第67回カンヌ国際映画祭、パルム・ドールは『Winter Sleep』

パルム・ドールに輝いたヌリ・ビルジェ・セイラン
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カメラ・ドール部門審査員長ニコール・ガルシアと共に授賞式の舞台にジル・ジャコブ会長が登壇。満場のスタンディング・オーベレーションに迎えられ、そしてゆっくりと送られていった。長年カンヌ映画祭を率いていったジャコブの引退で一つの時代が終わったのだ。今回はジャコブ会長最後の映画祭という意味でも記憶されることだろう。

カメラ・ドールは『Party Girl』の監督3人に。カメラドール部門審査員長のニコール・ガルシアと共に登場。ニコールは名物司会者アンリとしっかりと握手を交わす。脚本賞は『Leviathan』のAndrey ZvyagintsevとOleg Negin。

審査員賞は今回の最高齢と最年少の2人に。グザヴィエ・ドランの『Mammy』とジャン・リュック・ゴダール『Adieu au Langage』だ。グザヴィエ・ドランは25歳。『Mammy』は初コンペ入りながら今まで他の部門で賞を取りまくってきたカンヌの申し子の一人である。授賞式ではさすがに涙ぐんでいた。

監督賞は『Foxcatcher』のベネット・ミラー。男優賞は『Mr. Turner』で画家ターナーを演じたティモシー・スポールに。コンペ一本目の上映だったのですでに帰国していたのを呼び戻された。「脇役の私をここに連れて来てくれたマイク・リーに感謝します」と声を詰まらせつつコメント。これはマイク・リーのものでもあるとトロフィーを撫でた。

女優賞は『Map of Stars』のジュリアン・ムーア。グランプリに選ばれたのは養蜂家一家の貧しく厳しい生活を思春期の長女の視点から描く『The Wanders』のAlice Rohrwacher監督。

そしてパルム・ドールに輝いたのはすでに二回のグランプリを経験しているヌリ・ビルジェ・セイラン。受賞作の『Winter Sleep』はカッパドキアでホテルを経営する元俳優の物語である。3時間16分という大作だが、カンピオン審査員長曰く「見始めたら引き込まれて時間を忘れてしまった」とのこと。ヌリ監督は、 ようやく、という気持ちなのかいつもはあまり見せない笑顔を見せていた。

あらためて、受賞結果は下記の通り。

パルム・ドール  『Winter Sleep』ヌリ・ビルジ・ジェイラン  トルコ

グランプリ 『The Wonders』Alice Rohrwacher   イタリア

監督賞 『Foxcatcher』ベネット・ミラー アメリカ

審査員賞 『Mammy』グザヴィエ・ドラン カナダ

『Adieu au Langage』ジャン・リュック・ゴダール フランス

脚本賞 『Leviathan』Andrey Zvyagintsev,Oleg Negin    ロシア

女優賞 『Map of Stars』ジュリアン・ムーア    カナダ

男優賞 『Mr. Turner』ティモシー・スポール イギリス

芸術貢献賞 『Mr. Turner』の Dick Popeの撮影に対して   イギリス

というわけで第67回カンヌ国際映画祭授賞式が終わった。私の好き嫌いは別にしてなるほどそう来たかという感じはする。ウェルメイドな作品とアーティスティックな作品のバランスが取れているという感じだ。

残念ながら河瀬作品は賞にもれてしまったが、もう一人の女性監督作品がグランプリを獲得。31歳のイタリア人だ。ただしカンピオンは当然ですが審査においてジェンダーは関係ないと言い切った。

カンピオンは『Mammy』が好きとも言っていたが、パルムはトルコのヌリ・ビルジ・ジェイランの『Winter Sleep』へ。才能のほとばしりより重厚な人間観察をとったというところだろうか。もっとも今回の受賞者たちは、いつも自信たっぷりなドランが感極まったり、哲学者然としたヌリが満面の笑みを見せたりしたのををはじめとして、本当に受賞を喜んでいるという感じが伝わって来て、なんか新鮮だった。

文学的哲学的なパルム、詩情と社会性と少女の成長譚のグランプリ、俳優から今までにないものを引き出した監督賞、新しい才能のきらめきと50年間前衛にいる永遠の反抗児の審査員賞、ロシア文学的な脚本賞、熱演し成り切り演技の俳優賞。一言で言うとこんなかんじ、である。

ともあれ、今年のカンヌ映画祭はこれで幕を閉じたのだ。カンヌ記者会見の名物司会者アンリの言葉を借りれば「これでおしまい。あとは心いくまで酔いつぶれてください。では。また来年」。【シネマアナリスト/まつかわゆま】

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