「グワシ!」と歌舞伎の「見得」は同じ!? 楳図かずお&片岡愛之助が分析

楳図かずおと片岡愛之助が、ホラーと歌舞伎の共通点を明かした!
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「おろち」「漂流教室」など数々の傑作を生み出した天才漫画家・楳図かずおが、ホラー映画『マザー』(9月27日公開)で、77歳にして待望の映画監督デビュー。1995年以降、腱鞘炎のため休筆を続けている彼にとっては19年ぶりの新作でもある。題材に選んだのはなんと、自らの母親。人気歌舞伎俳優の片岡愛之助を“楳図かずお役”に仕立てて、楳図ワールド全開の恐怖へと誘ってくれる。当初は「主人公は誰にお願いしても良いと思っていた」(楳図)、「一度、オファーをお断りした」(愛之助)と笑い合う2人だが、話を聞けば聞くほど、相性ぴったりの彼ら。楳図ワールドと歌舞伎の共通点について、たっぷりと語ってもらった。

人気漫画家・楳図かずおと、彼の創作の原点とも言うべき母親の謎に迫る本作。ついには母親の怨念が爆発し実態化するなど、現実と妄想が入り乱れる驚愕のストーリーとなっている。楳図かずお役を任せる俳優には、相当こだわりがあったのでは?と想像するが、「『誰でも良い』と言うくらいの考えだったんですよ」と楳図監督。「でもね、愛之助さんにお願いしたら、本当にピッタリで!異質な世界が混じり合うというのが、とても良かったと思うんです」。

すると愛之助も「オファーをいただいて、最初は驚きましたよ!」と笑う。「楳図先生の自伝のようなものを作ると聞いていたので。ご本人を投影したそっくりな方でないとダメだと思って、即、お断りさせていただきました。僕と楳図先生は、全然似てないですから(笑)。でも、『楳図かずおという漫画家の役を演じてくれればいい』と言われて。それならば是非、やりたいと言ったんです」。

日々、舞台出演を重ねる多忙な愛之助だが、「スケジュールがちょうど、この撮影予定期間だけスポッと空いていたんです。そこしか空いていなかったので、本当にご縁があったんだと思います」と告白。楳図監督も「今回は流れに乗っていたら、自然と良い結果につながるというような毎日でした。不思議なご縁としか言いようがないですね」と愛之助との巡り合わせに感謝しきりだ。

愛之助に「是非やりたい」と思った最大の理由を聞いてみると、「そりゃあ、そうですよ!」とニッコリ。「僕らは“まことちゃん世代”ですから。グワシをやって遊んでました(笑)。まことちゃんの真似をして、『そんなことしなさんな!』とよく怒られましたね。それからというもの、『漂流教室』を読んだり、ずっと楳図先生のファンでした。その楳図先生の役を演じさせていただけるなんて、本当に嬉しいです」。

「楳図ファンだった」という愛之助。楳図ワールドの魅力は、歌舞伎の魅力そのものに通じるというから、驚きだ。「まずは美しいということ。楳図先生の作品に出てくる女性はみんなきれいでしょう?歌舞伎も品というものをすごく大事にしていて、美しさの極地のようなものが歌舞伎ですから。例えば『女殺油地獄』という演目がありますが、惨殺の現場が、美しくて思わず拍手するような場面になるわけです。それは美しいから成立するわけで。楳図先生のホラーも美しいからこそ、さらに怖くなる世界」。

さらには、“グワシ!”のポーズについてもこう語る。「『まことちゃん』のグワシ!は、決めのポーズですよね。これは歌舞伎で言う、“見得”なんです。ズームアップのような効果があるという点で、一緒なんですよ。今振り返ってみても、楳図先生の世界と歌舞伎には、共通点がいっぱいあったと思う。同じ、芸術なんです。ビックリですよ」。楳図監督も「本当に、歌舞伎俳優さんと今回の映画は、良いマッチングでしたよね。『発見〜!』という感じ」とうなずく。

本作には、母親との愛憎劇、美少女、蜘蛛、へび女など楳図作品を彩るモチーフが様々な形で登場。細かい仕掛けもふんだんに盛り込み、スクリーンの隅々まで見逃せない。例えば、楳図役の愛之助の衣装が、感情の揺れによってボーダーの幅が違っているといったアイディアまで!「細かいところまで、色々と工夫しました。あとは、病院のシーンに飾られているお花が少しずつ華やかになっていたりね」と楳図監督。

「何度見ても発見ができます」と愛之助も感心するが、「これまた歌舞伎との共通点ですね。歌舞伎も、見終わった後に謎がいっぱい残るわけですよ。謎が残るから、何度見ても面白い」と語る。楳図監督は、「それはそのままホラーに通じる。ホラーは謎が解明されないまま、色々なことが起きちゃうんです。『ああ、そうですね』と解明しちゃった時点で物語は終わるけれど、ホラーは解明できないだけに、いくらでもリピートして続いていく。ある意味、永遠なんですね」と続けた。

そろって赤白ボーダーに身を包んだ2人が、顔を見合わせて嬉しそうに笑う。不思議な縁に導かれ、2人の天才の道のりが交差。見たことのないような映画を完成させた。是非スクリーンで、楳図ワールドの魅力を堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】

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