英雄、色を好む!『コン・ティキ』の冒険家の息子が語る父の素顔!

『コン・ティキ』の冒険家の息子トール・ヘイエルダール・Jr.を直撃!
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1947年にイカダのコン・ティキ号に乗って、ペルーからポリネシアまで8000kmを航海するという旅に出た冒険家トール・ヘイエルダール。第85回アカデミー外国語映画賞にノミネートされた『コン・ティキ』(6月29日公開)は、胸躍る男のロマンに満ちた快作だ。本作のキャンペーンで、息子のトール・ヘイエルダール・Jr.が来日。自身も人類学者である彼に、偉大な父親の足跡と、知られざる素顔について話を聞いた。

完成した映画を見たトール・ヘイエルダール・Jr.は、「僕は身内なので、コン・ティキ号の冒険については知り尽くしていたけど、こうやって映画化され、一観客の立場に立ち返って見てみたら、妙に感動したよ」と、その仕上がりに太鼓判を押す。「生前の父親も、事実を忠実に描いてほしいと希望していたが、僕が知る限り、実際に起こったことがそのまま映画で再現されていたので、とても満足している」。

コン・ティキ号のクルー6名は、5人のノルウェー人と1人のスペイン人で構成される。ヘイエルダールは、その生涯で色々な国の人々と冒険の旅に出ていたようで、そのクルーには日本人もいたという。「父は、どんどん国際派の冒険家になっていったよ。文化的、民族的、宗教的、政治的背景などが全く異なる、時には言葉さえも通じない人まで乗船させ、一丸となって一つのゴールを目指したんだ。日本人では、小原啓さんというカメラマンが同行したことがあるよ。彼はにこにこしていて、すごく良い人だったという記憶がある」。

冒険には困難がつきものだが、実際に激しい嵐に遭遇したり、うまく海流に乗れなかったり、仲間内でもめごとが起こったりと、様々なトラブルに見舞われる。でも、ヘイエルダールはそれらを独自のリーダーシップで乗り越えていく。「父は映画で描かれているとおり、とても頭が良い人で、上に立つタイプの人だったし、自分にとっては最高の父親だった」と称える。でも、その後に「ただし、夫としては失格だったかも」とぼやく。

「父は3回結婚して、3回離婚している。だから、子供ながらも側で見ていて、母親が一番苦労したことを知っている。結婚には向かないタイプだった。ああいう何かの分野でトップに立って成功する人は野心があり、つい自分の研究に没頭してしまう。自分勝手で周りを顧みないところがあるから、どうしても家族が犠牲になるんだ」。

どうやら、ヘイエルダールは「英雄色を好む」を、地で行く人だったらしい。「父は女関係にだらしなかった。3人の妻がいたけど、別れて次の妻と再婚する間にも、内縁の妻がぞろぞろいたよ。でも、僕は現在の妻と結婚して45年、妻一筋だ。ある時、父に質問されたんだ。『お前はなぜ、そんなに長い間、一人の女と結婚生活を続けられるんだ?僕には理解できないよ』ってね(笑)。そういう意味では、僕とは対照的な人だった」。

とはいえ、父親と同じ人類学者としての道を志したことで、改めて父親に対する見方が変わったという。「同じ分野に進んだことで、新たに父親とつながることができた。そして今度は同僚として、同じ分野の研究者として、互角の立場になれたことで、お互いに敬意を抱けるようになり、親子の関係が修復できたから、とても良かったと思う」。

最後に彼は、現代人に向けてこう訴えかける。「自分がやりたいこと、ひらめきがあれば、それに従い、何かことを起こしてみるのが大切だと思う。もちろん、自分が目指す道があるのなら、その筋のプロから意見を聞くことは大切だけど、あくまでもそれは参考にし、最後の決断を下し、行動を起こすのは自分なんだということを忘れないでほしい。受け身のタイプの娯楽が蔓延している昨今だけど、世界にはまだ冒険できる場所はあると思う。何もイカダに乗って太平洋を渡るだけが冒険ではないし、たとえば普通に近くの山にハイキングに出かけるだけでも、何かあるかもしれない。まずは、積極的に自分から動いてみてほしい」。

夢と希望を乗せ、大海原に繰り出すコン・ティキ号。偉大なるトール・ヘイエルダールの勇姿を見れば、やりたいこと、叶えたい夢に対して尻込みしている人に、一歩踏み出す勇気を与えてくれそうだ。【取材・文/山崎伸子】

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