マリオン・コティヤール×ジャック・オーディアール監督を直撃!凛とした美しさの秘密とは

マリオン・コティヤール×ジャック・オーディアール監督を直撃!
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凛とした美しさにため息がこぼれる。マリオン・コティヤールほど、“華のある”という言葉がしっくりくる女優もなかなかいないだろう。『エディット・ピアフ 愛の讃歌』(07)では、ピアフの光と影を演じきり、世界中を魅了。見事、第80回アカデミー主演女優賞に輝き、その確かな演技力をも証明した。そんなマリオンが最新作『君と歩く世界』(4月6日公開)では、両脚を失った女性という難役に挑んでいる。そこで、来日したマリオンとジャック・オーディアール監督を直撃!

本作でマリオンが演じるのは、事故により両脚を失ってしまうシャチの調教師ステファニー。絶望に苛まれた彼女が再び未来へと這い上がろうとする姿が、圧倒的なリアリティをもって描き出される。チャレンジの多い役柄となったが、演じることに不安はなかったかと尋ねると、マリオンは「役柄に対して、チャレンジとはいつも思わないのよ」と笑顔を見せた。「私にとって演じることは、未知のもの、今までやったことのないことを探検していくこと。オーディアールのような素晴らしい監督と一緒なら、特別なアドベンチャーになるという予感があったわ。今回に限ったことではなくて、『この役にふさわしいだけの力量を見せられるのかしら』という不安は、常につきまとうもの。でも今では、それも役作りの大事なプロセスの一部になっているのよ」。

オーディアール監督は、『預言者』(09)など濃密で男くさいノワールな世界観に定評があるフランスの名匠だ。監督は「マリオンは独特な表現方法を持っている女優だ。人に感動を与える演技ができるし、とても美しいしね。とりわけ存在感を感じたのは、セックスの前と後のシーン。コミカルな部分も感じられる素敵なシーンになったよ」と、マリオンを隣りに照れながら絶賛する。

続けて、「今回はまずラブストーリーを撮りたかったという思いがあったんだ」と述懐するが、力強い快作を送り出してきた監督らしく、本作も甘いだけのラブストーリーに留まらない。人間の肉体と本質に迫り、生々しいまでの“生きる力”をスクリーンに刻み付けた。「原作はクレイグ・デイヴィッドソンの短編集だ。デイヴィッドソンの世界で描かれるのは、都市に住むプロレタリアートなんだ。僕には、彼の描く経済的危機にある登場人物というのがとても奥深いものに思えた。だからこそ今回は、危機的な社会状況でのラブストーリーを作ってみたかったんだ」。

オーディアール監督の独特な視点は、ステファニーの心を開く男性アリの人物像にも反映されている。匂い立つほど動物的で、本能のまま生きるアリ。恋の相手となるには、あまりにも荒々しく、不器用な男性だ。マリオンは、ステファニーがアリに惹かれた理由をどう理解したのだろう?「アリはステファニーの本質的なエッセンス、真髄を見てくれる男性だったと思うの。彼女の外見や、もう素敵な調教師ではなくなってしまったこと、そういったことを全く排除して、彼女が今ある状態を、何のジャッジをすることなく見てくれる人。ステファニーは、そういうふうに見られることに慣れていなかったのよね。女性である前に、人間として扱ってもらえたこと。そのことにものすごく心を動かされて、彼女自身もそうやって人間を見つめることの大切さを学んでいくの」。

アリとの出会いによって、閉塞感から抜け出していくステファニー。その美しさは、太陽や海のきらめきのように輝き、スクリーンを眩しいほどの光で満たす。マリオンの笑顔からも人生の充実が感じられるが、これまでに「殻に閉じこもってしまった」という経験はあるのだろうか。マリオンは「私も閉じこもった気持ちになった時もあるわ。でも、それは私自身が持っている性格の強さで克服してきた。私は、何かを発見したいとか、前進したい、ダイナミックに行動したいという気持ちをいつも持つようにしているの。閉ざされた状況に悶々とすることなくね(笑)。そういう性質のおかげで前を向けるし、あともう一つ大事なのは、やっぱり愛だと思う」と微笑んだ。

一方のオーディアール監督も「僕は40歳になるまでは、本当にメランコリックで自殺衝動もあるような人間だったんだ。まさに、閉じ込められているという状況だった。でも映画を撮るようになって、1日3人の人に会うようになってから変わったんだ。映画を撮ることが自分を外に出す原動力になって、色々なことが開けて、そして色々なことが見えるようになったんだよ」と、晴れやかな表情で胸の内を明かしてくれた。

マリオンの凛とした美しさ。その秘密は、前を向こうとする強い力だ。その力はステファニーに惜しみなく注がれた。ラブストーリーのエッセンスを、心揺さ振るヒューマンドラマに仕上げたオーディアール監督の手腕にも驚くばかり。是非ともスクリーンで、“生きる力”を感じ取ってもらいたい。【取材・文/成田おり枝】

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