庵野秀明が自身のキャリアを振り返る!【実写映画編】アニメで感じた限界と実写でしか撮れない映像とは?Part1

トークショーレポート第2回は庵野の実写作品にフォーカスする「監督・庵野秀明(長編実写映画)」
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現在行われている第27回東京国際映画祭では、クリエーター・庵野秀明のキャリアを総括する大型特集上映会「庵野秀明の世界」を開催中。短編、CM、PVを含めた50作品以上が上映されるだけでなく、庵野が氷川竜介(アニメ・特撮研究家)との対談形式で自身の創作活動について語る全5回のトークショーも実施されている。第2回は庵野が監督を務めた3作品の長編実写映画にフォーカスする「監督・庵野秀明(長編実写映画)」。10月25日にTOHOシネマズ日本橋で行われたのトークショーの模様を徹底リポートする。

【アニメ―ションに限界を感じて実写作品へ】

氷川「今回は庵野監督の実写映画についてじっくりと話を聞いていきたいと思います。まずは一番最初の劇映画『ラブ&ポップ』」

庵野「『エヴァンゲリオン』の劇場版をやっているときに、僕の中でアニメーションの限界を感じたんです。『エヴァ』の劇場版で、『アストロ球団』の“一試合完全燃焼”を本当にやってしまったんです。アニメではない表現を考えたていたときに、ちょうど(SONY)VX1000という民生のミニDVカメラが発売された。『エヴァ』の実写パートを撮ったとき、基本的には樋口(真嗣)に任せたんですが、その横で僕はVX1000を使ってメイキングを撮ることにしたんです。現場には行った方が良いと思うけど、あんまり出しゃばると樋口が嫌がるだろうと思ったので(笑)。でもVX1000の映像を初めて見たときに『え、いまビデオってこんなにきれいに撮れるの』とビックリしたんですね。このカメラだったら映画として大画面にも耐えるんじゃないかと。民生のカメラだけで映画が撮れないか、それが『ラブ&ポップ』の出発点です。とにかく本物の女子高生をキャスティングして、援助交際をしている様子をドキュメンタリー風に撮る。それだったら僕がカメラを回せるし、援交の対象となるおじさんは内トラ(内部エキストラ)でできる。それで企画を出したんです。最初は予算500万円で考えていたんですが、キングレコードの大月(俊倫)さんに実写をやりたいと話したら、あれよあれよという間に予算が1億円になった(笑)」

氷川「500万円の予算を想定していたときの尺はどれぐらいだったんですか?」

庵野「原作通りなので80分ぐらいですかね。『エヴァ』25~26話のすごく忙しい時期とかぶっちゃったので本当に大変でした。特報で(主演の)三輪明日美の背中をずっと追いかけるショットを撮ったんです。追いかけていたのは僕と鶴巻(和哉)と助監督の杉野(剛)さんだったんですけど、三輪は現役の女子高生。走ると全然追いつけなくて(笑)。あのときは地獄でしたね。やっぱり実写は大変だなと」

氷川「カメラは基本的に手持ちだったんですか?」

庵野「基本的に手持ちなんですけど、当時VX1000用のステディカムが売っていたのでそれを使いました。『ラブ&ポップ』では“いまあるもの”しか撮らなかった。いま現実にあるものだけを切り取ってコラージュすると、映画になる。それをやってみたかった」

【アニメとは真逆の発想で撮った『ラブ&ポップ』】

氷川「その辺りの発想がアニメとは真逆ということですよね」

庵野「そう、真逆。アニメでは絶対にできないことをやろうと思ったんです。とにかく、そこにあるものをどうやって切り取るかだけを考えようと。カメラポジションとレンズの画角が違うだけで、少なくとも肉眼で普通に見ている風景とは全然違うものになる。日常風景のはずなのに、非日常というか、異世界的な映像にしたかった。この感覚を僕が最初に覚えたのが実相寺(昭雄)さんの作品でしたね。実相寺さんの『ウルトラマン』で突然変な画が出てくる回があるんです。子どもの頃は観ていてもよくわからなかったんですけど、それが自分の中ではずっと引っかかっていて」

氷川「庵野監督のアマチュア時代の作品にも、“実相寺アングル”が入っていますよね」

庵野「アマチュア時代はもちろんお金がないし、セットもそこまで広くない。それを誤魔化すアングルを撮ろうとすると、実相寺さんと同じ発想になっちゃうんです。画面手前にデカい物を置いてその隙間から撮る、とか。そうるすと画に力が入るんです」

氷川「その当時からアニメにできることと、実写にできることの違いを学んでいたということですか?」

庵野「学ぶというよりも、僕が子どもの頃はアニメと特撮は2大番組だった。それが混ざっていたんです。混ざっていたけど、表現として自分が作るときには切り分けたということですね」

氷川「今回『庵野秀明の世界』で作品をまとめて観て思ったんですけど、アニメと実写を越境している人はそんなに多くないんですよね。庵野さんの場合は行き来するだけじゃなくて、アニメ作品の中でも実写っぽい画作りがある」

庵野「『エヴァ』もそうですけど、テレビアニメは時間もお金もない。画面をとにかくいいように見せようと思ったら、ナメのショットが一番良いんですよ。当時、テレビ画面の比率は4:3なのでほとんど正方形ですよね。ただの正方形として切り取ると、おもしろみがなくなるんです。ナメを入れると正方形が縦長になったり、横長に見えたりする」

氷川「実相寺さんの作品もそういう切り口で観ると、アングルだけじゃなくて、もともとフレームが決まっていることに対して満足してないというか…」

庵野「その気持ちはすごくよくわかります。あと編集のテンポでいえば、岡本喜八さんの影響を受けました。僕はカットが切り替わる瞬間とそこに至るまでの時間軸の調整が映像のおもしろさだと思うんです。これを見せたい、これを見てくれという作り手の意志というか、意図が入る。間接的にそれを表現するというのが、映像のおもしろさですね」

【実写映画編】Part2へ続く。

【取材・文/トライワークス】

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