庵野秀明が自身のキャリアを振り返る!【アニメ監督編】徹底的に追い込まれた『エヴァ』製作秘話を語る!Part2

「エヴァ」を生み出した苦悩の日々を思い出し、涙ぐむ一幕も
  • 「エヴァ」を生み出した苦悩の日々を思い出し、涙ぐむ一幕も

(【アニメ監督編】Part1からの続き)

【体も精神も“壊れる”『エヴァンゲリオン』】

氷川「せっかくなので『新世紀エヴァンゲリオン』のお話も。『ふしぎの海のナディア』から結構期間が空いているんですが、これは準備に時間がかかったということでしょうか?」

庵野「いや、『ナディア』で燃え尽きたんですよ。『トップをねらえ!』と『ナディア』を休む暇もなく立て続けにやってしまったので。精神的にも体力的にも壊れて、鬱だったんだと思います」

氷川「どん底まで追いつめられたから、自分で原作からコントールする決意で『エヴァ』に臨んだということですね」

庵野「そのときに、山賀(博之)がプロデュースと原作と脚本を担当する『蒼きウル』という企画が立ち上がったんです。『蒼きウル』の監督をやってくれと、山賀から頼まれたので、引き受けることにしました。そこまでお膳立てしてもらえれば、監督だけならできると思ったんです。でもこの企画がとん挫してしまって…。それで目が覚めたんです。僕は人に頼っちゃダメなんだ、プロデュースも企画も原作も誰にも頼らず自分ひとりでやるしかないんだと。そこで、ガイナックスとは一度決別したんです。それから『エヴァ』の企画をひとりで考え始めた。たまたま、キングレコードの大月(俊倫)プロデューサーに会う機会があって、『庵野さん、何かやりたい企画があったら持ってきてよ』と言ってくれたんです。単なる社交辞令だったと思うんですが、僕が『エヴァ』の企画を持っていったら、『やりましょう』と。どこのスタジオにお願いするか悩んだ結果、ガイナックスに逆プレゼンしたんです。『受けるんだったらガイナックスでやってもらうし、できないんだったらサンライズでやります』と。だから、あのとき断られていたら『エヴァ』はサンライズの作品になってました」

氷川「『エヴァ』の劇場版はどうして、あのような形に?」

庵野「テレビ版の25~26話は時間がなかったりして、考えていたような作品にならなかった。それで『劇場版は2種類作らしてください』とお願いしたんです。テレビ版の25~26話をやり直すものと、新作。新作では、テレビ版の世界観を一度捨てて、2時間で完結する新しい『エヴァ』を作ろうとしていたんです。ただ、テレビ版の25~26話をやり直すだけで限界だったので、鶴巻(和哉)がやってくれるんだったら新作を作ろうということになった。だけど鶴巻から『庵野さんにしか作れないから辞退します』と言われてしまって、新作の話はなかったことに…。僕だけでは新作の企画は作りきる気力がなくて実現しませんでした。もう一回、すぐに『エヴァ』をやることはもう無理だったんです。やっぱり壊れちゃうんですね。テレビ版のときにも壊れましたし。でも業界の人は誰も助けてくれなかったんです。そのときの業界に対する恨みはまだ残ってますね。それから『ラブ&ポップ』とか実写の作品にしばらく流れて…。戻ってこれたのは『彼氏彼女の事情』。この作品は、諸般の事情があって自分で企画しました。何か仕事を入れないとスタジオが分解寸前だったんです。原作がすでにあるし、これならおもしろくなるだろうし、それなりに売れるだろうと。鶴巻にも12話まで手伝ってもらって、後半は今石(洋之)とか佐伯(昭志)とか、当時の若手に手伝ってもらいました。いろいろありましたけど、よくできていたと思います」

氷川「『彼氏彼女の事情』はすごく実験的なことをしているのと、若手が参加しているからか勢いがすごいですよね」

庵野「基本は若手に好きなようにやってもらっていたので。今石の才能は本当に良かったですね。あと平松(禎史)さんにキャラクターデザインをやってもらうことも目的だった。平松さんはとてもいい仕事をしてくれましたね」

【宮崎駿の言葉に励まされて、再び『エヴァ』へ】

氷川「『エヴァ』の新劇場版についても伺いたいんですけど、この作品をきっかけにカラーという会社を立ち上げましたよね。監督だけじゃなくて社長もやるという」

庵野「僕がガイナックスに居続けると、上がつかえてて今石とか若手が自由にできない環境になってしまった。それでガイナックスを出ることにしました。その後は実写を撮る企画もあったんですが、どうしても『エヴァ』的なものになってしまう。それがすごく嫌だった。『エヴァ』じゃないものを作ろうとしているのに、なんで『エヴァ』にしかならないんだろうと。このジレンマがずっと続いて…。でもあるとき気がついたんです。それならいっそ『エヴァ』をやったほうがいいじゃんと。どうせ『エヴァ』にしかならないんだったら、『エヴァ』をもう一回やってみようと。それで始まったのが新劇場版ですね」

氷川「その新劇場版が、いま4部作の完結に向かっているということですね」

庵野「体力的にも精神的にも、『エヴァ』は本当に毎回大変なんですよ。作って、壊れてを自分の人生の中で繰り返してます。テレビ版のときは、終わった後に死に損ねて…。本当に一回危ないところまでいったんです。このままだとあっちの世界に行っちゃう、という一歩手前まで。だから『エヴァ』をやった後は、自分の維持管理が難しいんです。毎回、作品は魂を削って作ってるんですが、『エヴァ』はその削り方が激しいので。でも、宮さん(宮崎駿)にも『最後まで頑張れ』と言われたので頑張ります。テレビ版の後、僕が弱ってるという噂を聞きつけた宮さんが会社に電話をかけてきてくれたんです。『作りたくなるまで好きなだけ休めばいい。あれだけのものを作っていたんだから、必ず人も金も集まってくる』と言われてすごく楽になったんです。宮さんの存在は大きかった。それで劇場版も作ることができましたね。でも、こないだ宮さんに会ったときも『庵野、お前大変なんだって?そんなときは辞めちゃえばいいんだよ。最後まで作る必要なんてないんだ!』と言われたんですが、その後すぐに『ちゃんとやったほうがいい!』と(笑)。頑張って新劇場版も(4部作を)やり遂げます」

【取材・文/トライワークス】

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