『プラチナデータ』が二宮和也&豊川悦司の“ラブストーリー”になった理由は?

『プラチナデータ』の大友啓史監督
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東野圭吾原作のSFサスペンスを、二宮和也主演で映画化した『プラチナデータ』(公開中)。監督は『るろうに剣心』(12)の大友啓史だが、舞台挨拶や会見で本作のことを「追われる者と追う者の“ラブストーリー”」だと公言した。確かに、逃亡者役の二宮と、刑事役の豊川との間には、物語が進むに連れて独特のパッションが流れていく。大友監督にインタビューし、撮影秘話を聞いた。

本作の舞台は、最先端のDNA捜査により、犯罪の検挙率100%、冤罪率0%の社会が到来間近となった近未来。その捜査システムを手掛けながら、連続殺人犯の嫌疑をかけられた天才科学者・神楽龍平(二宮和也)は、捜査一課の浅間玲司刑事(豊川悦司)らに追われ、逃亡していく。

大友監督は、ふたりにどんな役作りをリクエストしたのだろうか?「二宮くんには、二重人格について、スイッチのオンオフはやめようねってことくらいかな。僕が描こうとしているものをわかってもらおうと、絵コンテやストーリーボードを見せ、資料も渡しましたが。豊川さんには少し痩せてくださいとお願いしました。その頃大河ドラマの『江 姫たちの戦国』を終え、ゆっくりしていらして。サーフィンが趣味の方ですからね、太陽と海風の匂いを感じるというか(笑)、とても健康的な感じになっていたので『ちょっと締めて、やさぐれていただいた方が、浅間の雰囲気になると思います』とお願いしたら、びっくりするくらいあっという間に痩せてくださって。「えっ?そんなに簡単にそこまで痩せちゃうんですか」って衣装合わせの時驚いたら、「だって監督が痩せろっていったんじゃないですか」と(笑)。ま、そんなやり取りを重ねながら。でも、おふたりは勘が良いので、すぐに僕のやりたいことをわかってくれましたね」。

大友監督が本作をラブストーリーと読み解く理由が気になるところだ。「浅間が全く自分と考え方が違う神楽と出会い、彼を犯人として疑いながら、どんどん神楽の内面を掘り下げていく。その後、神楽が犯人ではないことを突き止め、一方追いつめられた神楽は、浅間を頼りにするしかない状況になっていって。結果、寄り添いながら、お互いを理解し合っていくという物語ですからね。二人の距離感の変化を考えると、真面目な話、ラブストーリーに近いと思うんですね。ラブストーリーも、初対面の印象が良くない方が盛り上がるわけでしょ?よく美人は3日で飽きると言うじゃないですか(笑)。え?という意外性が関係を持続させたり、変化させたり、緊張感をもたらしていくんです。そこはオーソドックスなラブストーリーの構図と一緒で。ある種、ふたりが手を携え、自分たちの恋路を邪魔するやつらに戦いを挑んでいく話かなと(笑)」。

大友監督の刑事という職業のとらえ方も興味深い。「僕はいろんな刑事さんに話を聞きましたが、刑事って、罪を犯してしまった者の心の奥底を理解していく仕事ですよね。いくら憎むべき殺人を犯した人でも、犯罪者のバックグラウンドを調べていく内に、どこかで彼と同化しなければいけない瞬間があるようで。こいつはひどいことをしたけど、それでも人間なんだと。一縷の望みを託して、対象にアプローチしていく仕事なのかもしれない。だから人の心にものすごく通暁し、情深く相手に接しながらも、最終的にはその情を切り離し、社会正義のために犯罪者に手錠をかける仕事。熱いものを抱えながらも冷静なんですよね。本当にプロフェッショナルでなければ続かない仕事、というか。特に浅間はそういうタイプ。豊川さんは『犯人に告ぐ』(07)でも刑事役をされていますが、そういう刑事としての奥深い職業堅気をちゃんと押さえて、実に味わい深く演じてくれましたね」。

神楽役の二宮については、浅間たちに追われ、少しずつボロボロになっていく様を活写していった。「特殊解析研究所という警察や国家から保護されたところにいる裸の王様みたいな神楽が、そこを出た時に初めて身ぐるみをはがされ、町の汚れた空気や喧騒にまみれていく。それが俺的には面白いと思いました。アイドルをちゃんとそこに落としこんでいく。二宮くんもそれをちゃんとわかっているから、逃げまくってだんだんボロボロになっていき、無精髭も生やしてくれた」。

中盤で、神楽が死んだかもしれないと思われるシーンで、浅間が呆然として膝をがくっと落とすのは豊川のアドリブだそうだ。「浅間が『お前に聞きたいことがあるんだ』というセリフも、実はああいう芝居になるとは思わなかった。ニュアンスとしては、もう少し追い詰めた言い方になるかと思っていたんですね。それが、相手を包むような、すべてを受け止めるような優しさというか、その覚悟が感じられる芝居になっていた。浅間刑事は、独特の優しさと包容力を持っている人。それは、豊川さんの演技に触れて、日々発見し、一緒に作り上げていったキャラクターですね。二宮くんもそうだけど、やっぱり良い役者って一緒に仕事をしていて発見と刺激がある。監督っていう立場上、今回の題材は他に考えることが死ぬほどあったので、大事な役どころをきちんと押さえて、それをさらにブラッシュアップして表現してくれるふたりとご一緒できて、本当に幸運でしたね」。

大友監督作ということで、多種多様のダイナミックなアクションは折り紙つきの『プラチナデータ』。でも、それ以上に、神楽龍平と浅間刑事という反発し合っていたふたりが、次第にシンパシーを感じていくという濃密な関係性や、背景を取り巻く人々のサスペンスフルなドラマも見応えがある。本作を見て、改めて二宮和也と豊川悦司の役者としての力を感じ取ってほしい。【取材・文/山崎伸子】

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