「花子とアン」で注目の俳優吉田鋼太郎 「目標も、死ぬまでにやりたい役もない」

上演中の舞台「カッコーの巣の上で」の稽古場にて撮影
  • 上演中の舞台「カッコーの巣の上で」の稽古場にて撮影

2013年は「カラマーゾフの兄弟」(フジ系)や「半沢直樹」(TBS系)、「七つの会議」(NHK総合)、そして今年も連続テレビ小説「花子とアン」、「MOZU~Season1~百舌の叫ぶ夜~」(TBS系)、「ロング・グッドバイ」(NHK総合)などに出演している最注目俳優・吉田鋼太郎。最近、彼をテレビで見ない日はないのではないだろうか。お茶の間では「凄みのある人」として印象深い視聴者が多いと思うが、自身はいたって気さくな人柄だ。そもそも役者を目指したきっかけは何だったのか。

「高校の夏休みに、英語の先生にもらったチケットがたまたまシェイクスピアで。とにかく生身の人間が舞台の上で何かをやっている、というのを見るのが初めてだったんです。その感動が大きくて。1枚のチケットが人生を変えた、ということになりますよね。その後、大学に入学したので、将来的には就職ということも頭にありました。でも、どう考えても毎朝決まった時間に起きて、満員電車に乗って、っていうルーティンの生活が実感として沸かなかったし、その才能がない、ということを感じ始め、そんな中で大学のシェイクスピアをやっているサークルに入って、何となく流されていった感じですかね。大学に入って最初の5月の試験も僕、受けれませんでしたから。サークルで公演があって、先輩に『これから舞台の仕込みなんだから、試験なんて受けなくていいんだ』って言われて、『あ、そうですか』って(笑)」

その後、シェイクスピアシアターを経て、蜷川作品で活躍を遂げていくが、その間に意外にもミュージカル色の強い、劇団四季に入団していた。

「僕は、授業をやっているよりも芝居をやっている方が楽しいな、と思っていて。劇団四季にも行きました。四季がやるミュージカルとは違うストレートプレイに興味もあって。でも、四季がちょうどミュージカル中心の路線に変更する時期だったので、半年で辞めてしまった。あと、すごい厳しかったんです。朝7時から掃除、その後、クラシックバレエのレッスン、と勤め人より厳しい(笑)。あれ、俺何でこんなことしているんだ?って思ってしまい。その後、シェイクスピアシアターに入団させてもらいました。最初に見た作品が別の作品だったら、また違ったのかもしれないですね。」

悪の限りを尽くした父親役を演じた「カラマーゾフの兄弟」(フジ系)で、バイオレンスな印象を残し、「MOZU~」でも暴力的な男としてかなりのインパクトを与え、視聴者にとって吉田は、相当「凄みのある男」だろう。

「シェイクスピアには、王様だとか人を殺す役が多いですよね。それらを巨匠・蜷川幸雄さんと一緒に作り上げていくわけですから、殺気すら持ち込まないと成立しない世界だったんです。35年くらいやっているので、染み込んでいるのかもしれないです。自分の中では、凄もう、とか怖く演じようとかは思ってないです」

俳優・小栗旬との友情はもはや有名な話だが、吉田いわく「似ている」という。

「小栗とは縁がありますよね。似ているところがあるんだと思います。芝居の作り方とか。それに彼は堅苦しい人ではないので、肩肘張らずに付き合える。蜷川さんがよく『俳優は演技で評価されればいいわけで、私生活は何したっていいんだよ』とおっしゃるんです。僕らはそれを鵜呑みにしたところはありますよね(笑)。」

その共演舞台「カッコーの巣の上で」。精神病院を舞台にした本作は、ジャック・ニコルソン主演の映画では、重い場面も多いが、舞台ならではのすがすがしい作品になっていると言う。

「とってもエンターテインメントな作品です。とにかく精神病患者のみんながチャーミング。映画ではリアリティーを出さないといけないので重苦しいんですよね。でも舞台は全然そんなことがなく、デフォルメして演じるわけですから、クスっと笑って見られるんです。合間合間に考えさせられるようなところがあるんですけど、それまで口数が一番少なかった、インディアン(山内圭哉)がそこから一人羽ばたいていくという、素晴らしい結末が待っているので、最終的にお客さんは、希望に満ちあふれた気持ちで帰っていけるかと。また、山内圭哉がインディアンらしいんですよね(笑)」

舞台、映像と広く活躍しながら、自らを「遅咲き」と話す吉田に、今後やってみたい仕事や役柄はあるかを聞くと、意外にも「ない」と即答。

「目標も、死ぬまでにやりたい役もないです。僕は、シェイクスピアの本拠地・イギリスで、シェイクスピアの主役をやりたいな、という夢があったんです。それは普通にあり得ないことで、だから夢だったんです。でも、それが蜷川さんの舞台『タイタス・アンドロニカス』(2006年)という作品で主役をやらせていただき、ふと叶ってしまって。あ~、ひとつ夢が叶っちゃったな、と。そこから冷静になりました。俳優という仕事は人前にさらされる職業だと思うので、役だけでなくその人自体がちゃんとしてないとダメなんだな、と。無理してでもそうならないと、そうしないと、と思っています。与えられた場でいい仕事をするということ。そして、人間として魅力的な人物であることが何より大切だと思いますね」

よしだ・こうたろう=1959年1月14日生まれ、東京都出身。多くの舞台にて活躍。主な映像作品に「半沢直樹」(2013年TBS系)、「七つの会議」(2013NHK総合)など。10月からは、舞台「ジュリアス・シーザー」が上演
連続テレビ小説「花子とアン」
毎週月~土朝8.30-8.15ほか NHK総合ほか
舞台「カッコーの巣の上で」~8/3(日) 東京芸術劇場プレイハウスにて上演中
(7/22(火)、28(月)は休演)
8/6(水)~17(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急ホールにて上演

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