『スラムドッグ〜』の衝撃的“糞まみれ”シーンの真相は!?

いたずらでトイレに閉じ込められる(子供時代の)ジャマール。ここから脱走を図る!?
  • いたずらでトイレに閉じ込められる(子供時代の)ジャマール。ここから脱走を図る!?

2008年度アカデミー賞で最多8部門を受賞した話題作『スラムドッグ$ミリオネア』(4月18日公開)。本作のダニー・ボイル監督が来日したとき、個人的に気になったあるシーンについて聞いてみた。さて、そのシーンとは!?

インドはムンバイのスラム街に住む少年ジャマールが、クイズミリオネアで一攫千金を目指すという夢のある設定が痛快な本作。映画的に目を引くシーンは数多くあれど、筆者が気になったのは、幼きジャマールが憧れのスターに会うために、糞尿が溜めてあるトイレにドッボーン!と勢いよく飛び込むシーンだ。

しかも、ジャマールはそのトイレから自力で上がり、茶色の糞まみれになったまま、スター目がけてまっしぐらに全力疾走するのだ。ひえ〜〜! 画面からくっさ〜い臭いが漂ってきそう……と、ドン引きしかねないシーンなのだが、まさか本物の糞溜めじゃないですよね!?

ダニー・ボイル監督は微笑みを浮かべてこう答えた。「あれは、ピーナッツバターとチョコレートをミックスしたものでした。だからとてもいい香りを発してたんです」

え!? そうだったのですか? それって、おいしそうですね……。

ボイル監督は続ける。「でも演技上、子供たちには『くさい演技をしてね。これは糞尿だから』と説明しなければいけなくて。子役のアユーシュくんは当時7歳でしたが、『なんでピーナッツバターの中に僕を落とすんだろう? 大人って変だな』と思っていたに違いないです」

あのシーンは1テークでいけたのですか?

「はい、いきました。ただ、ピーナッツバターの中にどっぷりつかったとき、人間の体がどうなるか我々もわからなかったので、何かあってはいけないということで、一応ワイヤーをつけてもらいました」

そういえば、監督の映画『トレインスポッティング』(96)でも、トイレを自由に泳ぐシーンがありましたね……。

「そうなんだよ。しかもトイレからの逃避という意味ではまったく同じシーンです。僕が思うに、イギリスの映画作家って、なぜかトイレに固執するんです。理由はわかりませんが」

さらに、監督はこうも分析する。「インドのスラムではご存じのとおりトイレというものがない。だから、家からちょっと距離を置いたところでどこでもしちゃう。それを初めて見たときはショックでしたが、それを乗り越えると人って平等なんだなって思うわけで。そこはすごいなと思いました」

また、その子供時代の糞まみれのシーンで、すでにジャマールのキャラクターが確立されているとも言う。「あのシーンのいいところは、スラムを象徴する糞やにおいと、彼らが大好きなボリウッドスター(インドでの映画スター)への情熱が同時に介在している点ですね。その相容れなさそうな要素が同居してるのが、典型的なムンバイです。それはタイトルの“スラムドッグ”と“ミリオネア”の組み合わせについても言えることですが。(糞まみれの姿で夢のスターに会おうとする)このシーンだけでジャマールという子の全てがわかる。そんな彼の意思がよく現れたシーンだと思います」

なるほど、くさそうな糞尿のシーンにも重要な隠喩が含まれていたとは。さすがはダニー・ボイル監督! まったく異なる要素が入っている物語だからこそ、人は心を揺さぶられるのかもしれない。いろんな意味で深い見どころが隠されている本作。絶対に見逃さないで!【MovieWalker/山崎伸子】

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