ジャン=ピエール・ジュネ監督を驚かせた、6か国語を操る天才子役とは?

『天才スピヴェット』のジャン=ピエール・ジュネ監督と、天才子役のカイル・キャトレット
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『アメリ』(01)のジャン=ピエール・ジュネ監督が、初めての3D映画『天才スピヴェット』(11月15日公開)を引っ提げ、主演の天才子役カイル・キャトレットと共に来日。カイルが、第27回東京国際映画祭の舞台挨拶で、英語、ロシア語、フランス語、ラテン語、北京語、スペイン語の6か国語と、日本語を交えて挨拶したり、格闘技の華麗なパフォーマンスを見せ、観客を驚かせたのも記憶に新しい。2人にインタビューし、本作の撮影秘話について話を聞いた。

『天才スピヴェット』は、双子の弟の死を乗り越えようとする10歳の天才科学者、スピヴェット少年(カイル・キャトレット)の奮闘を描く、ユニークなロードムービーだ。3D映画を手掛けるのに、とても苦労したというジュネ監督。「準備も万端にして、テストもしたし、ポストプロダクションでも相当細かく調整したんだ。その分、できあがった作品は、どの3D映画よりも素晴らしいものになったという自負はある。ただ、3D映画は時間がかかるし、コストが高い。本当に大変なので、次に3D映画を手掛けるのは、3Dメガネがいらない時代になってからかもしれないね」。

カイルは、ジュネ監督について「過去の監督作を見せてもらったけど、とてもユニークなところが好きだよ。素晴らしい監督だと思う」とべたぼめ。ジュネ監督も「カイルは本当にプロだよ。カメラの前でどうあるべきかってことを、本能的にわかっている。自分にとって、パーフェクトな役者のひとりは(『アメリ』の)オドレイ・トトゥだけど、彼と話していると、同じような感覚に陥るよ」と絶賛。「でも、ある日、カイルが現場で泣いていてね。泣き真似をしているのかと思ったら、コオロギが死んでしまったと言って悲しんでいたんだ。その時、彼は9歳の男の子でもあるんだってことを再認識したよ」。

カイルは、3年連続・総合格闘技の世界チャンピオン(10歳以下の部門)でもあるが「マーシャルアーツも、科学も好きだし、役者として演技もやりたい」という好奇心旺盛の少年だ。片言の言語も含め、6か国語がしゃべれるという。「もともと語学が好きなんだ。ロシア語は母から、また、中国語は公園で人が話しているのを聞いて、勉強したいと思った。ずっとやりたいと言い続け、近くで中国語を教えているところを見つけたので、そこで少し学んだよ。あとは学校で、スペイン語とラテン語を教わり、その後も独学で引き続き学んでいるよ。フランス語は、今回の現場で監督から教えてもらったんだ」。

クライマックスでは、エキストラ130人の前で、10ページ分の長セリフのロングスピーチを披露したカイル。ジュネ監督は「カイルに『エキストラを入れないで撮るかい?』と聞いたら『いてくれた方が助けになる』ってことだった。途中で、彼が言葉を止めた瞬間があったので、セリフがわからなくなったのかと思って聞いたら『違うよ。“間”を取ったんだ』と言われてね(苦笑)。結局、たった2テイクで撮り終えたよ」と、彼のスキルの高さに舌を巻いたそうだ。

ジュネ監督に、子役を演出する秘訣についても尋ねてみた。「とにかく子役の場合、キャスティングのミスは絶対に許されない。そのためにオーディションではテストを繰り返し、きちんと見極めなければいけない。そうやって選んだ子どものキャストは、自分たちが思っているよりも素晴らしい演技を見せてくれる。カイルの場合もそうだったよ」。

恐るべし、天才子役!カイルに将来なりたいものについて聞いてみると「いっぱいあって、答えられない。役者、大統領、科学者、マーシャルアーツの専門家と、全部やれる大人になりたい」とのこと。まさに、可能性は無限に広がっている。

最後にジュネ監督は『アメリ』を引き合いに出してこう語った。「やはり『アメリ』は特別な映画だったと思う。だって、13年経った今でも、舞台となったパリのカフェ・デ・ドゥ・ムーランには、毎日20~30人の観光客が訪れるんだから。まさに、人生に一度の作品だ。今作も、『アメリ』が好きな方にも楽しんでもらえるとうれしいな」。

ジュネ監督自身、カイルが演じたスピヴェットは、少年版の『アメリ』だと表現していたが、映画を見れば納得。とにかくワクワクするような映像に魅了され、さらに後半では、不意打ち的に、感動の渦に包み込まれるというおまけつき。断然、でかいスクリーンで見るべき快作だ。【取材・文/山崎伸子】

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