宮藤官九郎、Hな妄想の演技で体を張った平岡拓真をねぎらう

『中学生円山』の宮藤官九郎監督と平岡拓真にインタビュー
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人気脚本家・宮藤官九郎が『真夜中の弥次さん喜多さん』(05)、『少年メリケンサック』(09)の次に手掛けた3本目の監督最新作が『中学生円山』(5月18日公開)だ。現在、大人気のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」など、話題のドラマや映画の脚本を多数手掛けてきた宮藤だが、「どうしても作りたかった」と力を込めて放ったのが本作である。宮藤監督と、タイトルロールを演じた平岡拓真にインタビューし、劇中のキーワード“自主トレ”の舞台裏について話を聞いた。

平岡が扮する円山克也は、毎日エッチな妄想にふける中学2年生の男子だ。ある日、一人のシングルファーザー(草なぎ剛)と出会い、彼との交流を通じて成長していく。自主トレとは、克也が前屈してHな目的を達成するためのトレーニングだ。体が柔らかくなっていくという設定のため、宮藤は平岡に、モンゴルのサーカスで用いられるコントーションという柔軟芸の訓練を受けさせたという。「もともと体が柔らかい人を選ぶつもりだったけど、ちゃんとした専門のトレーナーもつけてもらったんです。平岡くんはすごく頑張ってくれました」。平岡は、撮影前はもちろん、撮影中もずっと訓練を続けたそうで、「最初は痛いし、ひたすら曲げられるだけで、本当に柔らかくなるの?と思っていたけど、最後にはエビ反りで、足の爪先が頭のてっぺんに付くくらい柔らかくなりました」と笑顔で語った。

宮藤は、人前で裸になり、中学生男子の妄想を自ら体現した平岡の苦労を心からねぎらう。特に見せ場は、公然と自主トレの成果を披露するシーンだ。「あの時は一番『頑張れ!』と思いました。エキストラは実際にレスリングをやっている子たちでしたが、裸の平岡くんが背中を曲げた時、ちょっとニヤニヤして笑ったんです。その時、『これはふざけてやっているんじゃない。この映画のできが左右されるくらい重要なシーンなんだ。ちゃんとやってくれ!』と言ったんです。あのシーンは克也にとって、一貫してやってきたことの結果を見せる唯一のシーンで、その大切さを言葉じゃなく、現場のムードで伝えなきゃいけないと思いました」。

平岡もそのシーンを思い出しながら、「レスリング部の子とかに馬鹿にされてムカついたというより、この場の雰囲気を察してくれ!止めてくれ!と思いました。また、そこには女子部員役の子も10人くらいいて。その撮影は後半で、自分自身はもう吹っ切れていたはずなのに、ちょっと恥ずかしかったです。でも、大切なシーンだと言われていたので、頑張りました」。

宮藤も優しく微笑みながらうなずく。「その時、こういう映画の仕事をしている大人たちがいるってことを、子供たちに覚えて帰ってほしいなとも思いました。くだらないことも、一生懸命に貫いてやっていくと、いつしか自分にとってはくだらないことではなくなっていくと。あのシーンで、舌が届くか、届かないかといえば、届いて感動してほしかったんです。下品なもの、くだらないものと決めつけているものを、いかに感動する側に持っていくかという象徴的なシーンでした」。

最後に宮藤は、真剣な眼差しで本作への思いを口にした。「邦画は今、俳優主導、俳優ありきの作品がどんどん増えていっています。そういう意味では、映画の業界でずっとやってきたわけではない僕みたいな人間が、自分の好きな企画を通して監督することは、すごく大変です。でも、できないことではない。今回は、自分の本当にやりたいことをすごく純粋な気持ちで作りました。そのうえで、もしも本作がちゃんと評価されたら、ちょっとエポックなことだと思います。僕には行儀の良い作品は作れないけど、それでも良いのなら、この先も映画を作っていきたいと思えた作品です。だから、生半可な気持ちで演出したら、後悔すると思ったから、平岡くんに対しても厳しくしたんです」。

平岡も照れながら、「監督が妥協したら駄目だって言っていたけど、ちゃんと監督の指導を受けていなかったら、僕もすごく後悔したと思います。映画を見て、本当に納得できたから、結果はすごく良かったです!」。達成感に満ちたふたりの表情に心を揺さぶられる。『中学生円山』は彼らの情熱が実を結んだ熱い青春映画となった。【取材・文/山崎伸子】

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