではなく、生々しく必死に逃亡する男の姿を映したかったと言う。冷却パイプに足を取られ、あわや転落しそうになるシーンなどは特にヒヤッとさせられた。「あのシーンでは、二宮くんもさすがに『これはちょっと怖いよね』って言っていましたね(笑)。でも、あそこをスタントにすると、今のお客さんは目が肥えているから、切り替わるカットですぐにわかってしまう。だから実際にやってもらったんですね。もちろん補助となるワイヤーをつけるなど、安全には十分配慮して望んでますからご安心を(笑)」。

確かに、予定調和にアクションをビシっと決めていくような流れではない。「あんな生活をしている神楽だから、運動神経が良いわけがない(笑)。だからこそ、一見無様に見えかねない等身大のアクションも入れて、無駄にハラハラさせてみようかなと(笑)。アクション担当は『GANTZ』(11)でも二宮くんと仕事をした下村(勇二)くんだから、ちょっと無理な要求もしてくれた。アクション部はアクション部でアイディアを出してくれるから、どんどん面白くなるんですよね。危ないこともやりながら、神楽をボロボロにしていきました」。

そんな二宮を、大友監督はこう賛辞する。「二宮くんは、10代の頃から訓練されていますよね。何万人の前で歌ったり踊ったり、スポットライトを浴びることが日常になっている人ですから。だから、今回は特に彼を盛り立てようとする必要はなかった。実は根っから熱い人なんだと思いましたから。特に演技に対しては。それにずっと芸能界で育ってきてますからね、自分が育ってきた現場に対する、並々ならぬ愛情があるんですよね。スタッフが一生懸命やり、良いセットを作り、情熱を持ってやっていると、その熱を感じ、受け止めていくタイプだと思います。こちらがやるべきことをやって迎え入れてやれば、自然に彼自身が太陽として現場が回っていく。そこが、彼ならではのプロフェッショナルとしての在り方なんでしょうね」。

クールな天才科学者から暗転し、ズタボロの逃亡者に変貌していく神楽を演じた二宮和也。そして彼を追う側を演じた豊川悦司。その化学反応を存分に引き出した大友監督は、本作でまた株を上げそうな予感がする。【取材・文/山崎伸子】

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